かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:BCJ バッハ カンタータ全曲演奏シリーズ45

今月のお買いもの、2つ目は毎度おなじみのBCJバッハカンタータ全曲演奏シリーズの第45集を取り上げます。

この第45集では第39番、第187番、第129番、そしてヴァイオリン協奏曲の断片と言われるBWV1045が収録されています。特徴としては、BWV1045を除いて1726年夏のカンタータであること、そしてその3つのカンタータがいずれも中間の曲をはさんでシンメトリーになっていることです。

これは間違いなく鈴木氏の編集であると考えています。輸入盤なので解説も英語ですからそのあたりはっきりしませんが、ほぼ間違いないと思います。

このシンメトリーであるということはどういうことかと言いますと、バッハの場合、カンタータを構成する曲数が奇数になる場合、中間の曲を中心として、ちょうど鏡になるように楽曲を配置することを言います。直近のエントリでは、第2集を取り上げた時に、第131番を取り上げた時に言及しています。

「全体の構成はシンメトリーになっていまして、第3曲目の合唱を中心として、第1曲目と第5曲目が合唱、第2曲目と第4曲目がコラール付のアリアもしくはアリオーソとなっています。」

では、本当にそうなのか、見ていきましょう。

まず、第39番「飢えたる者に汝のパンを分かち与えよ」です。1726年6月23日に初演されたこのカンタータは、いかにもキリスト者らしいテーマを扱っています。このタイトル通りです。裕福なものは貧しきものにその富を分け与えよ、というものです。なぜならば、富む者も貧しき者も神の前では平等だからというキリスト教のコアな部分の思想から発しているからです。

そのためか、この曲も奇数曲でシンメトリーになっています。2部構成になっており、全部で7曲あり、中心の曲は第2部の冒頭に来るという、まさしく第2集の第131番と全く同じ構造です。そして、第1曲が合唱、第2曲目がレチタティーヴォ、第3曲目がアリア、第4曲目がアリア、第5曲目がアリア、第6曲目がレチタティーヴォ、第7曲目が合唱のコラールとなっています。ちょうど第4曲で折り曲げれば対称にあるというわけです。

次の第187番「彼らみな汝を待ち望む」ですが、1726年8月4日の初演で、これも奇数曲で2部構成、中心曲は第4曲で第2部冒頭の曲であるという点も第39番と全く一緒です。違うのはテーマだけですが、近いものをテーマとしては取り扱っています。すべての恵みを授ける神に感謝するという内容なので。

7つの曲もそれぞれ、第1曲目が合唱、第2曲目がレチタティーヴォ、第3曲目がアリア、第4曲目がアリア、第5曲目がアリア、第6曲目がレチタティーヴォ、第7曲目が合唱のコラールという、此れもまったく第39番と一緒です。

こういったことによって、その曲の重要性を指し示すということはクラシックではよくあるパターンで、たとえば3拍子などもそのうちの一つになります。三位一体からきているこの拍子は、モーツァルトフリーメーソンの音楽でも使われるものですし、とにかく安定を指し示す一つの重要なキーワードです。

3曲目の第129番「主に賛美あれ」も同じような構造をもちますが、曲数がちょっと少なく5曲となっています。初演も1726年とも27年とも言われていまして、この曲に関しては必ずしも夏とは言えません。一番有力なのは1726年10月31日の宗教改革記念日における演奏なのですが、決定打とはなっていません。

しかし、「シンメトリー」という点では上2つと全く一緒です。第1曲目が合唱によるコラール、第2曲目がアリア、中心となる第3曲目がアリア、第4曲目がアリア、第5曲目が合唱によるコラールと、きれいにシンメトリーとなっています。上二つと違うのはレチタティーヴォがないことと、それによるものか2部構成を取っていないということです。

最後のBWV1045は、CDのクレジットではシンフォニアとなっています。バッハ事典によりますと、もともとは失われたカンタータの導入楽章であったと推測されていまして、であればシンフォニアという記述は別におかしくはないということになります。ただ掲載されているのはヴァイオリン協奏曲の項目であり、ニ長調BWV1045となっていまして、このあたりが事典とCDと違うところです。確かにヴァイオリンソロがありますが、聴きますとトゥッティとソロとのコントラストがないので、私はCDのシンフォニアという表現を支持したいと思います。

こういった編集はさすが輸入盤であると思います。この点からも、BCJの市場が日本ではなく海外であるということが如実に表れています。こういったことは例えば自動車メーカーなどのやっている点で、マーケティングの点からも興味深いものです。

演奏だけでなく、こういった側面もBCJの魅力の一つです。

演奏面では、ソプラノに久しぶりに野々下由香里さんが起用されている点が注目です。彼女の声はとてものびやかで無理がないもので、海外のソプラノと比較しても全く遜色ありません。カウンターテナーロビン・ブレイズやバスのペーター・コーイと並んでもまったく引けを取りません。今やBCJに欠かせないディーヴァとなりました。

器楽のアンサンブルも相変わらず素晴らしいですし、編集面と合わせて、「世界規格」の一枚であると言えるでしょう。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第39番「飢えたる者に汝のパンを分かち与えよ」BWV39
カンタータ第187番「彼らみな汝を待ち望む」BWV187
カンタータ第129番「主に賛美あれ」BWV129
シンフォニア ニ長調BWV1045
野々下由香里(ソプラノ)
ロビン・ブレイズカウンターテナー
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SACD-1801)



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。