東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。シリーズで取り上げているマゼール指揮ウィーン・フィルによるマーラーの交響曲全集、今回は第5集をとりあげます。
番号順なので、第5集は第5番ということになります。そもそも、私が最初に触れたマーラーの交響曲が第5番。その最初の音源以来の別の音源ということになります。
大抵、最初に聴いたものって強烈な印象を放ち、刷り込まれていることが多いのですが、この第5番に関しては特段そういう事がないのかなと思います。このマゼール指揮ウィーン・フィルも十分聴けるもので、もちろんダイナミクスなど違いはあるのですが、むしろ最初のものよりも凌駕するかもと思うくらいの素晴らしい演奏だと感じます。
第5番から新しいマーラーが始まる・・・・・アルマがそう言い残していますが、まさに新しいマーラーがそこにあります。旋律の多様性による和声の多様性。それによる心地よさを持ちつつラディカルなものも存在し、初演の練習ではアクシデントがいくつもあったのがこの第5番ですが、現代のオーケストラはそんなものもものともしないというか、20世紀音楽はもっとぶっ飛んでしまったため、マーラー程度ではむしろ古風ですら感じるくらいです。
そんな中でもまれてきた現代オーケストラにとっては、マーラーの交響曲第5番がいかに様々なごった煮になっていて困難な部分があったにせよ、問題ないものになっています。もう一度言いますが、すでにマーラーの交響曲程度は、古風であるのが、21世紀という時代です。
この演奏は20世紀後半ですが、その時ですらすでに12音階やセリーなどが出ていて、それが当たり前になっているという時代です。そんな時代に生きる団員たちがマーラーに苦労するなどそうない話です。もちろん、解釈等で格闘することはあり得ますが・・・・・・
しかもです、再び触れますが、ウィーン・フィルとは、そもそもが国立歌劇場管弦楽団がコンサートの時に名乗る団体名です。つまり、マーラーとめちゃくちゃゆかりがあるわけです。関係性としてはかなーりぎくしゃくしましたけれど・・・・・
だからこそ、ウィーン・フィルとすれば、マーラーの交響曲を演奏するということは、自分たちの誇りなわけで、その誇りが随所にみられる演奏です。一つ一つ味わいながら演奏しつつも、テンポ感もよく、それらが一つのサウンドを作り、グルーヴ感もある。特に豊潤なサウンドはさすがウィーン・フィル。
マゼールはそういったウィーン・フィルの特質をなんら邪魔せず、しかし適切なテンポをタクトで示していると言えます。次回ウィーン・フィルが来日したとき、マーラーだったら高い金出しても聴きに行きたいなあと思わせる演奏です。
聴いている音源
グスタフ・マーラー作曲
交響曲第5番ハ短調
ヴォルフガング・トムベック(フレンチ・ホルン)
ロリン・マゼール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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