かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:祝祭カンタータ~J. S. バッハ:世俗カンタータ Vol. 8

今月のお買いもの、令和6(2024)年2月に購入したものをご紹介します。e-onkyoネットストアにて購入しました、バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハ世俗カンタータの第8集です。

バッハの世俗カンタータも集めると決めて、しばらく放置していたものでした。飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団による「ハイドン・マラソン」が一息つきましたので、何を買おうかな、今回はスキップしようかなと思っていたところ、バッハ・コレギウム・ジャパンのアルバムが目につき、しかも、世俗カンタータでしたので、購入を決めました。ハイレゾflac96kHz/24bitです。

バッハ・コレギウム・ジャパンのアルバムは実はすべてハイレゾです。SACDハイブリッドなので、SACDプレーヤーがあればDSDサウンドを楽しむことが出来ます。ただ、私はそんな高級なデッキはもっていませんし、持てません。そのため、PCで聴くことのできる音楽ファイルを選択しているわけなのですが、それでも十分楽しめます。ただ、BCJの場合は、1921kHzではないこともあります。このアルバムもそうでした。なのでPCではTune Browserで192kHz/32bitで聴いております。ちなみに、リサンプリング再生でなくても十分な音場が形成されています。この辺りは録音のすばらしさと共に、Tune Browserの再生能力のすばらしさもあります。もう手放せませんね。おそらく次のPCでも再生アプリはTune Browserを選択すると思います。

さて、このアルバムは「祝祭カンタータ」とありますが、実はバッハのカンタータの中に祝祭カンタータというジャンルがあるわけではありません。用途として祝祭用という意味です。収録されているのは、BWV206と215。実はその祝祭というのは、ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト2世(ポーランド王アウグスト3世)に対してでした。この二つとも、フリードリヒ・アウグスト2世の祝祭用です。

BWV206はもともとフリードリヒ・アウグスト2世の誕生日を祝うために作曲されたもので、1736年に初演されています。ですが、実はこの曲、そもそもは1734年10月7日に演奏されるはずでした。しかし選帝侯が訪れたのは10月2日。しかも、知らされたのはその3日前です。当然間に合うはずはなく、そのため演奏されたのがBWV215だったのです。

www.classic-suganne.com

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東京書籍「バッハ事典」と共に、上記二つのブログを参考にして今回書いています。「バッハ事典」ではぼんやりと「当時の政治状況」という形に、紙面の関係で短く述べられていますが、実際は上記二つのエントリのような、当時の複雑で喫緊な状況を反映した作品です。BWV206は、当時の状況を反映し選帝侯を祝すために、川を擬人化させました。4つの川が争う内容で、音楽劇の形を取っていますが、最終的にライプツィヒを流れるプライセ川が仲裁し仲を取り持つ内容ですが、当然、ライプツィヒはバッハがいた町であり、自治が認められていたとはいえ選帝侯をいただく土地であるわけです。明らかにザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト2世を讃える内容です。実際は選帝侯は来られなかったようですが、噂は伝わるものです。え?でも来なければ問題ないのではって?

今年令和6(2024)年のNHK大河ドラマは「光る君へ」ですが。そのドラマの中でも出てきますが、実は平安時代というのは噂は社会や政治において絶大な力を持っていたのです。メディアがない時代というものは洋の東西を問わずそういう傾向があり、当然1734年、36年のライプツィヒでも同じだったと言っていいと思います。そうなると、下手なものは演奏できません。ましてや、結果的に来なかったとはいえ、来る予定ではあったのですから、下手なものを作ることなんてできません。当然の内容だと言えるでしょう。

一方、10月2日当日に演奏されたのが、2曲目のBWV215です。とはいえ、そもそもはBWV206を演奏する予定だったわけですが、それは10月7日が選帝侯の誕生日だったので誕生日用の曲です。しかし10月2日は誕生日が近いとはいえ、実際には誕生日ではありません。そこを指摘されたときに、仮に王の逆鱗に触れれば、下手すれば命はありません。急いで祝祭用の曲を仕立て、練習とゲネプロまでしなくてはならないのです。となれば、かつて演奏した曲をある程度使うしか間に合わせる方法はありません。はい、この曲、パロディ・カンタータなのです。第1曲を聴けば、どこかで聞いたことがあるぞ!と思うはず。実は第1曲はミサ曲ロ短調の「いと高き所にオザンナ」のパロディです。ですがミサ曲ロ短調は実はこのカンタータのパロディ。ではこの時にはどれをパロディとしたのかと言えば、1732年8月3日のアウグスト2世の命名日祝賀用に作曲された世俗カンタータ「国の父なる王よ万歳」BWV.Ahn.11(音楽喪失)です。

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つまり、2年前にすでに演奏済みだったわけです。第7曲もクリスマス・オラトリオと同じ曲ですが、クリスマスオラトリオが1734年の年末の初演ということを考えますと、恐らくこれも1734年よりも前の作品を転用したと考えられるでしょう。さらに第3曲もどこかで聴いた曲。確かに、全編パロディで済まし、歌詞だけ差し替えたと考えてよさそうです。とはいえ、それでも演奏するほうとしては新作に近いわけで、環境が悪い中、トランぺッターだったライヒェは演奏後帰宅途中で死去してしまいます。それだけ過酷な切羽詰まった状況だったと言えるでしょう。民主主義である現代日本に対しても寓意的な意味を持っていると思うのは私だけなのでしょうか・・・

演奏は、バッハ・コレギウム・ジャパンですから悪かろうはずがありません。ソプラノのハナ・ブラシコヴァものびのびとした声ですし、セタガヤ・クオドリベットを率いるアルトの青木洋也氏も美しく力強い!そのほかのソリストも勿論素晴らしいですし、恐らく合唱団の中に入っての形だと思いますが完全に溶け込んでいるのもバッハ・コレギウム・ジャパンならではの演奏です。ハイレゾでかつリサンプリング再生で聴きますと、本当にホールで聴いているかのよう。おそらくロケーションは神戸女学院大学チャペルだと思われますが、そこにいるかの感覚になります。先日聴いてきました、バッハ・コレギウム・ジャパンドイツ・レクイエムを思い出します。オペラシティの舞台袖の客席で聴いているかのような感じです。やはり、BCJの演奏もできるだけハイレゾで聴くのがいいですね~。その意味では、ハイレゾへ移ってよかったと言えましょう。バッハ・コレギウム・ジャパンの真の魅力をそれだけしっかりと味わうことが出来るってもんです。リサンプリングを外し96kHz/24bitのままでもすばらしい音場が広がりますが、リサンプリング再生にして192kHz/32bitのほうがより臨場感あふれる音場になります。そしてそのほうが合唱やソリストの表現を正確に聴き取れるだけ、つい躍り出してしまいます。まるで「オトナブルー」のよう・・・それについては、別途エントリを上げたいと思いますが、バッハの音楽は喜びを表現するときは常にバロックダンスの要素である舞曲を使うという点が、ここでも発揮されており、その舞踊性をしっかりとバッハ・コレギウム・ジャパンは表現しているという点で、やはり世界でもトップクラスの団体だと言えましょう。

 


聴いているハイレゾ
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第206番「しのび流れよ、戯るる波」BWV 206
カンタータ第215番「おのが幸を讃えよ、祝されしザクセン」BWV215
ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)
青木洋也(アルト、カウンターテナー
チャールズ・ダニエルズ(テノール
ロデリック・ウィリアムズ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SA-2231 flac96kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。