かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:カラヤンが振るベートーヴェンの政治色濃い作品群

今回のマイ・コレは、ベートーヴェンのエグモントとウェリントンの勝利、そして行進曲集です。カラヤン指揮、ベルリン・フィル等です。

この一枚を買いましたのは、実は私の軍事好きが影響したのと、ベルリン・フィルのジルベスタ―コンサートでエグモントが全曲演奏されたことにあります。

まず、エグモントですが、このCDには「全曲」収められています。通常、序曲だけがよく演奏されますが、実際にはゲーテの原作を上演するという企画に音楽をつけたもので、劇付随音楽と呼ばれます。

いろんな解説がありますが、一番簡単かつ正確な説明はウィキペディアだと思います。

エグモント (劇音楽)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B0%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%88_(%E5%8A%87%E9%9F%B3%E6%A5%BD)

実は、この曲はどのように演奏されたのかがよくわかっていないのです。つまり、初演がどのように行われたのかもよくわかっていませんし、演技がなされたのか、それとも朗読だったのかも定かではありません。現在では、演奏会形式とそれにナレーターが入るものと二つありまして、私が一番最初に触れたのはナレーターが入ったものでした。実はそれこそ、ウィキでも触れられている、1991年のベルリン・フィルジルベスタ―コンサートなのです。NHKBSで放送されたものです。

それをきっかけに、CDでも聴きたくなり探していた時に見つけたのがこの一枚だったのです。実はこの一枚は学生時代大学図書館で見つけており、いつかは聴こうと思って結局聴けなかったものだったのです。買った当時、ベームも出してましたが、見つけていたのはカラヤンのものだったので、カラヤンを選んだのです。もし、モツレクを聴いていなかったら、ベームを選んでいたかもしれません・・・・・その当時、モツレクをきっかけに第九もヴィデオに録画して聴いていまして、それが意外と自分が想像していたものよりもよかったので、このベートーヴェンカラヤンを選んだのです。

このCDではナレーターも入っていますが最後にちょっとだけ。基本的には演奏会形式で、オケの演奏とアリアという構成になっています。しかし、その音楽はベートーヴェンの政治意識が色濃く反映されたもので、気高く威勢のいい曲が並んでいます。

オランダの独立という、現代でも通用する題材を扱っていまして、私も軍事や国家などに興味を持つ学生だったことから、社会人になっていましたがこの曲に興味を惹かれていったのは間違いなく、序曲だけでなく全曲にはまりました。DATに録音して、しばらくこればかり聴いていたこともあります。またカラヤンがとても英雄的な演奏をしてくれているんですよね。ベルリンフィルの一糸乱れぬその演奏もとても心地よく、それも影響したのだと思います。また、エグモントの国家への「自己犠牲」という英雄的行為という題材も、心を揺さぶられるものでありました。

さらにそれを増幅させるのが、二つ目の「ウェリントンの勝利」です。別名「戦争交響曲」とも言われるこの曲は、ナポレオンのヨーロッパ戦争を題材にしています。これもウィキペディアが比較的正確な説明をしてくれています。

ウェリントンの勝利
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8B%9D%E5%88%A9

「解説」の最後に初演は2007年に陸上自衛隊東部方面音楽隊によってとされていますが、その下に「恐らく東京交響楽団によって」となっているそちらのほうが私は正しいと思います。実は私はNHK「音楽の広場」の大ファンでして、私もどのオケは忘れてしまっていますし演奏も聴いていませんが次回予告を聞いた記憶があるのです。ですから、陸自の東部方面音楽隊ではなく、その音楽の広場での演奏が日本初演であると思います。実にもう30年以上前です。あの番組は面白い企画をたくさんやってくれました(N響が第九をやっている裏で、ほかの在京オケを使って全く同じ時間に第九をやるとか、ウィーン・フィルのニューイヤーの裏で日本のオケでシュトラウスの「美しく青きドナウ」を全く同じ時間に演奏するとか!)。

さて、そのウェリントンの勝利ですが、最大の特徴は鉄砲と大砲が使われていて、しかもそれが英仏両国に分かれているということです。楽器もいくつか両軍に分かれていまして、まるで自分が戦場にいるかのようです。それゆえなのか、日本ではほとんど演奏されません。しかし、実際聞きますととても構造的に面白い曲でして、左右に両軍が分かれてまずイギリス軍がやってきます。その後フランス軍がやってきてお互い会敵し、発砲して戦闘が始まりますがやがてイギリス軍が優勢となり、勝利の音楽が始まるという構造になっています。特に、左右に両軍が配置されるということから、ステレオ初期には実はこの曲は多数録音され、これもドラティベームなどの盤が存在します。

この曲はいろいろな「裏」がある曲でもあります。私がこのブログを書くきっかけにもなっている、musiker氏の「ベートーヴェン音楽夜話」でもかなり初期にメルマガで取り上げており、今はブログにて読めるようになっていますが、それによりますとどうやら作曲はメルツェルだったようです。ただ、音楽としてはベートーヴェンらしい気高さが維持されており、構成はメルツェルで、それに曲をつけたあるいはメロディはメルツェルでオーケストレーションベートーヴェンという格好かもしれません。

戦争交響曲ウェリントンの勝利)と交響曲第7番
http://musiker.nsf.jp/musiker21/b_sym7.html

しかし、同じナポレオン戦役を取り上げているにもかかわらず、チャイコフスキーの「1812年」に比べますと不人気です。それはもしかするとベートーヴェンの強い自立心とそれを許さぬ当時の政治状況があるのかもしれません。当時のドイツは独立を維持するのにはとても難しい状況におかれていました。さらに民主主義はもちろん、自由も保障されていない状況で、その中でベートーヴェンのように市民として自立心が強い人は国家に目をつけられる時代でもありました。そんな中でまるで国家にすり寄るような、さらにそれが戦場を題材としているということで、もしかすると現代の特に日本人には受け入れがたいのかもしれません。まだ「1812年」の方が武器は最後にようやく大砲が出てくるという点で受け入れやすいのだと思います。

そして、最後には彼が作曲したマーチが収められています。これはカラヤン指揮ではなく、ベルグラート指揮ベルリン・フィル管楽アンサンブルによるものです。ベートーヴェン交響曲だけでなく吹奏楽でも書いていたのです!それは彼がやはり彼自立心が強いが故に国家の独立にも関心があったためですが、しかしこちらはむしろユーモラスな部分すらあり、楽しい曲となっています。軍隊を楽しく描いているような感じで、それまでの英雄的な音楽はすっかり影をひそめます。彼が戦争好きなのではなく、闘うということがとても大事だと考えていたという証拠だともいえましょう。

戦争を語るとき、いろんな切り口があると思いますが、このベートーヴェンの切り口は、演奏を聴きますと戦争だけに興味がある人たちとは一味もふた味も違うように思われます。それはもしかすると、当時のカラヤンやオケの団員がそうであったように、直接戦争を知っていたから、なのかもしれません。もちろん、ベートーヴェンも・・・・・



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ゲーテの悲劇「エグモント」への音楽 作品84
ウェリントンの勝利(戦争交響曲)作品91
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
行進曲ニ長調WoO.24
ポロネーズニ長調WoO.21
エコセーズニ長調WoO.22
行進曲ハ長調WoO.20「帰営ラッパ」
行進曲変ロ長調WoO.29
行進曲ヘ長調WoO.18「ヨルク行進曲」
行進曲ヘ長調WoO.19
ハンス・プリーム=ベルグラート指揮
ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル
(ドイツグラモフォン POCG-4161)



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