かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:マリー=クレール・アランが弾くバッハのオルガン作品全集11

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、アランが弾くバッハのオルガン作品全集をシリーズで取り上げています。今回はその第11集です。

オルガン協奏曲・・・・・これを聴いてどのように想像しますか?ふつうはオルガンが独奏楽器であり、オーケストラが付くものって思いますよね?けれどもこれは、オルガンの独奏曲です。

ではなぜ、「協奏曲」としているのか。それは、原曲が協奏曲であり、バッハによるトランスクリプションだからです。

ja.wikipedia.org

そう、リストがベートーヴェンの協奏曲をピアノ独奏曲などにトランスクリプションしたのと同じなんです。リストはそれをピアノ曲とはせず、ベートーヴェン交響曲としたうえで、後世の人がサール番号を振っています。それと同じなんです。ですのでこの6曲もBWVが振られています。原曲がザクセンヴァイマル公子ヨハン・エルンストとヴィヴァルディの作曲であるにもかかわらず。

ピアノよりも、音程が多いパイプオルガンで、トゥッティも含めて協奏曲を演奏してみたらどうなるだろうという興味だけではなく、むしろ当時オケがなかなか編成しずらいという側面があったことを考えれば、協奏曲をオルガンだけで演奏することにより作品の演奏機会を増やすという視点もあったと考えていいでしょう。

アランはオルガン曲としてアプローチしていますが、バッハのトランスクリプションがうまいせいか、ここはソロだな、ここはトゥッティだなというのがわかるのがまた楽しいですね。多分、アランもその違いを楽しんで弾いているように聴こえます。

面白いのは、ここでも全部を演奏するのではなく、広くヨーロッパという視点で集めた結果だということです。「バッハとヨーロッパ」というカテゴライズになっており、バッハがバロックの集大成として、ヨーロッパの音楽に興味を示したうえで、自身の芸術を昇華させていったそのありようが示されているんですね。

と言っても、アランの演奏スタイルはいつも通り自然体ですし、のびやかで生命にあふれているもの。聴いていて爽快ですし、楽しいです。オルガンもそれまでのオランダから再びフランスにもどり、華麗な演奏を繰り広げます。こういった「頓着しないことに頓着する」というのはいいですね~。何事にもとらわれがないので、アランの楽しさがこちらにも伝わってきます。

バッハによってさらに新しい生命を吹き込まれたこれらの協奏曲を、アランの自在なオルガンが、さらに新しい生命を吹き込んでいるように思います。

 

 

聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
協奏曲イ短調BWV593
協奏曲ニ短調BWV596
協奏曲ハ長調BWV594
協奏曲ト長調BWV592
協奏曲ハ長調BWV595
アリア ヘ長調BWV587
プレリュードとフーガ イ長調BWV536
コラール「バビロン川のほとりに」BWV653b
プレリュードとフーガ ト長調BWV550
トリオ ト短調BWV584
マリー=クレール・アラン(オルガン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。