かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:バッハカンタータ全曲演奏シリーズ42

今月のお買いもの、3枚目は毎度おなじみ、バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハカンタータ全曲演奏シリーズの第42集です。

収録カンタータは、集録順に第72番、第32番、第13番、そして第16番です。1726年の1月演奏用として作曲されたものが並んでいます。

このアルバムはさらに第32番、第13番、第16番がともにG.Ch.レームスの詩であるということが特色です。この詩人の詩によるカンタータは以前にも彼は作曲していますが、なぜか1726年の1月という時期に集中しています。残念ながらその理由についてまでは事典は何も語りません。聖書をもとにした深いテクストは確かにバッハ好みだと思いますが、果たしてそれだけの理由でバッハがこの時期好んで彼の詩に作曲したのか、わかりません。

まず第72番ですが、演奏としては実は一番後にされたもので、1726年1月27日に初演されています。どんなときにも神にその身をゆだねるという、いかにもキリスト教的な内容を扱っている、新年にふさわしい内容であることは間違いないでしょう。とはいうものの時期的にはすでにお屠蘇気分も抜けた1月の終わり。音楽は冒頭は厳しいもので始まります。しかしそれもつかの間、祝祭的な合唱が始まり、音楽は比較的明るい曲調で貫かれて終わります。

次に第32番ですが、1726年1月13日に初演されました。内容としましてはイエスと魂の霊的な対話です。ですのでかなり内容としては深遠なものとなっていまして、音楽もそれだけに静かなものとなっています。清らかな新年を意識した音楽であることは間違いありません。それにしてもバッハのカンタータにはこういった「霊的対話」という内容が多いですね。たまには自分自身を見つめなおせ!と叱咤激励されているように感じます。合唱は最後にしか出てきませんが、そのコラールもどこかで聞き覚えがあるような内容という、バッハのアレンジ能力にも感嘆します。

3曲目の第13番は1726年1月20日に初演されました。福音書章句の「わが時いまだ来たらず」という言葉の「時」を待ち焦がれて苦悩している信者の内面を描いたものと説明されますが、しかしこれがそれほど苦悩しているという様子は音楽から直接は受けません。これはいろんな比喩を使っているためで、この点は私たち日本人には理解しにくい部分ではあります。しかし、だからと言ってちりばめられている表現を拾い集めることをあきらめてはなりません。そうしているうちにたどり着く最終合唱は、実はレームスではなくバッハが付け加えたものだろうと言われていますが、どこかでこれも聞き覚えのある旋律が・・・・・しかも、単なるコラールではない・・・・・まるで「インスブルックよさらば」のようです。もともとはフレミングのコラールだそうですが、事典にも記載があるのですが、イザークのその曲にそっくりです。この辺りはどれがもととなって何がアレンジなのかは事典だけではわかりかねます。

最後の第16番は1726年のまさしく元日に初演された曲です。用途もはっきりと新年とされていまして、音楽的にも祝祭感としずしずとした感覚とが同居していまして、浮いた部分が全くない、新年にふさわしい自らを清めるような曲です。冒頭の合唱とコラールはドイツ語訳のテ・デウムでして、その部分の対位法はとてもバランスが美しく、男声部の長音部と女性部の動きがある部分のコントラストは、のちのハイドンモーツァルトなどに確実に受けつがれている美しさです。この曲は1749年に再演されていまして、その時には第6曲に手を加えています。

全体としましては、やはり伸びやかな合唱と教会での録音らしい残響とが美しく、それでいて緊張感も持ち合わせる演奏となっています。このシリーズが始まった時からはソリストの陣容は様変わりですが、合唱団は本当にその高いクオリティが変わらないなと思います。プロだから当たり前ではありますが常に上から音を取る抜群の発声とそれによる伸びやかな高音部と、男声のしっかりとした低音部。室内オケよりもさらに小さい編成だからこそはっきりと聞き取れる通奏低音とオルガン。

約3000円はいまどきのCDとしては高い部類に入りますが、まったくそれが惜しくない演奏です。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第72番「すべてはただ神の御心のままに」BWV72
カンタータ第32番「いと尊きイエス、わが憧れよ」BWV32
カンタータ第13番「わがため息、わが涙は」BWV13
カンタータ第16番「主なる神よ、汝をわれらは讃えまつらん」BWV16
レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)
ロビン・ブレイズカウンターテナー
ゲルト・テュルクテノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SACD-1711)



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