かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:Setagaya Quodlibet 第1回演奏会を聴いて

今回はコンサート雑感をお届けします。平成27年5月5日に聴きに行きました、Setagaya Quodlibet 第1回演奏会を取り上げます。

面白い名前だと思いませんか、この団体名。ただ、読者の方の中には、ピン!と来る方もいらっしゃるかもしれません。あれ、かんちゃんさん、取り上げていませんでしたか?と。

この団体を取り上げたわけではありませんが、Quodlibetは取り上げています。そしてそれが、この団体の名前の由来となっているのですね。

今月のお買いもの:バッハ世俗カンタータ全曲演奏シリーズ3
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1230

興味深いことに、実は指揮者であり音楽監督の青木氏は、この上記エントリで取り上げたアルバムで、クォドリベットのカウンターテナーなんですねえ。勿論クォドリベットだけではありませんが、BCJにもずっと参画してきた人なので、白羽の矢が立ったのでしょうが、同じバッハをとりあげる団体であるSetagaya Quodlibetの音楽監督というのも、面白いものだと思います。

実は、この演奏会でも、青木氏はカウンターテナーとしてソリストをつとめ、1ステージを歌っています。とてもバロック的な団体です。

が、この団体には、私はものすごい可能性を感じています。それを説明する形で、リポートできればと思います。

演奏されたのは、以下の通りです。いずれもバッハのカンタータです。

�@カンタータ第131番「深き淵より我汝に呼ばわる、主よ」BWV131
�Aカンタータ第150番「主よ、われ汝をおおぎ望む」BWV150
�Bカンタータ第54番「罪に手向かうべし」BWV54
�Cカンタータ第4番「キリストは死の縄目につながれたり」BWV4

どれもこのブログで取り上げたものばかりですが、いずれもバッハの作曲年代において初期に作曲されたものばかりです。ミュールハウゼンヴァイマル時代に作曲されています。

ですから、バッハの作品としては初期に当るわけです。となれば、かなりバロック的な演奏になってもいいわけですし、むしろ適切だと思いますが・・・・・

この団体、その名の通り自由に行くことを旨としているので、必ずしもその当時のスタイルだけにこだわりません。バッハが一つの作品を時代によって変えていったように、この団体も「現代の古楽演奏におけるバッハ像」を追い求めているように感じました。

作品の詳しい説明は省きましょう。どれもオケと合唱団が入るわけですが、まず古楽合唱団に特有の発声ではなく、むしろ現代的な発声に徹しているの特徴で、ホールにとても力強い演奏が響き渡ったのが印象的でした。

そのホールは、以前このブログでフィルハーモニック・コーラスさんを取り上げた時にご紹介した、日本聖公会神田キリスト教会です。ちょっとすれば貧乏合唱団だから・・・・・・という声が、後期ロマン派が好きな方々からは聴こえて来そうですが、勿論、金銭的な問題もあるでしょう(実際、プログラムで彼らはそれを明かしています)。しかし、聖堂を選ぶという事は、これら4作品が初演されたその場所を再現するという意識も当然あっただろうと思います。

この4つの作品はいずれも教会カンタータです。であれば、ホールではなく教会の聖堂でというのは、その作品たちが持つ本来的な意味を受け取るのに、実はとても適切な場所であるとも言えるのです。

BCJが東京ではオペラシティで演奏するのは、一つにはこれも金銭的な問題があります。つまり、多くの聴衆が入るホールで行えば、それだけ収入が増えるわけですから。さらに、多くの人に聴いてもらえば、宣伝効果もある訳です。

しかし、バロックの編成や、発声、或は楽器の性能と言ったものは、基本的に大規模ホール向けではありません。バロックの時代に大規模ホールなどないのですから。ですから、人によっては物足りないという評論をすることも多いのですが、それは私は適切ではないだろうと思います。まあ、後期ロマン派の、例えばリヒターの演奏でバッハを知った世代は仕方ないだろうと思います。ただ、それならば古楽演奏ではなく、モダンの演奏を聴いて下さいと私は言いたいところです。

Setagaya Quodlobetの演奏は、そういった背景を知ったうえでの、選択だっただろうと思います。BCJも関西の公演は、チャペルであるということを想起すべきだと思います。

その上で、楽器群はバロック的な音でした。この点がとても面白かったです。将来的にオペラシティは考えていないでしょうが、聖堂以外でもとは考えているようなオケと合唱団の組み合わせだと思いました。

ですから、楽器はとてもBCJ的な、古楽の音色が響きますが、合唱団はブルックナーを歌っても遜色ない響きを持つという、特色ある演奏になっていたと思います。バロック時代まで声楽上位であったという、その歴史的背景も充分考慮された演奏であったと思います。

それが生み出すもの。それは、人の心を揺さぶる、力強くかつしなやかで、美しい演奏です。第131番は2曲目でソリストと合唱団が違う歌詞を歌いますが、そのコントラストが誠に素晴らしく、かつ分かりやすかったと思います。作品の構造が聴衆にわかりやすいことで、作品が持つ力や意味が、ストレートに伝わってきたと思います。これはホールのせいもあるでしょう。BCJが収録あるいは関西演奏会で使っている神戸松蔭女子大学チャペルに比べ、神田キリスト教会の聖堂は、響かないのです。その分、アリオーソとコラールの対比と、その歌詞が持つ意味が、ストレートに伝わってきて、感動しました。

第150番はBCのアルバムではソプラノが若干力が入ってしまっているのが、流麗でかつ力強かったのが素晴らしかったです。それは合唱団全体でも言えることで、一緒に行った元合唱団の友人も「これは出来ないんだよね〜、私達アマチュアにはね〜」と感心しきりでした。

いや、実はこの団体もアマチュアなんですけどね・・・・・・え、プロも入っていないのかって?多分、殆どプロでしょうねー。でもそんな人たちが、まるでウィーン・フィルの設立当初のようなスタイルと姿勢でアマチュアとして演奏するということは、とても幸せなことであり、また感謝したいことだと思っています。アマチュアとして演奏するからこそ、チケット代もBCJに比べればはるかに安いですし・・・・・ありがたいことです。

第4番の青木氏のカウンターテナーも安定して素晴らしく、しかもアリアとレチタティーヴォはテンポを変えるなど、第4番がシンメトリーとなっているのが際立つ演奏でした。第4番は全ての楽章の最後に「ハレルヤ!」が歌われている作品ですが、それを強調しているのが好印象でした。

実は、バッハのカンタータでは繰り返しが多いのですが、それはなぜかと言えば一つには強調であるわけです(これは、ナチスドイツの手法でもあり一つ間違えば危険な手法ですが)。4つの作品それぞれに、繰り返しによる強調があり、ホールが響き過ぎないことでそれがまさしく強調されていたこともよかったと思います。バッハの時代が必ずしも響きという点で優れていたのかという問いかけを、私は受け取ったように思います。

例えば、この4つの作品は少なくとも聖トーマス教会で作曲されたわけではないわけです。では、作曲された場所、あるいは初演されたであろう聖堂は、果たして響きのあるものだったのだろうかと、私達聴衆にボールが投げられたように思います。それを私達聴衆はどう投げ返すのか・・・・・

その一つに、私はこのエントリを位置付けたいと思っています。バッハという作曲家を知り尽くした「アマチュア」たち(恐らく本業はプロの演奏家)によるカンタータは、この国のプロによる演奏に全く引けを取らない、完成度の高い演奏であったと言えましょう。

その視点から一つだけ指摘をするとすれば、第150番と第4番ではアリアも合唱団員の何人かで歌う方法を取っていましたが、実力からすれば確実に一人でいいと思います。楽譜通り、まさしく「アリア」で行って欲しいです。できる実力を持っていると判断しています。

私も最近仕事が忙しく、所々アップが抜けてしまっているような状態ですが、この団体は日程が合うかぎり、応援していきたいなあ、聴きに行きたいなあと思っています。




聴いてきたコンサート
Setagaya Quodlibet 第1回演奏会
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第131番「深き淵より我汝に呼ばわる、主よ」BWV131
カンタータ第150番「主よ、われ汝をおおぎ望む」BWV150
カンタータ第54番「罪に手向かうべし」BWV54
カンタータ第4番「キリストは死の縄目につながれたり」BWV4
青木洋也指揮、カウンターテナー
Setagaya Quodlibet

平成27年5月5日、東京千代田、日本聖公会神田キリスト教

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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