かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:BCJ バッハ カンタータ全曲演奏シリーズ9

今回のマイ・コレは、BCJのバッハカンタータ全曲演奏シリーズの第9集です。収録曲は演奏順に第76番、第24番、第167番です。

この3曲はいわばバッハのライプツィヒにおける初仕事とも言えるもので、第8集に完全に引き続くものです。

それをよく表しているのが、第1曲目の第76番「もろもろの天は神の栄光を語り」です。1723年6月6日に初演され、第2部のみが翌年の10月と25年の6月に再演されています。この曲は全部で14曲ありますが、2部構成で、しかもそれぞれが7曲から成っている「対象形式」となっているのです。

実は第75番もそのような構成になっており、この二つはあきらかに関連があるのですね。実際、第76番は第75番が演奏された次の週に初演されています。

この二つは一見しますとシンメトリーには見えないのですが、実はシンメトリーになっています。各々第4曲を転回点とし第1部と第2部各々がシンメトリーになっています。第2部が各々第1曲目がシンフォニアになっている点で第2部は厳密にはシンメトリーではありませんが、第2曲目から第6曲目までは第4曲目を転回点としてシンメトリーとなっています。

こういった点は、古典派とはまた違った形式美を見せてくれます。もちろん、音楽も美しいですし、聖書を取り上げることがどういうことなのかを、私たちに教えてくれます。

さらに言いますと、第76番は第1部と第2部の音楽も統一されています。これがこの音楽の「深さ」を象徴する部分にもなっており、この曲の内容である「天上の晩餐会には、富めるものは来なかったが、貧乏人や不具者は招きにあずかった」という点を際立たせています。それはコラールが、ともにフリギア調になっている点およびともにトランペットが導入に使われていることから、バッハがここにこそ重点を置いていることが分かります。

教会旋法って何?(特にフリジア旋法について)
http://www7.plala.or.jp/machikun/yougo1.htm

次の第24番「まじりけなき心」は1723年6月20日ライプツィヒで初演されました。再演もされたようですが詳しい年月までは不明です。6曲から成りますがこれも実はシンメトリーではないものの重点というものをよく考えて作曲されています。福音書の「寛大な心」がそのコアなのですが、それを引用している合唱を中において、それをレチタティーヴォとアリアがシンメトリーにはさむというかたちを取っています。その意味では部分的なシンメトリー形式と言ってもいいような構成です。

確かに合唱が中にあるというのはバッハのカンタータにしては珍しい構成で、この時はよほどこのコラールを題材にして寛大な心というものの大切さを問いたかっただろうと思います。

最後に第167番「もろびとよ、神の愛を讃えまつれ」は1723年6月24日に初演されました。その前の第24番からは4日しかたっていませんが、それはこの日が聖ヨハネの祝日であったためです(つまり、日曜日ではないわけです)。この祝日は聖ヨハネの生誕を祝う祭日、つまり休日ということになります。だからこそ、礼拝があるわけなのですね。

「バッハ事典」からこの曲の内容を引用しますと、「ヨハネの備える『道』はすなわちキリスト者の『命の道』であり、われらにその道を与えたのは、神の愛と慈しみであることを説く。その神をバッハは歌詞中の『われわれ』とともに讃え、来るべき時における『救い』を待望する」(P.161)ものです。そのせいか、コラールは最終楽章でのみ使われ、後はアリアとレチタティーヴォだけというシンプルな構成で、それ故アンサンブルも質素です。じっくり聞いてもらおうというバッハの狙いが見え隠れします。

演奏は特にすばらしいのがテノールで、第76番の第10曲目のアリアはかなり先鋭的な気持ちを表現していますが、音程がかなり上下します。この手の曲はプロアマ問わず難しいのですが、それを難なくなめらかに、しかしはっきりとかたく歌いきるゲルト・テュルクは素晴らしいです。彼はすっかりBCJでは常連ですが、このあたりから桜田亮ではなくすっかりゲルト・テュルクでほぼ固定になります。一方でバスはいつものペーター・コーイではなく浦野智行が担当していますが、これが全く遜色ないんですね。それと、鈴木美登里さんもここでは肩の力が抜けて素晴らしい歌唱を見せてくれます。

器楽のアンサンブルの統一された素晴らしさは言うまでもありません。すべて「音楽を神に捧げる」ことに全身全霊を傾けています。こういった彼らの姿勢には、いつも反省させられます。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第76番「もろもろの天は神の栄光を語り」BWV76
カンタータ第24番「まじりけなき心」BWV24
カンタータ第167番「もろびとよ、神の愛を讃えまつれ」BWV167
鈴木美登里(ソプラノ)
ロビン・ブレイズカウンターテナー
ゲルト・テュルクテノール
浦野智行(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS CD-931)



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