東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ボリス・ベクテレフが弾くスクリャービンのマズルカ集のアルバムを取り上げます。
ボリス・ベクテレフはロシアのピアニストです。グネーシン音楽院卒業後各地で活躍。1996~2011年日本に居住し、神戸女学院大学や武庫川女子大学で教鞭をとりました。最近でも昨年5月に神戸女学院大学でコンサートを開いています。
実は、この元音源はカメラータ・トウキョウ。2010年の録音で、埼玉は三芳町で録音されています。三芳町にそんな素晴らしいホールがあったのか!ということと、このアルバムはスクリャービンのマズルカ全集にもなっていることで借りてきたのでした。そんな出会いで借りてくることもあります。そしてそれが素晴らしい出会いになることもしばしばです。
スクリャービンは管弦楽では神秘主義の影響を受けた作品が有名ですが、マズルカを聴いている限りではそんな雰囲気は全く感じさせず、むしろショパンの香りがにおいます。それもそのはず、スクリャービンはロシアの作曲家ですが、実はタタール人とされています。しかも、母はそもそもピアニスト。
タタールは、いまでいえばクリミアとかウクライナのあたりの人たちを指します。なのでモスクワやサンクトペテルブルク以上に西欧に近い土地なんですね。そのためか、初期は西欧音楽の影響が強い作品が多く、ここに収録されたマズルカもそのうちの一つです。特に収録されている作品3は1888年あたりの作品です。
一方で、タタール人だからこそ神秘主義に嵌ったとも言えるかもしれません。しかし、作品3が成立した時代のスクリャービンは、西欧音楽の強い影響下にあります。ただ興味深いのは、モスクワ音楽院卒だという点です。そのため、作品3などがショパンに近いのは当然だと言えましょう。
だからと言って二番煎じ的な感じがしないのも不思議な魅力です。ベクテレフが弾いているせいなのかはわかりませんが、どこか叙情を感じます。スクリャービンは生粋のロマンティストだったんだなあと感じます。
ショパンリスペクトとも言うべき、スクリャービンのマズルカですが、ベクテレフはとても「歌って」います。マズルカだからこそ、「歌って」いるのかもしれません。演奏から叙情を感じるのはそのせいでしょう。しかも、ホールの残響も素晴らしく、叙情性をさらに増幅させています。調べてみるとロケーションのコピスみよしは響きの良さで定評があるそうですが、駅からちょっと遠いのが難点かも。ただ、バスはそこそこ便数があるので、むしろ私の経験からすれば日野煉瓦ホールよりは行きやすいかもしれません。
是非ともここで行われるコンサートに足を運んでみたいとも思いますねえ。東武東上線ですし、駅もみずほ台、鶴瀬、ふじみ野の3駅使えますので、利便性は高いと思います。聴いていて、ベクテレフも作品自身が持つ魂、そしてホールの響きを存分に味わっているように聴こえるんです。こういうホールで音響に浸るのも、文化的な生活だと思います。こういう機会でぜひとも公共交通機関を使いましょう!って、おっと!動画のほうに行ってしまった・・・もしかすると、YouTubeチャンネル(そっちは別名義です)のほうでこのホールを取り上げるかも?まあ、その機会があれば、ですが。ベクテレフも愛したホールでぜひともできれば同じスクリャービンのマズルカが聴ければ、最高ですね。
聴いている音源
アレクサンドル・スクリャービン作曲
マズルカ 遺作ヘ長調
マズルカ 遺作ロ短調
10のマズルカ作品3
9のマズルカ作品25
2つのマズルカ作品40
ボリス・べクテレフ(ピアノ:スタインウェイ)
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