かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:飯森範親と日本センチュリー交響楽団のハイドン・マラソン23

今月のお買いもの、令和6(2024)年7月に購入したものをご紹介します。e-onkyoネットストアにて購入しました、日本センチュリー交響楽団によるハイドン・マラソンの第23集です。ハイレゾflac192kHz/24bitです。

このハイドン・マラソンとは、飯森範親と日本センチュリー交響楽団ハイドン交響曲を全曲を演奏するといういわばハイドン・ツィクルスのことを指します。演奏会も行われておりまして、最初は大阪いずみホールで、現在はザ・シンフォニーホールで行われています。このブログでも第1集から第22集までを取り上げております。

この第23集は、2022年12月9日のHM29と2023年8月4日のHM32(共にザ・シンフォニーホールで収録)からのものが採用されています。HM29からは第59番「火事」、HM32からは第29番と第55番「校長先生」が収録され、全部で3曲が収められました。

第55番の「校長先生」も第59番の「火事」も内容とリンクしておらず、「校長先生」に至ってはハイドン本人の命名ではありません。「校長先生」は第2楽章の主題が規則正しいさまを威厳がある校長先生に準えてのちに名付けられたもので、第59番の「火事」は火事を題材にしているのではなく第59番が「大火事」という戯曲が上演されたときに演奏された形跡があることからこれものちに名付けられた名称です。いずれもハイドン命名ではないとされていますが、第59番は残されたスコアに記述があることから、ハイドンが名付けたとも言われていますが後から記入された可能性も否定できず、いずれもハイドン命名ではないとされています。

ちなみに、それぞれ3曲の成立は収録順で言えば第1曲目の第29番が1765年、第2曲目の第55番「校長先生」が1774年、第3曲目の第59番「火事」が1769年と、時系列に従っていません。ただ、1760年代後半~1770年代前半の作品が収録されたと言えましょう。実際のハイドン・マラソンの演奏会のプログラムも必ずしも同じ時期の作品が演奏されたり時系列に沿って演奏されたりはしないので、ハイドン交響曲をとにかく全曲楽しもうという趣向であることは間違いありません。これもまた一つの演奏の方法だと言えますし、その趣向には私は大いに賛同します。レファレンスで番号順や成立順で聴きたいのであれば今やパソコンでも聴ける時代ですので、一人一人がやればいいことなのですから。特にライヴの場合、番号順での演奏はハイドンのようにあまりにも多い作品数だと意味をなさないこともあります。コアなクラシックファンならともかく、とにかく聴くことが好きという人だとそれはあまり興味を持たないことでもありますから。

時系列などを考慮せずシャッフルして演奏することで見えてくるのは、ハイドンの芸術の本質だと思います。この3曲を聴いても、ハイドンはこの1760年代後半~1770年代前半という時代に作曲した作品はちょうどエステルハージ家楽団の副楽長から楽長に昇進した時期の作品で、第59番「火事」が副楽長時代、第29番と第55番が楽長時代の作品です。そうなると、このアルバムに関しては、ハイドンのキャリアに於いての音楽性の差を聴いてみるという編集方針であることが浮かび上がります。さて、そこで差があるかと言えば、基本的には差はないと言っていいと思います。特に副楽長時代の作品である第59番「火事」はとても元気のある作品でもあります。楽章数で言えば3曲すべて4楽章制。ハイドンの自信が交響曲の様式を固めつつある時期だと言ってもいいかと思います。そういうハイドンの芸術を楽しそうに弾いているさまが演奏から見えるのがこのアルバムの魅力ですが、それは最近のハイドン・マラソンのアルバムの傾向でもあります。

本来そういうことは映像がないと分からない部分があるのですが、映像無しで聴き手に語り掛けるというのは演奏レベルが高くないと難しいのです。つまり、日本のプロオーケストラのレベルが上がったことを如実に表すのです。私が本格的にコンサートに足を運び始めた20年ほど前では考えられない進歩なのです。その間に、アマチュアオーケストラのレベルも上がっているのです。日本のクラシック音楽シーンが変わりつつあることを如実に感じる事例です。

こういう演奏に触れますと、海外オケを聴くことは楽しいですし今でも憧れではありますが、絶対聴きに行きたい!とも思わなくなるのです。海外オケの演奏を聴きに行けるほど私は裕福ではないですし、日本のプロオケですらひいひい言っているわけなので。でも、だからと言って悔しかったりするかと言えば全然そう思いません。日本のプロオケを聴くのだってものすごく楽しくて才能豊かな人たちがいるのに、海外オケを聴きに行くだけのリソースはありません。日本のオーケストラで十分楽しめるのです。お金がある人はぜひとも海外オケも聴きに行ってほしいですが、日本のオーケストラもプロアマ問わず是非とも聴きに行ってほしいと思います。

さらに言えば、このアルバムはハイレゾであるということも、映像がなくてもその演奏を楽しめるという点につながっているのではないかと思います。やはり情報量の多さはその場を伝える一助になると思います。勿論すべてを伝えられるわけではないんですが少なくともCDよりは臨場感のある演奏になっていると思います。これはコンサートに足を運ばないと分からないところではあるんです。アマチュアでいいので是非ともコンサートに足を運び、コンサートホールの響きを味わってほしいと思います。そのうえでハイレゾ音源を聴きますと、CD時代では分からなかった演奏の楽しさがわかってくるかと思います。この日本センチュリー交響楽団がCDだけでなくハイレゾで発売していることはかなり先見の明があることだと思います。いずれ取り上げる予定ではありますが、銀座山野楽器本店でCDや映像作品の取り扱いが終了されました。そういう時代にオーケストラが自身を発信し世間に売り込んでいく時、果たして旧来のCDというメディアで果たしていいのかという点は押さえるべきですし、この時代を予見していたとも言えます。大阪のプロオーケストラも本当に魅力あるなあと感じざるを得ません。海外オケよりも、いつかは大阪まで日本センチュリー交響楽団の演奏を聴きに行きたいものだと思っています。

 


買ってきたハイレゾ
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第29番ホ長調Hob.I:29
交響曲第55番変ホ長調Hob.I:55「校長先生」
交響曲第59番イ長調Hob.I:59「火事」
飯森範親指揮
日本センチュリー交響楽団
(EXTON ovcl00841 flac192kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。