かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:レ・ヴァン・フランセによるベートーヴェンの管楽作品集

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ベートーヴェンの管楽作品集のアルバムをご紹介します。

ベートーヴェンの管楽作品と言って、皆さまは何を思い起こしますか?そう言われて、すっと名前が出て来る人は、かなりの「クラヲタ」と言っていいでしょう。そもそも、ベートーヴェンの管楽作品などが、例えば吹奏楽とかで演奏されることも少ないですし、ましてやアンサンブルで、どれだけ演奏される機会がありましょうや。

そのため、このアルバムを借りてきたのでした。さらに言えば、演奏するのはレ・ヴァン・フランセという団体なのですが、そのメンバーの中にエマニュエル・パユがいることも決定的でした。パユと言えば、かつて一世を風靡したフルーティストです。そんなソリストが入っている団体が、ベートーヴェンの管楽作品を演奏するなんて、ワクワクしたからもあります。

さて、私自身はどれだけベートーヴェンの管楽作品を知っているかと言えば、実は以前こんなアルバムをご紹介したことがあります。

ykanchan.hatenablog.com

このエントリで挙げたアルバムのカップリングの中に、管楽マーチが収録されています。軍楽隊の編成で演奏できる作品ですね。ベートーヴェンが生きた時代、戦争の影がちらつくものでした。フランス革命は、ある意味ロシア革命同様、ヨーロッパに波風を起こしました。その延長線上に、ナポレオンの侵攻もあったわけです。故に、ベートーヴェン自身も愛国主義などの影響を受けていますし、どうしても軍楽隊のような編成にも興味を持っていたようです。

そのうえで、管楽作品というのは、バロック期に数多く残された編成の作品でもあります。ベートーヴェンが全く興味がなかったというのはあまりにも不自然です。確かに、作品番号がついているものは少ないのですが・・・・・

ここに収録されている作品は、18世紀の作品が多く、ベートーヴェンが若い頃のものばかりです。作品87は番号自体は大きいですが実際には作曲は1795年です。なのですべて18世紀の作品だと言えます。ですが、バロック的な古臭さを感じませんし、やはりベートーヴェンは革新的な作曲家だったと言えるでしょう。

そのうえで、この演奏では編曲されているものが幾つかあります。オーボエクラリネットバスーンのための、作品87とWoO28の二つです。レ・ヴァン・フランセはメンバーの中にオーボエ奏者も、クラリネット奏者も、バスーン奏者もいるんですが、あえて編曲することによってほぼ全員で演奏されているんです。はじめなぜこんなことをするんだろうって思ったのですが、それはこの団体の成り立ち、そしてアイデンティティにありました。

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「合奏でも個人の輝きを見せるというフランスの伝統を重んじている」。なるほど、と思いました。参加メンバーはどれも一流のソリストばかりです。パユは元より、中心メンバーであるメイエも最高のクラリネット奏者のひとりです。そんなメンバーの合奏が楽しめるわけです。そして、こういった三重奏曲をもう少し大きなアンサンブルでも楽しむ土壌があるわけです。アンサンブルの楽しみを味わうにはもってこいだと思います。個人が輝く・・・・・この基礎があっての全体のアンサンブルの美しさや楽しさがあるわけです。アンサンブルとは何ぞや?と問いかけるものでありながら、一方で厳しいものではなく、自然と「全体の中で個人が輝くっていいよね!」と思わせるのは、さすがトッププロです。そりゃあ、注目も浴びるわな、と思います。

つい、私たちはアンサンブルという時、英語でいえばALLで考えてしまうのですが、この演奏は決してALLではありません。EVERYです。日本語で言えば「全体」ではなく「おのおの」ですね。おのおのがおのおのらしさを発揮し、それが全体としての美を創り出す・・・・・ようやく日本でも、そういう演奏が評価される時代が来たかなと思います。実際、日本人演奏家もその方向で評価され始めていることは、大変喜ばしいことだと思います。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
オーボエクラリネットバスーンのための三重奏曲ハ長調作品87(編曲:ジョン・P・ニューヒル
ピアノとフルート、バスーンのための三重奏曲ト長調WoO37
ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲WoO28~オーボエクラリネットバスーンのための~(編曲:フリッツ・シュタイン)
ホルン・ソナタ ヘ長調作品17
クラリネットバスーンのための二重奏曲変ロ長調WoO27-3
レ・ヴァン・フランセ
 エマニュエル・パユ(フルート)
 フランソワ・ルルー(オーボエ
 ポール・メイエ(クラリネット
 ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(ホルン)
 ジルベール・オダン(バスーン
 エリック・ル・サージュ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。