東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、サー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団によるメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」と交響曲第4番「イタリア」を収録したアルバムをご紹介します。
このアルバムは全集からの分売ではなく、この2曲だけセッション録音されたものです。CDはデッカ。このコンビだとおなじみのレーベルですが、デッカの録音は私自身は信頼しています。借りてきたのにはショルティ指揮シカゴ交響楽団、デッカという組み合わせだったことが一番の理由です。
ショルティがロマン派初期のメンデルスゾーンを、シカゴ交響楽団とどのように料理するのかに興味があったのです。テンポ的にはゆったり目。それでいても激しさも聴こえる演奏は、さすがショルティとシカゴ交響楽団です。私としてはもう少し速めのテンポが好きですが、その私でもこの演奏はいいと思わせる説得力があります。
こういうことを「引き付ける魅力」と言います。こうありたいものですが、簡単なことではありません。ショルティのキャリアの中で積み重ねてきたスコアリーディング、オーケストラとの関係性の作り方の妙味があって実現することです。これが分からずに「こうだからお前聞け!」という人が多いように感じるのは私だけなのでしょうか・・・芸術が軽視されているなあと思います(特に経済界)。それでは、商売においても時として失敗すると言うのに。帝王と言われたカラヤンですら、そこまで押し付けていません。
クラシック音楽を聴く醍醐味というのは、単に感動することだけではなく、その音楽をどのように作り上げているのかもあります。このショルティとシカゴ交響楽団の演奏も、醍醐味の一つだと言えましょう。
演奏順は、第3番、そして第4番ですが、以前も触れていますが、メンデルスゾーンの交響曲は番号順で成立しておらず、このアルバムでは第4番のほうが先です。ですが、番号順に聴いて、不自然な所がないのが、メンデルスゾーンの交響曲の不思議な点であり、また魅力だと言えます。例えば、ドヴォルザークの場合、番号順が成立順なので、それをひっくり返して聴きますと、明らかにそれぞれ成立時が異なることで不思議さを感じたりしますし、むしろそれがまたドヴォルザークの交響曲の魅力ですが、一方でだからこそ演奏され聴かれることが多いのは第6番以降だとも言えます。しかしメンデルスゾーンの交響曲の場合、どんな順番になったとしても不自然さがなくむしろ自然であるため、第2番以降は演奏機会が多く、第1番もアマチュアオーケストラを中心に演奏機会が増えています。ドヴォルザークに比べ交響曲の作品数が少ないという点もあるかもしれませんが、全体の中で演奏機会が多い作品がある割合は断然メンデルスゾーンの交響曲だと言えるでしょう。
ショルティがそれをわかっていたのかどうかはわかりませんが、「演奏機会の多さ」という点は、肌感覚でわかっていたはずです。だからこそあえて番号順でいいと考えたとすれば、納得がいきます。それに、消費者はどうしても番号順で並んでいるとつい手に取ってしまうものです。おや、ショルティとシカゴ交響楽団でメンデルスゾーンの交響曲全集が始まるのかな?と。実は私自身も、もしや?と思って図書館で手に取った次第ですが、結果的には全集ではありませんでした。しかし、この演奏はできれば第2番「讃歌」や第5番「宗教改革」も聴いてみたいと思わせる、充実した内容を持ちます。今度図書館で探してみようと思っています。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」
交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
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