かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:バッハ・コレギウム・ジャパン 受難節コンサート2024 マタイ受難曲

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年3月29日に聴きに行きました、バッハ・コレギウム・ジャパンマタイ受難曲のレビューです。

キリスト教において、毎年3月の後半あたりは受難節と言って、キリストの磔刑(受難)をテーマにした曲が演奏されることが多いです。今年はバッハ・コレギウム・ジャパンはかなり盛沢山に演奏しており、2月の初頭にはバッハのヨハネ受難曲を演奏しています。

そしてこの3月は、マタイ受難曲ということになりました。実は、この受難節におけるバッハの受難曲を演奏するのはバッハ・コレギウム・ジャパンの通例となっており、東京と神戸でそれぞれ演奏会をするのが普通です。私ももう20年位前に聴きに行ったことがありますが、それ以来の受難節に聴くバッハ・コレギウム・ジャパンの受難曲ということになりました。

それだけ久しぶりに足を運んだ理由は、指揮が鈴木優人氏だからです。鈴木雅明氏の息子でもある鈴木優人氏ですが、一方でバッハ・コレギウム・ジャパンでは古典派担当というイメージが私の中にはあり、その優人氏がタクトを振ると言うことで、父の鈴木雅明氏とどのような違いがあるのだろうか、どんな演奏をしてくれるのだろうかという興味があり、チケットを取りました。プロはプロであるがゆえにチケット代は高いのでなかなか私は手を出さないのですが、バッハ・コレギウム・ジャパンとなれば興味があるものは別です。

今回のプログラムは、マタイ受難曲ただ一つ。休憩も含め3時間はかかる大曲なので、それ以外を入れようがありません。

まず、冒頭合唱。父雅明氏と異なり、かなりゆったり目で入りました。これは親子で異なったぞ!と内心ワクワクしてきます。やはり優人氏のタクトであれば、雅明氏とは異なる解釈が聴きたいところですから、これは嬉しかったです。

ただ、全体的にゆったり目かと言えばそうでもなく、特にイエスが苦しんだり、悩んだり、そして磔刑へ至る場面などでは、随所でテンポアップしており、下手すれば雅明氏よりも速いくらい。ただ、それがとても自然でそのテンポに登場人物の内面が反映されているかのように聴こえるのです。この辺りは、やはり雅明氏から受け継いだものだと言えるでしょう。そのうえで、自分の解釈は何かを追及している姿勢が最後まで心地いいです。実は、私としてはテンポがあまりにも速すぎたり、遅すぎたりするのは好きではないんですが、とても説得力のある解釈なのです。これは1月に聴いた父雅明氏が振られたブラームスドイツ・レクイエムもそうですが、必ずしも私が好きなテンポではないにも関わらず、納得させるだけの説得力はやはり世界のトップレベルであるバッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者であると言えますし、その指示に応える団員達だと言えるでしょう。

こういう演奏を聴きますと、やはりプロオケっていいなあと思いますし、6000円というアマチュアに比べればはるかに高いチケット代金が安く見えてくるから不思議です。コンサートの前日にすかいらーくの横川会長がテレビで述べておられましたが、金額に見合うのではなくそれ以上の価値を商品に付与すれば、おのずと値上げしても消費者は買ってくれるのではないでしょうか。バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏は常に、支払った金額以上の価値を、聴衆に与えてくれるように思います。だからこそ、ファンがついてくるのだと思います。ちょうど値上げラッシュで鉄道ではダイヤ改正があり、JRの中では時刻表を撤去するというところも出てきていることが、果たしてバリューに見合うことなのか、考えさせられます。

そういう普遍性を、バッハの受難曲は持っているのです。会衆がイエスをピラトに突き出し、その結果磔刑にされていくさまは、まさに現代でも同じようなことが繰り返されているわけで、人類はバッハやイエスが生きた時代と何ら変わりないですし、洋の東西で異なることもありません。その普遍性を、一つの人間ドラマとしてしっかりとした解釈の上で表現する鈴木優人氏とバッハ・コレギウム・ジャパンは、やはり世界の古楽演奏のトップクラスと言っていいでしょう。

そして、今回イエス役を務めたのが、このブログでも何度か登場している加耒徹氏。瀬川氏のサロンでその美声を幾度も経験させていただきましたが、本当に出世したと言う印象が強く、歌唱も堂々としておりまさにイエス人間性を十分表現されていたと思います。特に磔刑まではイエスエヴァンゲリストと同様に露出が多いソリストです。合唱団の中で加耒氏の隣に陣取ったのが、かつて自身もイエス役をやることもあった浦野智之氏。30年来のバッハ・コレギウム・ジャパンのファンである私にとって、かなり熱いシーンでした。残念だったのは、席が舞台真横ではなくやや後方だったこと。これなら、思いっきり後ろでも良かったなと思います。なぜなら、マタイ受難曲では合唱団が二手に分かれるからなんです。私の位置では、半分までしか見えず、加耒氏も顔を出してようやくという位置でした。ホールは東京オペラシティコンサートホール。次回からは考えた方がいいなあと思いました。勿論、聴くには全く問題ないです。

他のソリストバッハ・コレギウム・ジャパンではおなじみの方々が勢ぞろいし、軽くも力強い声楽が聞こえたのるのも、バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会ならでは。その発声が聴きたくて行くのですから!合唱団はアマチュアの半分以下でしか人数がいないのに、ホールを満たす合唱が素晴らしい!私としては2020年の第九以来のバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会でしたが、もう満足という言葉では言い表せない喜びに満たされております。

最後に、終演後合流していただいた、中央大学混声合唱団、団長の佐藤様に感謝申し上げて、今回は終わりにしたいと思います。こうなると、調布のカンタータも行きたい・・・財布と相談して決めたいと思います・・・

 


聴いて来たコンサート
バッハ・コレギウム・ジャパン 受難節コンサート2024
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
マタイ受難曲 BWV244
ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)
松井亜希(ソプラノⅡ)
アレクサンダー・チャンス(アルトⅠ)
久保法之(アルトⅡ)
ベンヤミン・ブルンス(エヴァンゲリスト/テノールⅠ)
櫻田亮テノールⅡ)
加耒徹(バスⅠ/イエス
マティアス・ヘルム(バスⅡ/ピラト)
鈴木優人指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン

令和6(2024)年3月29日、東京、新宿、東京オペラシティコンサートホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。