かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:東京クァルテットによるベートーヴェン弦楽四重奏曲集1

東京の図書館から、今回から6回シリーズで、府中市立図書館のライブラリである、東京クァルテットによるベートーヴェン弦楽四重奏曲集を取り上げます。

東京クァルテット。名前は知っているという人もいれば、実際に演奏を聴きに行きました!という読者の方もいらっしゃると思います。ただ、この団体が日本の団体だと勘違いしている人も多いのでは?という気がします。実際私もそうだったのですが、調べてみると東京クァルテットはアメリカの団体なんですよね。ではなぜ「東京」なのか?それは、創立メンバーが全員日本人で、桐朋学園大学の出身だったから、なんです。

ja.wikipedia.org

最終的には創立メンバーはヴィオラの磯村和英さんだけになり、その磯村氏と日本人メンバーだった池田氏が脱退を表明されたため、残るメンバーに日本人がいなくなったことから、解散を決意したようです。そもそも、創立メンバーだった第1ヴァイオリンの原田氏が脱退した時、存続させるために日本人にはこだわらないとしたのですが、おそらく適当な日本人が見当たらなかったのだと思います。メンバーにとって「東京」というのはそれほど重いものだったと考えていいと思います。

さて、まずこの第1集に収録されているのは、ベートーヴェン弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」。弦楽四重奏曲全曲演奏もしている彼らですが、図書館には第6番までがなかったように記憶しています。おそらく、中期から後期の作品だけを集めたのではとおもいます。あれば第6番までも借りて来るのがわたしなので。

とはいえ、第7番以降だけでも、東京クァルテットの優れた芸術に触れることが出来るのはうれしいですね。実際演奏を聴きますと驚きます。まるでアルバン・ベルク四重奏団のよう!強いアインザッツと、生命力のある表現。近代的なラズモフスキー第1番がそこにはあります。おそらくですが、彼らの念頭にはアルバン・ベルク四重奏団の存在があると思います。そこに追い付け追い越せと言った感じで精進を重ねてきた結果なのだろうなと思います。そして単に似せただけではなく、さらに繊細な表情も見えます。リスペクトしつつオリジナリティを追及する姿勢は、聴いていて爽快かつ喜びを感じます。

創立が1969年ですから、アルバン・ベルク四重奏団とほぼ活動時期が被るわけなんです。意識していないはずがないと思うのですよね。こういう複数のアンサンブルが切磋琢磨するのをリアルタイムで見られる世代は幸せだと思います。とはいえ、では現在が幸せではないのかといえばそんなことはありません。いくつもの味わいあるアンサンブルがあり、その素晴らしい芸術を受け取ることが出来る世代はさらに幸せな世代だと言えるでしょう。しかも私たちは、アルバン・ベルクも東京クァルテットも録音でたのしむことができ、かつリサンプリングという技術も持ち合わせています。この演奏もTune Browserを使って192kHz/32bitにアップサンプリングして聴いていますが、実に繊細さが演奏から聴こえてきます。しっかりと境界線を引き、オリジナリティを追及する姿勢がうかがえるのです。こんな幸せな演奏を聴いたのは久しぶりです。

ベートーヴェン弦楽四重奏曲をまさに自分の感情を吐露するためのものだったわけですが、その作品の特徴がクァルテットの創立理念と合致したからこその名演のように感じられます。私の中では、アルバン・ベルクに次ぐ演奏と評価しています。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートヴェン作曲
弦楽四重奏曲第7番ヘ長調作品59-1「ラズモフスキー第1番」
東京クァルテット
 ピーター・ウンジャン(第1ヴァイオリン)
 池田菊衛(第2ヴァイオリン)
 磯村和英(ヴィオラ
 原田禎夫(チェロ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。