かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:サティ ピアノ・ソロ作品全集3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでサティのピアノ・ソロ作品全集を取り上げていますが、今回はその第3集を取り上げます。

この第3集では、作曲の課題曲や、晩年の作品、サティの芸術の中心である映画や子供のための作品などが収録されています。

まず収録されているのが、彼が作曲を学んだスコラ・カントルムでの課題曲。パッサカリア、壁掛けとしての前奏曲、そしてフーガ=ワルツ。どれも1906年の作品です。

これがそんな専門学校での課題曲なの?というような習作であるはずなのにすでに前衛音楽なんです、これ。びっくりしてしまいます。サティの才能がこんなところですでに花開いていたとは驚きです。しかしそれはスコラ・カントルムという学校の特色が、サティの才能という形で花開いた瞬間でもありました。

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音楽史を俯瞰し、その知識を得させたうえで、新しいものを生み出すことに躊躇しないその姿勢は本当に素晴らしい!1曲目のパッサカリアも保守的な響きこそありますが、和声は決してバロックではないんです。囚われのないその表現は絶品!さらに2曲目「壁掛けとしての前奏曲」の、どこか不思議な国の雰囲気は、習作じゃないだろと思います。これが学生の作なのか!と思います。いやあ、日本はやっと追いつきましたねえ・・・・・フランスも十分すごい国です。

そんな基礎をもって、4曲目以降の作品が紡ぎだされていったことを考えると、サティの音楽にはどことなく親しみを感じます。最後の「映画」はオスティナート連発!まるで伊福部のようです。ジャポニズムの時代でもありますから、日本の影響もあるのかもしれませんね。そのあたりは明確にはなっていませんが・・・・・

大衆文化を、クラシックの伝統を踏まえたうえで、新しく創造する・・・・・この第3集は52トラックもありますが、そのどれも濃いもの。一つ一つの作品は短く小さくとも、サティの芸術の一端が本当に楽しい!回るメリーゴーランドのようで、万華鏡を見ているような感じがいつまでも聴いていても飽きません。

弾くティボーデが生き生きと弾いていることも影響しているんだろうとは思いますが、とにかく、演奏者が楽しんでいるその様子が、聴いていてまた楽しいんです。味わっている部分も一緒に味わいますし、泣くところ、嘆くところも共に分かち合う・・・・・なかなかできることではありません。まずは対話、ですから。それが対話を通り越し、ともに共感しあう・・・・・なんという幸せ!

サティの音楽のすばらしさを、まざまざと見せつけられました。

 


聴いている音源
エリック・サティ作曲
パッサカリア(1906)
壁掛けとしての前奏曲(1906)
フーガ=ワルツ(1906)
新・冷たい小品集(1907)
悪い手本(1908)
心地よい欲望(1908)
かましき(1909)
詩(1909)
深遠(1909)
くぼんだ夢(1909)
無口な衆人(1909)
大猿(1909)
12のコラール(1906-1909)
犬の前奏曲(1912)
裏話(1912)
コ・クオの少年時代(母親の忠告)(1913)
横着でけちんぼうでろくでなし
(子守歌)
とってもすてきな女の子
短い子供のお話(1913)
絵に描いたような子供らしさ(1913)
はた迷惑な微罪(1913)
夜想曲集
最初のメヌエット
バングリュエルの幼年時代の夢
映画(1924)(ミヨー編曲)
ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。