神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、マリー=クレール・アランが弾くバッハのオルガン作品全集を取り上げていますが、今回はその第13集です。
「教師としてのバッハ」と銘打たれたこの第13集は、バッハが弟子あるいは息子たちにオルガンの弾き方や作曲を教えるための教材としての色合いがある作品として、6つのソナタが取り上げられています。
とはいえ、この作品はそもそも「右手パート、左手パート、足鍵盤パートが、完全に独立した3つの声部となっており、バロック音楽における室内楽合奏曲の一分野であったトリオ・ソナタ、すなわち2つの独奏旋律楽器と通奏低音の3パートの合奏形式で作曲されたものをオルガン1台で演奏するという、野心的な試みがなされている。」作品ですから、トランスクリプションだともいえるわけなんですね。、つまり、いざとなれば2つの独奏楽器群と通奏低音によって演奏もできる作品だ、と言えます。いかにもバロック的です。
それを、ヴィルヘルム・フリーデマンのために作曲しているってわけです。あの屈折した長男です。
この長男のために、バッハはこの優れた6つのソナタを書きましたが、素晴らしいがゆえに、私には悲しく聴こえます。アランもそういった家族の関係を見ているのか、淡々と弾いています。まあ、そもそもが学習用でもあるのでそれほど感情を入れることもない作品だともいえますが・・・・・
けれども、私はそれが逆にアランが曲に込めた想いなのかなって考えるんです。バッハが長男への想いを込めて作曲したこの作品を、様々な心のうちを背景させたような気がします。アランは兄に対して、バッハがフリーデマンがやったようには最後までは貫徹できなかったわけなんですから。いいなあと思いながら弾いているように思うのは私だけなんでしょうか?
ねえフリーデマン、あなたは幸せだったのよ。でもなんで努力しなかったの?とアランが言っているように聴こえてなりません・・・・・端正ながらも、徐々に熱を帯びるその演奏を聴きますと、ね。
聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
6つのソナタ
ソナタ第1番変ホ長調BWV525
ソナタ第2番ハ短調BWV526
ソナタ第3番ニ短調BWV527
ソナタ第4番ホ短調BWV528
ソナタ第5番ハ長調BWV529
ソナタ第6番ト長調BWV630
マリー=クレール・アラン(オルガン)
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