神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、2回シリーズの、アシュケナージが弾くスクリャービンのピアノ・ソナタ全集、今回は第2集をとりあげます。
実は番号順で収録されているこのアルバム、いよいよ神秘主義の時代へと入っていきますが、かといってアシュケナージは特段肩に力が入っているとかないのが、むしろ私にとっては好印象です。
神秘主義をスクリャービンのすべてと捉える全能主義的なアプローチではなく、あくまでもスクリャービンの内面の発露としてとらえる姿勢がとても好きです。ゆえに、自然体で弾けており、その分、作品が持つ魂が伝わってきます。
アシュケナージの解釈、そして姿勢は、このアルバムでは徹頭徹尾スクリャービンの内面性をどう表現するかで貫かれています。そこが特色で、一面性だけで見ないようにすることにより自然と作品の本質が浮かび上がるかのような演奏になっているのが素敵です。
これはなかなか難しいと思います。一面だけで見るな!という人に限ってたいてい人を一面性で判断しているように思いますが、そういう呪縛にとらわれることなく、あくまでも神秘主義をスクリャービンのある時期の表現哲学としてしかとらえないその自在さがこの演奏の優れている点であり、そして素敵な点です。
その自在さは、作品の本質を浮かび上がらせ、わたしたちに提示し、考えさせ、感じさせます。そのプロとしての表現力!もうあっぱれとしか言いようがありません。
ショパンよりも、そしてベートーヴェンよりも、このスクリャービンの演奏こそ、アシュケナージの名演だと私は思うのです。それはアシュケナージのルーツや背景によって、にじみ出ているものなのかもしれません。そう考えれば余計、この演奏から考えることが山ほどあり、正直一つのエントリでは到底足りないように思えますので、この辺で筆をおきたいと思います。
聴いている音源
アレクサンドル・スクリャービン作曲
ピアノ・ソナタ第6番作品62
ピアノ・ソナタ第7番作品64「白ミサ」
ピアノ・ソナタ第8番作品66
ピアノ・ソナタ第9番作品68「黒ミサ」
ピアノ・ソナタ第10番作品70
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
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