かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:カラヤンが振るメンデルスゾーンの交響曲全集2

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリである、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるメンデルスゾーン交響曲全集、今回はその第2回目です。第2集を取り上げます。

この第2集には、第2番「讃歌」が収録されています。メンデルスゾーン管弦楽のための交響曲を5曲書いていますが(ほかに12曲書いていますがそれは弦楽のためなので慣例に基づいて外します)、この「讃歌」は4曲目です。なので成立順とはいいがたいのですが、これは録音時間の都合だとも言えるでしょう。基本的にはこの全集は成立順で収録されていると考えていいと思います。そのほうがアルバムとしても録音時間上バランスが取れますし。この辺りはCDがメディアなので仕方がないところですし、録音が1970年代なのでそもそもはLPレコードでしょうから、さらに仕方ないと言えます。

第2番「讃歌」は、1840年グーテンベルク活版印刷400年を記念して委嘱され作曲された作品です。その祝祭のために題材を旧約聖書に求めたことは、先日くじら第九合唱団 昭島60さんの第6回定期演奏会のレビューでも触れたとおりです。

ja.wikipedia.org

そして、この演奏に置いて、歌詞が旧約聖書から取られたという点が評価の分かれ目になります。メンデルスゾーンは交響カンタータという名称を与えていたとも言いますが、この演奏からは、カンタータというよりはオペラのよう・・・合唱団がベルリン・ドイツ・オペラ合唱団ですし。

ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団は、バイロイト音楽祭ワーグナーの楽劇の合唱団を務めるくらいの合唱団です。その意味では、カンタータよりはオペラと得意とする合唱団です。ですが、今回演奏されているのはメンデルスゾーンの「讃歌」。もう少し軽めの発声でもいいはずですが、思い切りオペラティックです。

それゆえに、ダイナミックさもある演奏は見事なんですが、アマプロ分かたずいろんな「讃歌」の演奏を聴いて来た私としては、ちょっとびっくらこく演奏です。そこまで力強くなくてもという気も・・・

元音源はドイツ・グラモフォンですが、カラヤン、あるいはドイツ・グラモフォンの編集者は、やはりこの曲が祝祭の音楽であるという点にフォーカスしたと考えられます。そこにさらに、メンデルスゾーンが元々はユダヤ人だったという視点をあえて入れていると考えていいでしょう。これはこれで聴ける演奏なのですが、私としてはオペラ的過ぎてちょっと引く演奏でもあります。

これはカラヤンベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、そしてベルリン・ドイツ・オペラ合唱団のコラボレーションゆえの演奏だと言えるでしょう。他で聴けるかと言えばそうそう聴けない演奏です。なので希少価値はあるかなと思います。その意味ではコレクションに入れてもいいとは思いますが、そういう演奏を求めて他を買うかと言えば、私はそれはないです。ただ、では非難の対象かと言えばそれは違います。あくまでもこれはカラヤンの芸術です。それは大切にしたいと思いますが、私ならこのカラヤンの解釈を採用しないというだけです。そもそも、旧約聖書メンデルスゾーンのそもそもの宗教であるユダヤ教の経典です。それが実はヨーロッパにも息づいていることをはっきりと示した作品です。軽めの発声を選択しつつも、崇高な音楽であるべきだと個人的には思います。

一方カラヤンは、テクストが旧約聖書であるという点に注目し、メンデルスゾーンの心の内まで分け入った解釈を選択したとも言えます。そう考えますと、この演奏を切って捨てることは私の美意識と異なるとはいえできない相談です。

メンデルスゾーンの心の内に分け入ったからこそ、合唱団にベルリン・ドイツ・オペラ合唱団を選択したと考えれば、これはこれで十分聴きごたえのある演奏なのです。こういう解釈もある、と。ただ、この演奏をどこまでコンサートで再現できるかと言えば、なかなか難しいと言えるでしょう、テクストが旧約聖書なので。唯一無二とも言えるカラヤンの芸術は、批判している人が見ている以上に深いと私は思います。その点を見逃すべきはないでしょう。カラヤンを軽薄という人のほうが軽薄な視点に立っているように私には見えます。私自身は、カラヤンと美意識が異なるとはいえ、カラヤンにそこまでの軽薄さを見いだすことが出来ません。

 


聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
交響曲第2番変ロ長調作品52「讃歌」
エディット・マティス(ソプラノ)
リーゼロッテ・レーブマン(ソプラノ)
ヴェルナー・ホルヴェーク(テノール
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団(合唱指揮:ヴァルター・ハーゲン=グロル)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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