かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:マリー=クレール・アランが弾くバッハのオルガン作品全集12

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、マリー=クレール・アランが弾くバッハのオルガン作品全集をシリーズで取り上げていますが、今回はその第12集です。

「名オルガニスト、バッハ」としてカテゴライズされている第12集は、かなり有名作品が集まっています。その筆頭が、トッカータとフーガ ニ短調BWV565です。もう有名すぎる曲ですね。嘉門達夫が「ちらり~、鼻から牛乳~♪」とパロっているのでも有名です。

そんなよく知られた作品を、アランは荘重かつしなやかに弾いています。さすがにこの曲では、亡くした兄がフラッシュバックしているような気すらします。何かにとりつかれているかのよう。けれども、それが決してお仕着せがましくなく、壮大な世界が広がっていくのはさすがです。

そのほかの作品も、圧倒的「音」に意味を持たせています。圧倒的一本やりだと何を表現したいのかがぼやけてしまい、音だけが残りますが、アランの演奏はそこに何かの表現を感じ取ることができます。それが「何か」は、聴き手に任せられていますが、おそらくアランの中では決まっているんでしょう。でも、同じじゃなくてもいい、私と同じじゃなくても、あなたにとって同じような経験をしたのならば共感しあいましょう、そうじゃないのなら、それなりに共感してくれればうれしいかな、って感じです。

そんなアランの思い切りのいい演奏は短調であるのに爽快です。また、そもそもバッハのオルガン曲にも舞踊性があるので、自然と体をゆすっている自分が居ます。おそらく、私自身も大切な人を亡くしたからこそ、共感できる何かをアランの演奏から見出し、共感しているからこそ体がつい動いてしまうのでしょう。

ここには宗教的題材の作品は一つもない(しいて言えばパストラーレBWV590)のに、どこか魂を感じます。それはバッハの作品だからかもしれませんが、たとえそうであったとしても、その魂をアランが味わい、慈しみ、愉悦を感じているからこそ、聴き手の私にとっては楽しいですし、飽きない時間を過ごすことができます。こういった演奏こそ、バッハの、特にBWV565で私が望んでいた演奏だといえるでしょう。リヒターと鈴木雅明のちょうど中間くらいで、実に多くの人に訴求する演奏であるのに個性が光るんです。素晴らしい!

こういう演奏こそ、名演にふさわしいと思います。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
トッカータとフーガ ニ短調BWV565
トッカータとフーガ ヘ長調BWV540
ファンタジーとフーガ ト短調BWV542
パストラーレ ヘ長調BWV590
プレリュードとフーガ イ短調BWV543
トッカータアダージョとフーガ ハ長調BWV564
マリー=クレール・アラン(オルガン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。