かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:オーマンディが振るチャイコフスキーの交響曲第5番

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲第5番と、スラヴ行進曲、イタリア奇想曲を収録したアルバムをご紹介します。

オーマンディか、随分と懐かしい指揮者ですなあと思う方も多いのではと思います。私がものごころついてクラシック音楽が好きであることをはっきりと認識し始めた小学生中学年頃のあたりに活躍していた指揮者ですから。この録音も、1970年代前半の録音です。その割には、私はこのようないわゆる巨匠と言われる指揮者の演奏にはあまり聞き馴染んでいません。クラシック音楽に触れるのが主に父のエアチェックが中心で、そうなると自然とNHK交響楽団が主になるからです。家にもレコードで巨匠と言われる指揮者のものはカラヤンワルターだけだったように記憶しています。なので、オーマンディは名前こそ知っていますが、ほとんど聞いたことがないんです。

オーマンディは、そもそもはハンガリー出身で生まれもハンガリーです。しかし22歳の時にアメリカ公演中にアメリカに一人残され、その後アメリカで演奏活動をして指揮者に転向、その後紆余曲折の末フィラデルフィア管弦楽団の指揮者に就任、名盤名演を生み出し続けました。

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そのフィラデルフィア管弦楽団は、アメリカでもっとも古いオーケストラともいわれ、アメリカビッグ5と言われるオーケストラの一翼を担います。様々な世界初やアメリカ初の称号を持つ伝統あるオーケストラですが、最近では経営破綻をして復活した世界初のオーケストラの称号も得ています。

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この録音は、まだフィラデルフィア管弦楽団の経営が安定していた時代の演奏です。ビッグ5とは言われますが、「ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア」と東部の3つの都市に共通するものと言えばオーケストラともいわれるその一翼も担っています。そもそもはその3つがアメリカを代表するオーケストラともいわれた時代もありました(ビッグ5という時にはさらにシカゴ響とクリーヴランド管が入ります。いずれもアメリカを代表するオーケストラです)。

オーマンディがそもそもハンガリーの生まれで学業もハンガリーだったこともあるのか、どこかヨーロッパ的な響きも聞こえるように感じ、ウィーン・フィルのような豊潤さも持ち合わせているのも魅力的です。収録されている第5番の演奏で言えば、金管の美しさと力強さ、弦のアンサンブルなど、決してヨーロッパに引けを取りません。テンポは比較的ゆったりとしていますが、きびきびとした部分もあり、聴いていて爽快感すらあります。チャイコフスキーの作品が持つ抑えきれないにじみ出た哀愁の表現もさすがで、説得力のある演奏は、思わずうなってしまいます。

スラヴ行進曲やイタリア奇想曲も、ゆったりとしたテンポの中に生命力が現出し、まるで一人の人間の感情がそこに表現されているかのようです。スラヴ行進曲はチャイコフスキーの愛国的な作品ですがそこへの共感もありますし、一方イタリア奇想曲では温かい土地に旅した喜びにあふれています。オーマンディの人生が指示ににじみ出ており、その経験にオーケストラの団員が共感したうえでの演奏であるように感じられるのです。いい関係だなあって思います。どうしてもオーケストラって指揮者が支配したがるものなのですが、そこをいかに両者が関係性を持つのかに心を砕いているように感じられるのです。一人投げ出されたオーマンディを救ったアメリカという土地。そしてそのアメリカというコミュニティに誇りを持つ団員たち。二つには共感するだけの「根」がしっかりと張り巡らされているからこそなのかもしれません。

こういう演奏は普遍性を持つなあと思います。では?カラヤンはそうではないのか?といえば私はカラヤンの演奏も同じように普遍性を持つ演奏であると思います。カラヤンは「帝王」と言われてかなりオーケストラと衝突もしたと言われますが、しかし両者の間で信頼関係がなかったのかといえばそんなことはないわけです。おたがいにいろいろあれど、やはり激動の20世紀を生き抜いてきたもの同士で分かりあえるものがあるわけで、その細かいことを知ろうとしないで表面だけで批判するのはどうなんだろうなあと思います。おそらく、オーマンディフィラデルフィア管弦楽団の間にだって、いろいろあったはずです。しかし、両者の関係性は壊れなかったのはなぜなのか?そこに、名演が生まれる理由があるはずです。真の名演とは、単に作曲者の意志だけでなく、指揮者とオーケストラの団員両者の意志も反映されているものだと、私は確信しています。オーマンディフィラデルフィア管弦楽団の両者の共同制作であるこのアルバムを聴くと、さらに強く印象付けられます。フィラデルフィア管弦楽団財政破綻からの復活は、その両者の信関係の歴史があったればこそだったのでは?とも思うのです。

 


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第5番ホ短調作品64スラヴ行進曲 作品31
イタリア奇想曲 作品45
ユージン・オーマンディー指揮
フィラデルフィア管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。