かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:BCJバッハ教会カンタータ全曲演奏シリーズ51

皆様こんにちは!

昨日から再開する予定でしたが、ちょっと体調が思わしくなく・・・・・というよりも、実はお休みをいただいている間に旅行へ行ってきまして、その疲れがどっと出てしまいました><

ということで、本日から再開です!

今月のお買いもの、10月に購入したものをご紹介します。まずは私がずっと追いかけております、BCJのバッハ教会カンタータ全曲演奏シリーズの第51集です。

この第51集は1727年から32年に初演されたカンタータを取り上げていますが、その中から第195番、第192番、第157番、そして第120番aの4つが収録されています。

まず、第195番「光は義(ただ)しき人のためにさし出で」BWV195です。初演の時期が定かではなく、伝えられているのは1740年代のものですが、実際には1727年から32年にかけて初演されたであろうと言われています。内容から結婚式用だととのことですが、確かに冒頭のトランペットは荘厳かつ華麗で、聴く者をいきなり引き込んでいきます。

しかし、残っている楽譜は不完全極まりないもので、2部制を採っていますがその第2部は伝えられているのは1曲だけ。実際には第30番aから転用されているとのことですが、BCJはその転用部分を演奏せず、第2部はたった1曲のみの演奏にしています。バロックでは当たり前とも言えるこういった転用を、なぜ是とせずに演奏したのかが、注目点だと思います。

第30番aとは、世俗カンタータである「たのしきヴィーダーアウよ」BWV30aのことなのですが、初演は1737年。つまり、第195番の第1稿が成立したとされる、1727年から32年の間とは乖離が生じます。それならば、演奏せずという選択肢もあったと思うのですが・・・・

というのも、実際第5曲目の合唱は、実に終曲として堂々としたものを持っているからなのです。それに続いて第6曲も合唱というのはあまりにも不自然ですから、抜くか演奏するならば実際にさらに第30番aから補うという方法もあったと思います。このあたりは、まずは楽譜重視ということなのでしょう。後は聴き手に判断を委ねます、ということなのでしょう。

実際、第6曲の第30番からの転用である合唱は、最終曲としては優れています。しかし、かなり唐突です。ですので、第1稿を採用するという方法もあったように思います。このあたりは、年代順に演奏するBCJのジレンマかもしれません。

次の第192番「いざやもろびと、神に感謝せよ」BWV192は、1730年に初演されたであろうと言われていますが、用途が分からないカンタータです。宗教記念日もしくは結婚式用だと言われていますが、それも定かではありません。3曲しかなく、実に短くコンパクトなカンタータであり、さらにテノールパートが散失していることから、和声から補う必要があるというこれもまた不完全なカンタータです。第1曲目に協奏的転回があることから、私はもともと協奏曲だったのではという疑念を持っています。構成としては急〜緩〜急の3楽章ですし、バロック期であれば、協奏曲をそのままカンタータにしてしまったという可能性は、全く0ではないだろうと思っています。

あるいは、その逆かもしれません。いずれにしても、3曲しかないというカンタータはバッハのカンタータの中ではあまりメジャーでないことだけは確かです。合唱がついて3楽章だけというのはあまりにもコンパクトすぎるからです。独唱であればまあ考えられなくはないのですが・・・・・いずれにしても、さらなる研究が待たれるところです。

3つ目の第157番「汝われを祝せずば」も、用途がさだまっていない作品ですが、初演はほぼ1727年2月6日であろうと言われています。構成としてはかなりしっかりとしたものとなっていて、独唱は男声のみで、テノールヤコブを、バスに見知らぬ人(神)の役割を与えています(ちなみに、合唱は会衆)。このことから用途としてはマリアの潔めの祝日用だろうと言われてはいますが、それでも決定ではないのがこのカンタータの経緯を複雑にしています。経緯は複雑ですがごく普通のカンタータには仕上がっています。

4つ目の第120番a「主なる神、万物の支配者よ」BWV120aは初演が恐らく1729年4月18日ごろとかなりはっきりしており、用途も結婚式用とわかっている作品です。このカンタータは使いまわしの際たるものです。以前、原曲である第120番を取り上げた時に、こう書いています。

「この曲は用途は市参事会員交代式とわかっているのですが、年代がはっきりとしていない曲です。1728年から29年の交代式において演奏されたものと推測されています。再演も1742年ごろされています。さらにこの曲は全く同じ旋律を使って二度別な曲として演奏されており、まず1729年に結婚式用の教会カンタータ(BWV120a)として、次に1730年6月30日のアウクスブルク信仰告白200年祭用(BWV120b)として使われています。1728年初演時の資料は失われていまして、1730年以降の形で伝わっています。ただし、BWV120aおよび120bいずれもこのBWV120からの改作で完全な形では伝わっておらず(BWV120aは120番だけでなく無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タ第3番からも転用されている)、この二つを演奏するにも元のBWV120から類推するしかない形となっています。このCDでは1730年以降に演奏された形で演奏されています。」

今月のお買いもの:BCJバッハカンタータ全曲演奏シリーズ48
http://yaplog.jp/yk6974/archive/750

第120番は初演時の形をそのまま伝えておらず、30年代に決定したものが今日伝わっていますが、その1730年に決定するまでの紆余曲折をこの第120番aでは聴くことが出来ます。これぞバッハがアレンジャーでもあったという証拠です。昔の私であればつまらないと一蹴してしまったところですが、今では面白くてたまりません。微妙な違いや、一緒である点など、聴きどころは満載です。

演奏面では、カウンターテナーにダミエン・ギロン、テノールにクリストフ・ゲンツを迎え、フレッシュな顔ぶれとなっています。しかし、それでも揺るぎないアンサンブルは相変わらずレヴェルの高さを見せていますし、また軽めの演奏もBCJらしくて聴いていて小気味いいものです。明るい部分には青空が見え隠れしますし、暗い部分では人間の憂いを見ることが出来ます。

編成的にどれも大規模とは言い難い作品ばかりで、しかもここに収録されているのはほとんど伝承不明のものが多い中で、ある一定のレヴェル以上をたたき出すのはさすがだと思います。こういった点はBCJを語る時あまり触れられない部分だと思いますが、こういった団体が日本にあることを、私は誇りに思います。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第195番「光は義(ただ)しき人のためにさし出で」BWV195
カンタータ第192番「いざやもろびと、神に感謝せよ」BWV192
カンタータ第157番「汝われを祝せずば」BWV157
カンタータ第120番a「主なる神、万物の支配者よ」BWV120a
ハナ・ブラツィコヴァ(ソプラノ)
ダミエン・ギロン(カウンターテナー
クリストフ・ゲンツ(テノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SACD-1961)



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