かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:ロバート・ショウが振るベートーヴェンのハ長調ミサ

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ベートーヴェンのミサ曲ハ長調他を収録したアルバムをご紹介します。

このアルバムを借りてきた理由は、指揮者にあります。指揮はロバート・ショウ。ある一定の年齢以上の方なら、なつかしい名前なのではないでしょうか。そして、合唱をやられている方にとっては、親しみ深い名前なのではないでしょうか。

ロバート・ショウアメリカの指揮者ですが、そのキャリアは実は合唱から始まっています。

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ロバート・ショウ合唱団と聞けば、トスカニーニの!と想起する方も多いかと思います。そう、そのトスカニーニのタクトの元、合唱を担当した一つが、ロバート・ショウ合唱団。組織したのが、ロバート・ショウなのです。

私自身、図書館で見つけた時に懐かしさを感じたのですが、一方で録音年代が気になりました。1989年・・・そんな時代だったっけ?と思いつつ借りたのがこの一枚です。しかも、私自身ロバート・ショウと言えば合唱指揮のほうで存じ上げていました。

ところが、このアルバムのオーケストラは、アトランタ交響楽団ロバート・ショウは1967年から1988年までアトランタ交響楽団音楽監督を務め、さらに併設の合唱団を設立しました。そのタイミングでロバート・ショウ合唱団が解散していることから、恐らくこのアトランタ交響楽団の合唱団に組織替えしたのだろうと思います。いったん合唱団を解散させ、その後アトランタ交響楽団付属合唱団として組織しなおす・・・そんなところだったのだろうと思います。どこか、ヤマトよ永遠にREBEL3199の元第65護衛隊隊員たちにそっくりと思うのは私だけなのでしょうか・・・

演奏は、その合唱団が秀逸!プロだから当たり前ともいえますが、ゆったりとしたテンポの中、力強く生命力に富んだ合唱!それは、恐らく指揮者がロバート・ショウだからということもあるかと思います。フレージングを大切にし、合唱団にはしっかり息を吸わせることで、歌とオーケストラのバランスを取り、結果最高の結果を導き出していると言えましょう。

この辺りは、やはりロバート・ショウが合唱団出身であるということがポイントでしょう。合唱指揮者だからこそ合唱を知り尽くした上でオーケストラに指示や要求をしていることが明白なんです。そしてそれは、状況証拠として、アトランタ交響楽団付属合唱団が、そもそもはロバート・ショウ合唱団だったことを示唆するのです。おそらくですが、ロバート・ショウアトランタ交響楽団音楽監督に就任したことは、アトランタ交響楽団が合唱作品を演奏していくという方針の元決定された結果だと考えていいと思います。

こういうところに、アメリカのヨーロッパ的な所を感じるのですよね~。なので、オーケストラはヨーロッパがよくアメリカなんて!とか、小澤はなんでカラヤンなのか?アメリカならバーンスタインだろうとかいう議論は私は意味のない不毛なものと考えます。ロバート・ショウの実力を認めたのが、トスカニーニということも、私は不毛と判断する理由の一つです。トスカニーニと言うとNBC交響楽団のイメージが強くアメリカという意識があると思いますが、そもそもはヨーロッパの指揮者です。

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なぜトスカニーニロバート・ショウを評価したのか?詳しいことはわかりませんが、少なくとも、合唱指揮を手がけていたという点を評価した可能性は高いと私は判断します。それは、ヨーロッパでも聖歌隊の伝統からアマチュアや学生の合唱団が多く組織されて、楽しんでいるからです。同じ現象がアメリカでも存在し、そのキャリアの中にロバート・ショウがおり、その実力が高かったが故だと判断できるでしょう。

このアルバムには、合唱指揮の記載はありませんが、ロバート・ショウが兼任していた可能性はあります。お分かりの方がいらっしゃいましたらコメントをお願いしたいのですが、兼任でも私は不思議はないと思っています。

そのうえで、ここで演奏されているのは、ベートーヴェンのミサ曲ハ長調エステルハージ公の依頼で作曲された作品で、教会との関係は薄いのですが、とはいえ、実際は聖名祝日のために作曲された作品です。ハ長調という「聖なる調」が使われている点からしても、キリスト教と全く無関係とはいえません。

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ロバート・ショウがその経緯を知らないはずはないでしょう。こういった作品の演奏をして、オーケストラの実力アップとメジャーデビューのために、アトランタ交響楽団ロバート・ショウが招聘されたと考えていいでしょう。カップリングもベートーヴェン管弦楽を伴う作品が二つ。「悲歌 作品118」は詳しいことはわかっていませんが、恐らくベートーヴェンの友人でもあったヨハン・バプティスト・パスクヮラーティ男爵の夫人エレオノーレの死に際し、その死後に弔うために作曲されたと考えられています。

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歌詞が墓碑銘として作られ、その墓碑銘にベートーヴェンが作曲したと言う点も、ベートーヴェンバスクァラーティ男爵だけでなく、その妻エレオノーレとも懇意だったことを予感させます。エレオノーレと言えば、ベートーヴェンが若き日に恋した女性の名前でもありますが、そのエレオノーレは1841年死去なので、別人です。ですが、エレオノーレという名前で、若き日を思い出し、ひそかに恋していた可能性は否定できません。少なくとも、家族ぐるみで仲が良かったのではないでしょうか。そんな女性が死去すれば、友人の頼みでもありますから、曲をつけるのでは?と思います。この墓碑に関しては夫のヨハンの作と言われていますが、こんな資料もあります。

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その経緯を知っていたからなおさら、ベートーヴェンは作曲したという可能性もありますね。

最後の曲は有名な「静かな海と安けき航海」。ミサ曲ハ長調ハイドンの伝統を踏まえたものとはいえ、古典派の時代はバロックの音楽から革新性を持った時代なので、当然バロック様式ではないカンタータとなります。テクストはゲーテの二つの詩。それを一つの世界に統合したカンタータです。カンタータ自体は古い言葉かもしれませんが、それを全く新しい様式で紡ぎ出したということになります。時間の流れというのは、らせん状だと気が付かされます。

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ある意味、ベートーヴェンの合唱作品の特徴を凝縮させたアルバムだと言え、その点をロバート・ショウと合唱団がしっかり踏まえていると判断してもいいかと思います。そのうえで、見事な合唱と、素晴らしいサポートのオーケストラによる、生命力に満ちたアルバムです。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ミサ曲ハ長調作品86
悲歌 作品118(ソプラノ、アルト、テノール、バスと弦楽合奏のための四重奏曲)
カンタータ「静かな海と安けき航海」作品112
ヘンリエット・シェレンバーグ(ソプラノ)
マリエッタ・シンプソン(メゾ・ソプラノ)
ジョン・ハンフリーテノール
マイロン・マイヤーズ(バス)
ロバート・ショウ指揮
アトランタ交響楽団・合唱団

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