かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:BCJバッハカンタータ全曲演奏シリーズ13

今回のマイ・コレは、毎度おなじみのBCJのバッハカンタータ全曲演奏シリーズの第13集です。1723年の夏に初演されたのが中心となります。

「中心」という言葉になるのは、実は一つだけ時期が外れているものが存在しています。それは、第1曲目の第64番「見よ、どれほどの愛を」です。

第64番は1723年12月27日に初演されました。そう、クリスマス用のカンタータなのです。ただ、このカンタータは一風変わっています。普通、バッハであってもクリスマス用は明るく祝祭感あふれるものが多いのですが、これは第1曲目の冒頭合唱がホ短調と暗めの音楽で始まります。それもそのはず、このカンタータはクリスマスがイエスの「降誕節」であることを鑑み、その意味をかんがえさせる内容なのです。

降誕の意味を問うものですから、お祭り騒ぎをするのではなく、なぜ自分たちは主を敬うのかを考える歌詞となっています。だからこそ、まず冒頭は暗めの曲で幕開けしていますし、実は最終合唱も同じホ短調となっています。こういった点は、ヨーロッパではクリスマスは日本の正月と同じであるとなぜ言われるのかを端的に表しているように思います。あくまでも、日本のクリスマスは日本の正月を壊さぬように祝祭的な部分だけを抜き出したお祭りであるということが、この曲を聴きますとよくわかります。

次の第25番からは1723年の夏に初演されたものになります。第25番「私の身体の健康は失われ」は1723年8月29日に初演されたものです。今回私が取り上げるのは国内盤なので「私の身体の健康は失われ」となっていますが、バッハ事典では「汝の怒りによりてわが肉体には全きところなく」というほうがこの曲の内容を端的にあらわしているように思います。イエスが神の力をもってらい病を癒し清めたという福音書句を例示して、故に救い主を助けとして頼み、これに賛美を捧げないと、どうなりますか?(だから、讃美しましょう)と言う内容です。それ故この曲は本当に暗い曲です。BCJの軽めの演奏であってもその暗さが際立っているのですから、リヒターではいったいどうなるのかという感じですね。8曲からなりますが、意外と演奏時間は短い曲です。

3曲目の第69番a「主を讃えよ、私の魂よ」は1723年8月15日に初演されました。その後1727年に再演され、さらに第69番として1748年にも再演されています。この第69番aは三位一体節後第12日曜日用のカンタータですが、後に改訂された第69番は、ここでも何度か出てきています、市参事会員交代式用となっています。目的は違いますが題名は同一であるのが興味深い点です。変更になったのはソリストを一部の曲でパートを変えたことと、最後のコラールの内容を買えたくらいで、後は全くと言っていいほど一緒です。それはおそらく、曲自体が祝祭的なものであるだけではなく、その内容が社会的弱者に対して常に暖かい神という存在を敬うというものになっているためではないかと思います。この1723年の次に演奏された1727年でも一度改定され、さらに晩年の1748年にもう一度改定されていることから、かなり聴き手に好印象を与えた曲であったことがうかがわれます。途中、ソリストの音型を器楽がなぞっているところなどは、「言葉」が人々の間に広がっていくさまを表わしたものと言われています。

第4曲目の第77番「お前の主である神を愛しなさい」は1723年8月22日に初演されました。神の愛について考察を行い、律法に縛られず、律法の目的である「愛」、つまり神への愛、隣人への愛を説いたものです。それ故なのか、冒頭合唱はハ長調です。こういった時には事典が役に立ちます。いっぽう、BCJの国内盤は必ず制作ノートがあるので、そちらもとても役に立ちます。たとえば、3曲目の第69番aについては、実際にはこのアルバムでは鈴木氏の校訂が入っています。そんな点に注目して聴いても面白いように工夫されています。

最後第5曲目は第50番「今や私たちの神の救いと力と」です。合唱部分のみ1曲が遺されているカンタータで、何曲かあるうちの冒頭あるいは最終合唱であると言われています。初演年月日は推測でしかなく、1723年9月29日であろうと言われています。そこだけカンタータが現在抜けているためですが、それであるという確たる証拠はありません。モーツァルトであれば偽作の疑いも出てきそうな作品ですが、バッハの作品であることは間違いないだろうと言われています。ティンパニとトランペット、そして合唱が織りなす祝祭感あふれる楽曲です。

さて、演奏面ですが、ソリストはバス以外は二人分担制を取っていること、そしてコルネット(トランペットの仲間)とトロンボーンコンチェルト・パラティーノが参加していることが特色です。こういった他とのセッションが出来る点がBCJの強みだと思います。ふたつの団体が一つになってもまったく自然であるということは、BCJのアンサンブル能力の高さを物語っています。プロであればあたりまえと言えばそうですが、プロであるが故、頑固な点もあるものです。それがないのが素晴らしいと思います。ソリストの分担制は、その必要があるの?というくらいそれぞれ自然ですが、それぞれ自然であるために、分担制を採用したのかもしれません。その点は制作ノートには触れられていませんが・・・・・

そのソリスト、このアルバムでは日本人二人が担当しています。野々下由香里はもう常連ですが、緋田芳江は一度だけワーグナー校訂の第九の時にソリストをやっていますが、それ以来ということになります。しかし、こういった時に全く自然で力みのない声がでるのは、ひとりの社会人として参考にすべき点がたくさんあるなと思います。準備が出来ていないと、それは無理ですから。イチローがやっているような不断の努力を、BCJのメンバーはつねに演奏活動の中でやっているということをまざまざと見せつけられます。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第64番「見よ、どれほどの愛を」BWV64
カンタータ第25番「私の身体の健康は失われ」BWV25
カンタータ第69番a「主を讃えよ、私の魂よ」BWV69a
カンタータ第77番「お前の主である神を愛しなさい」BWV77
カンタータ第50番「今や私たちの神の救いと力と」BWV50(断片)
野々下由香里(ソプラノ、64・25)
緋田芳江(ソプラノ、69a・77)
ロビン・ブレイズカウンターテナー、64)
キルステン・ソレク=アヴェラ(69a・77)
ゲルト・テュルクテノール、25)
桜田亮(テノール、69a・77)
ペーター・コーイ(バス)
コンチェルト・パラティーノ(64・25)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(キングレコード KKCC 2302)※BIS CD-1041の国内盤



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