かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:飯森範親と日本センチュリー交響楽団によるハイドン・マラソン21

今月のお買いもの、令和5(2023)年12月に購入したものをご紹介します。飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団の演奏によるハイドン・マラソンを収録したアルバムの第21集です。e-onkyoネットストアでの購入、ハイレゾflac192kHz/24bit、再生はwindows11のmousePCでアプリはTuneBrowserを使用、スピーカーはソニーのSRS-HG10をPCとUSB接続、WASAPI排他モードです。

この音源は、2021年9月30日と2022年5月26日に、大阪ザ・シンフォニーホールで収録されたものです。収録されているのは第69番「ラウドン将軍」、第71番、第53番「帝国」の3つで、第69番と第71番が2021年9月、第53番が2022年5月です。このシリーズの面白いところは、一つのコンサートをそのままアルバムにするのではなく、時にはいくつかのコンサートの録音を組み合わせるところです。そうして、一つの編集方針で一つのアルバムを作り上げるというわけです。かつてオーケストラ・ダスビダーニャが定演をそのままCDにしていたのとは別のアプローチ。これはこれで面白いと思います。コンサートの雰囲気を味わいたければ大阪まで来てね、という・・・思わず苦笑しますね。そりゃあそうです。コンサートをしないのであればかつてのコロムビア交響楽団のように録音の時だけ結成するオーケストラでいいわけですからね。

今回収録された3曲は、すべてハイドンエステルハージ楽団に奉職してある程度の時間が経った作品ばかり。つまり、この第21集では、そうした作品の演奏を、二つのコンサートから集めてきた、というわけです。具体的には、1776年~1779年という時期に作曲された作品です。ちょうどハイドンの脂の乗り切った時期。円熟味が増している時代です。そういえば、この時期はベートーヴェンが生まれた頃に相当します。ベートーヴェンが生まれたのが1770年です。ハイドンはそうした時期にエステルハージ楽団に奉職し、副楽長の地位にあった、ということになります。

その時代に、ハイドンは4楽章形式の交響曲を書いていました。ここに収録されている3曲はいずれも4楽章形式。楽章形式としては、交響曲の様式として固まった時期だと言っていいでしょう。勿論、モーツァルトが3楽章形式も書いていますが、しかし時代の最先端は4楽章形式であると認識し始められていたと考えて差し支えないでしょう。そう考えると、エステルハージ公はかなり先進的な考えを持った人だったと言えます。しかし、下手にウィーンなどの都会にいると雑音が入ってきます。故にハンガリーという、中心からは離れた場所で楽団を結成させ、楽しんでいたと考えるのが自然です。

その背景が、この3曲を選んだ理由なのかもしれません。録音時期は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて非常事態宣言も発令されていた時期です。ひと時、そういう世の苦しみから逃れる、楽しい時間を過ごしてほしい・・・そんな団員や飯森氏の想いが、選曲からうかがえます。人はパンのみに生きるにあらず、です。パンも楽しみもどっちも必要なんです。当時、音楽は不要だという意見も数多く見受けられました。しかし、実際に私たちが経験したのは、芸術がどれほど自分たちの生活に必要なものだったのかを知る機会だったのです。

演奏を聴いていますと、随所に演奏する喜び、楽しさにあふれています。にじみ出ています。ちょっとしたアーティキュレーションアインザッツに、その意思を感じます。聴いていてとにかく楽しい!それはハイドンだからでしょ?という人もいるかもしれませんが、ハイドンだからと言って重々しくだけ演奏したり、軽薄に演奏したりする向きもあります。しかしこの演奏は、曲が持つ精神を大切にしているからこそ、楽しいんです!演奏しながらニヤリとしている団員の姿が目に浮かぶようです。ね、音楽って必要で楽しいでしょ?という・・・それでも、不要と言うの?という意思表明に聴こえます。

その意味では、新型コロナウイルス感染拡大は、私たちにマイナスをもたらした一方で、本当に大切なものとは何かを覚醒させたとも言えるでしょう。振り返れば、国内にたくさんのすぐれたタレントがいることを、私たちは海外アーティストが来れないからこそ、知ることが出来ました。部分的な鎖国に陥ったことで、自国の芸術家のすばらしさに触れることが出来ました。そのうえで、再び国を開くことになりました。それがいかに素晴らしいことなのかを、今私たちは実感していると言えましょう。

この経験を生かした演奏を続けている、日本センチュリー交響楽団の演奏は、これからも目が離せません。

さて、このエントリが今年最後になりました。皆様がよいお年を迎えられますよう、願っております。なお、明日元旦は新年のあいさつをさせていただき、「東京の図書館から」のコーナーは明後日2日に掲載予定です。

 


聴いているハイレゾ
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第69番ハ長調Hob.I:69「ラウドン将軍」
交響曲第71番変ロ長調Hob.I:71
交響曲第53番ニ長調Hob.I:53「帝国」
飯森範親指揮
日本センチュリー交響楽団
(EXTON ovcl00824 flac192kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。