神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、大バッハの息子達シリーズの今回は第3回目。カール・フィリップ・エマヌエルの第3回です。高橋真知子のフルート、キーフト指揮コンセルトへボウ室内管弦楽団の演奏です。元音源はブリリアント・クラシックスになります。
いやあ、このシリーズは図書館で借りてリッピングしましたけれど、山野あたりで購入してもよかったなと思うくらい充実しています。ブリリアントであれば安いですしね。
さて、この第3集はカール・フィリップのフルート協奏曲が収録されているんですが、そのうちWq165はオーボエ協奏曲としてすでにこのブログでも取り上げています。
今月のお買い物:C.P.Eバッハ フルート&オーボエ協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/386
実は、このとき取り上げたCDがこの音源を借りるきっかけの一つになったことは間違いありません。その上で、モーツァルト全集の存在が大きかったのです。
この時のエントリでは、オーボエ協奏曲としてこう説明しました。
「1765年に作曲され、これはもとからオーボエのための協奏曲として書かれたものです。急-緩-急を基本として作曲されています。が・・・・・
第1楽章ではさりげなくこの曲が普通ではないことを伝えています。オケと一緒にオーボエが出ているのです!
これは古典派初期でもなかなかありません。上二つの曲は、まずオケが出てその後ソリストが出るのですが、この曲はいきなりです。」
ですが、フルートにも編曲されていたという訳です。というより、以下のサイトではオーボエとなっていて、編曲はチェンバロだけになっていますので、この演奏ではフルートでということなのだろうと思います。
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714.03.08-1788.12.14)簡易作品表
http://www.interq.or.jp/classic/classic/data/perusal/saku/Bach_CPE.html
少なくとも、説明は以前のエントリで終わっていますので、それほどしません。オーボエをフルートと読み替えてください。
この演奏を聴きますと、カール・フィリップの能力の高さを見せつけられます。この二つの編曲も、実は元の作品と調性が同じです。簡単に言えば、カール・フィリップは幾つかの楽器で重なる調性の、いわば最大公約数を知っていて、その調性で音楽を書いたと言えるかと思います。
それが、カール・フィリップの協奏曲の多くが、別の楽器でも演奏可能なようになっていて、その楽譜が残されているという点です。これはバロック期の様式です。しかし旋律はバロックというよりは、若干古典派的になっています。このあたりに、時代を感じますし、またそれがカール・フィリップの特徴だと言えるでしょう。
カール・フィリップも圧倒的に多いのはチェンバロ協奏曲で、さすが父譲りだと思いますが、あらゆる楽器で演奏できるように作曲しているのも父譲りです。その上で、移調なしというのは父を超えているのではないかと思います。
ただ、その背景として、楽器の発達もあるかとは思います。彼が活躍したのは、バロックから古典派への移行期で、亡くなった年はすでに古典派の時代であり、モーツァルトやハイドンが活躍していた時代なのです。モーツァルト事典などを読みますと彼やヨハン・クリスティアンの名前がどんどん出てくるということを念頭に置くべきかと思います。
日本の主に中学校や高校における音楽教育の中で、実は彼が活躍した、多感様式の時代というのはすっ飛ばされています。バロックの次が古典派となっています。それはそれでざっくりとした時代区分としては間違っていませんが、いきなりバロックという時代が終わって古典派という時代が始まったなんてことはないわけですから、こういった移行期が必ずあるわけです。後期ロマン派から現代音楽へと移行するときに、象徴主義や印象派があったように、です。
カール・フィリップがその時代の橋渡し役となったその功績を、もっと評価すべきだと私は思います。実際、この演奏ではリフレインは弱くなっていますし、低い音は小さくという古典派の原則が演奏面で守られていることで均整美がくっきりと浮かび上がっていますが、様式的にはバロックなのですね。つまり、カール・フィリップという人の作品の魅力と特徴を、余すところなく伝えている録音だと言えるでしょう。
少なくとも、カール・フィリップがいなければ、モーツァルトやベートーヴェンの作品はがらりと変わっていたことだけは、確かです。
さて、明日と明後日は、ブログを「正式に」お休みします。再開は木曜日からの予定です。
聴いている音源
カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ作曲
フルート協奏曲変ロ長調Wq164(元オーボエ協奏曲)
フルート協奏曲ニ短調Wq22
フルート協奏曲変ホ長調Wq165(元オーボエ協奏曲)
高橋真知子(フルート)
ローランド・キーフト指揮
コンセルトへボウ室内管弦楽団
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。