かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:BCJバッハカンタータ全曲演奏シリーズ48

今月のお買いもの、まず一枚目はBCJのバッハ教会カンタータ全曲演奏シリーズの第48集です。収録曲は順番に第34番、第117番、第98番、第120番です。

いずれも1726年ころから1729年あたりにかけて作曲されたもので、実はこのCDでは年代が正確にはわかっていないものが中心となっています。

まず第34番「おお永遠の火、おお愛の源よ」です。教会カンタータとしては1740年代の作品で、「バッハ事典」ではその表記になっていますが、実はもともとは世俗カンタータ(BWV34a)でして、鈴木氏はその世俗カンタータとして成立した点を重視して1720年代に入れています。きれいな鏡像カンタータで、第3曲目を転回点としています。

しかし、演奏されているテクストは教会カンタータでして、聖霊降臨節の内容となっています。もともとの世俗カンタータは婚礼用でしたが、それを上手に聖霊降臨の喜びに使っています。これも、そもそもバッハの曲が舞曲が多いことがその理由としてあげられるでしょう。

次に第117番「賛美と栄光 至高の善なる者にあれ」です。これは用途不明、初演も不明で、1728年から1731年にかけてライプツィヒでだろうと言われている作品です。モーツァルトであれば偽作説も浮上するようなこの作品は、直筆譜が残っているという妙な作品です。そのくせ、記録が残っていないという曲者です。第3曲目はおそらく旧作からの転用だろうと言われていまして、そのほかも旧作からの転用ではないかと言われています。なるほど、それであればなぜこれだけ妙なのかは説明はつきます。

しかし、それでもなぞは残ります。ではなぜ演奏記録が残っていないのか、です。初演が分からなくても再演の記録くらい残っていてもよさそうなものです。しかしそれすらないのはいったいなぜなのかが、それでは説明つかないからです。

いずれにしても、直筆譜の透かし模様から学者が1728年から1731年としているに過ぎない曲です。神への賛美を歌い上げていますが、それはいろんな場面でそう歌い上げるわけなのです。そのあいまいな点が全体に漂う作品ですが、音楽的には質素で平明な、美しい曲で、木管の多用が編成としては特徴的です。構成的には鏡像カンタータとは言いがたいのですが、変形とは言えるかもしれません。中心点である第5曲目をはさんだ2つ以外は対応していますが、第4曲目と第6曲目が対応していないのも、この時期としては不自然な気もします。

3曲目は第98番「神なしたもう御業こそいと善けれ」です。バッハが好んだS.ローディガストの詩にもとづく曲で、それが第100番まで3つ並んでいますが、その第2曲目となる曲です。これは1726年11月10日ライプツィヒでの初演という記録がはっきりと残っている曲ですが、鈴木氏はどうも疑念があるようで、CDには曲名に括弧がついています。最後のバスのアリアに疑念があるようで、今後の録音に注目です。確かに合唱のコラールで開始されるにも関わらず、最後がバスのアリアというのも不思議な気もします。もしかすると、もともとは最後のコラールは合唱だったのかもしれません・・・・・もしそうであれば、完全な鏡像カンタータとなりますが、今の構成では鏡像カンタータとは言い切れません。

4曲目は第120番「神よ、賛美はシオンにて静けく汝に上がり」です。この曲は用途は市参事会員交代式とわかっているのですが、年代がはっきりとしていない曲です。1728年から29年の交代式において演奏されたものと推測されています。再演も1742年ごろされています。さらにこの曲は全く同じ旋律を使って二度別な曲として演奏されており、まず1729年に結婚式用の教会カンタータ(BWV120a)として、次に1730年6月30日のアウクスブルク信仰告白200年祭用(BWV120b)として使われています。1728年初演時の資料は失われていまして、1730年以降の形で伝わっています。ただし、BWV120aおよび120bいずれもこのBWV120からの改作で完全な形では伝わっておらず(BWV120aは120番だけでなく無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タ第3番からも転用されている)、この二つを演奏するにも元のBWV120から類推するしかない形となっています。このCDでは1730年以降に演奏された形で演奏されています。

6曲からなるカンタータで、偶数なので鏡像カンタータとはなっていないのが特徴です。教会カンタータでありながら世俗カンタータのような形式で書かれている点が注目だと思います。

演奏面では、第47集とソリストが全く同じであるという点がこれまた注目で、ソプラノのハナ・ブラシコヴァとテノールの水越啓が注目です。特に水越氏は桜田亮以来の日本人ソリストですが、アンサンブル上全く問題ありません。日本人全体としての声質としてはテノールであるとは昔から言われていることではありますが、世界に通用するソリストというのがいなかったように思います。すでにその実力は世界レヴェルであると言っていいでしょう。オケとだけでなく、他の3人とも全くもって自然です。

第49集も楽しみになります。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第34番「おお永遠の火、おお愛の源よ」BWV34
カンタータ第117番「賛美と栄光 至高の善なる者にあれ」BWV117
カンタータ第98番「神なしたもう御業こそいと善けれ」BWV98
カンタータ第120番「神よ、賛美はシオンにて静けく汝に上がり」BWV120
ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)
ロビン・ブレイズ(カウンターテナー)
水越啓(テノール)
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SACD-1881)



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