かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:鈴木雅明 バッハオルガン名曲集

今回のマイ・コレは、バッハのオルガン名曲集です。鈴木雅明の演奏になります。

鈴木雅明氏と言えば、バッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者として著名ですが、そもそもはオルガニストなのです。

鈴木雅明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E9%9B%85%E6%98%8E

http://www.bach.co.jp/masaakiprofile_jp.htm

さらには、チェンバロ奏者でもあります。ですので、バロック時代の鍵盤楽器オーソリティと言っていいでしょう。このアルバムでは、そのうちオルガニストとしての側面にスポットを当てています。

全体的に言えるのは、BCJでもそうですが、軽めの演奏です。それでいながら重々しい部分は重く演奏するのはとても荘厳です。特に「トッカータとフーガ」BWV565のコロコロとした軽さには、初めて聴いたときもそうですが未だ驚かされます。

バッハのオルガン曲と言いますと、どうしても重々しい重厚な演奏というものを私たちはどこかで期待をしています。しかし、鈴木氏の演奏にはそれはみじんもありません。あくまでも軽めを心がけることで実現される、しなやかで表現力豊かな演奏です。

以前であれば、実はそういった点が不満で、他に買おうかと思ったくらいです。しかし、彼がBCJで演奏する他のバッハ作品を聴くにしたがって、これもあり、いや、これこそが正解なのでは?と思うようになったのです。それはやはり、私にバロックという時代が地球物理学ではどんな時代であり、それが文明にどんな影響を与え、その結果が芸術にどのような形で現われるのかという点における認識が不足していたからです。

バロックという時代は、その後半に地球物理学でいうマウンダー極少期が入っています。それが芸術に与えた影響を考える時、なんと浅い理解でしかなかったのだろうと思います。鈴木氏はマウンダー極少期について言及はされていませんが、バロックという時代が人にとってとても厳しい時代であったという認識のもと、演奏しているのは確かです。

実際、ブックレットには鈴木氏ですら、バッハのオルガン曲は重々しく演奏するものだと思っていたと回想しています。しかし、本場で出会った演奏者から、軽めの演奏もアリなのだと教えられたとあります。

このアルバムに収録された曲はほとんどがマウンダー極少期以降の作品ですが、だからこそ複雑なものになっているともいえましょう。一つ一つを解説しますととても長くなりますので今回は敢えてそれはやりませんが、バッハが教会オルガニストとして活躍するようになった、特に1723年、つまりライプツィヒに移ってから後の作品がほとんどであることを鑑みますと、多くの人が気候の変動による社会の混乱などで命を失ったという意識がどこかにあるという点を、バッハの作品は頭のどこかにおいておくべきなのであるということを教えてくれているように思います。

リヒターはそれを重厚な音楽で、まるでそれは葬送音楽のように演奏しましたが、鈴木氏はむしろ、プロテスタントとして死者は送るが残った人は日々を生きるのだという意識のほうが強いのではと思います。それはバッハもそうであったとしてもおかしくはありません(史料は残っていませんが)。

今改めて聴きなおしてみますと、心になんと素直に入ってくるのかと、驚きを感じざるを得ません。私自身も親を一人失っていますし、また今年は震災もあり、原発災害もあった年です。そういった経験をして初めてこの演奏の素晴らしさが分かるということは、いかに私はこの演奏を表面的にしかとらえていなかったのかと、反省せざるを得ないのです。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
プレリュードとフーガ ホ短調BWV548
コラール:いと高き所にては、ただ神にのみ栄光あれ BWV662
コラール:いと高き所にては、ただ神にのみ栄光あれ BWV664
コラール:いと高き所にては、ただ神にのみ栄光あれ BWV663
トッカータとフーガ ニ短調BWV565
コラール:いまぞ喜べ、汝キリストのともがらよ BWV734
コラール:いと尊きイエスよ、われらはここに集いて BWV731
フーガ ト短調BWV578
ファンタジア ハ短調BWV562
パッサカリアとフーガ ハ短調BWV582
鈴木雅明(オルガン)



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地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。