神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで取り上げているスクリャービンのピアノ・ソナタ全集、今回はその第3集を取り上げます。
最終回となるこの第3集には、むしろピアノ・ソナタではなくそれ以外のピアノ作品が収録されており、実際にはスクリャービンのピアノ作品集と表記するほうが正確だと思います。
メインは24の前奏曲。それ以外のカップリングではスクリャービンらしい、神秘主義的和声が聴こえますが、この「24の前奏曲」ではむしろ、印象派あるいは後期ロマン派というような和声のほうが強く、スクリャービンの神秘和声しか好まない人にはちょっと退屈かもしれません。
しかし、私にとってはそのらしからぬ和声が新鮮で、魅力的でもあります。もちろん、「法悦の詩」のような神秘和声も大好きですが、一方でこのようなちょっと古めかしいけれど、洒脱な和声も魅力を感じます。
スクリャービンのピアノ作品がいかに多様性があり、魅力的なのか・・・・・それを演奏にて味わいながら提示するのが、小山実稚恵。適度なアコーギクはいい感じで酔わせてくれますし、彼女自身の「歌」のようにも聴こえます。とにかく歌うピアノは実に美しく、つい音楽に耽溺してしまいます・・・・・
いや、耽溺していいと思います。ウィーン・フィルの後期ロマン派の作品を聴くのが好きな人たちは、端的に言えば音楽に耽溺しているわけですから。ストレスフルな現代人なら、そういう音楽も私は必要だと思います。ただ、それだけでいいとは思わないので、私はほかの作曲家の音楽も聴きますが・・・・・
ベートーヴェンもスクリャービンも、自らのしたい表現をしているという点では、どちらも魂を表現した作曲家だと言えるわけですから、ぜひとも今後も味わい続けたいなと思います。少なくとも、小山女史の演奏により、私の視野はまたがぜん広がったと言えます。
聴いている音源
アレクサンドル・スクリャービン作曲
即興曲ヘ短調作品14-2
24の練習曲作品11
3つの小品作品2
2つの詩曲作品32
2つの詩曲作品44
2つの詩曲作品69より第1曲アレグレット
練習曲嬰ヘ長調作品42-3
練習曲ホ長調作品8-5
練習曲ニ短調作品8-12
詩曲「焔に向かって」作品72
前奏曲作品51-2
小山実稚恵(ピアノ)
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