かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:スメタナ四重奏団の「ラズモフスキー第1番・第2番」

今回のマイ・コレは、とても久しぶりにベートーヴェン弦楽四重奏曲です。スメタナ四重奏団演奏の第7番「ラズモフスキー第1番」と第8番「ラズモフスキー第2番」です。

この演奏は、ずいぶん前にこのブログを連携させているSNSでも連携前に取り上げていますので、そのSNSの方には重複することになりますことをお許しくださいませ。

このCDを買いましたのは、6年くらい前になるかと思います。それ以前2年、いや3年以上でしょうか、体調を崩しましてほとんどCDが買えないという時期がありました。久しぶりに買ったCDがこれでした。その時は、次週取り上げます第9番と第10番も一緒に購入しています。

実は、このCDを買った時には、別に本命がありました。それこそ、「神奈川県立図書館所蔵CD」で取り上げた、アルバン・ベルク四重奏団の演奏だったのです。しかも、ボックスで。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェン弦楽四重奏曲第7番&第8番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/247

このエントリで取り上げたものが、地元の山野楽器に、ボックスで4000円ほどで売っていたのです。しかし、それは名盤の誉れ高いもの。あっという間に売れていました・・・・・

その代りで購入したのが、この演奏です。なぜかわりに購入したのかといえば、上記エントリでも少し触れていますが、どうしてもベートーヴェンの弦四が聴きたくなっていた、というのがあったからです。

某メルマガで、ベートーヴェン交響曲で実験をし、弦楽四重奏曲で実践したという見解が示され、それが本当なのかどうかを検証したくて、弦楽四重奏曲に興味を持ち始めていたことが、購入に繋がっています。その結果はどうだったのかという点につきましては、上記エントリのほうが詳しいので、ここでは触れません。

このCDにつきましては、ベートーヴェン弦楽四重奏曲を特集した時にも取り上げていますが、その時には全体的にやわらかく温かい演奏とくくりましたが、それは今でも印象として変わらないと申し上げましょう。それがスメタナ四重奏団の魅力なのですから。

実は、私もアルバン・ベルクのほうが演奏としては好きなのですが、一つだけ気に入らない点があります。これはあくまでも旧盤の演奏についてですが、勢いで演奏しているという印象もあるのです。どこか落ち着いていないというか・・・・・ま、それでも予定調和がとれているのが素晴らしいからこそ、名演なんですが。

しかし、スメタナはそういった勢いによる緊張感がない分、逆に落ち着いている部分もあるわけなのです。どっしりとした安心感が、聴く者に心の平安を与えます。これを否定して「だから音楽がわかっていない」とかつておしかりも受けましたが、この2曲は「ハイリゲンシュタットの遺書」の後に作曲されているということは、念頭に置くべきだと思います。

スメタナの演奏はどれもですが、特に「ラズモフスキー」のこの2曲に関しましては、「心の平安」がテーマになっているように、私には思えるのです。聴けば聴く程、抜けるような青空と、ほっとする空気がある・・・・・そんな演奏です。それはさすがに、アルバン・ベルクにはありません。だからこそ、アルバン・ベルクが名盤だといわれ続けている中でも、売れ続けている演奏なのではないかと思います。

このCDは廉価盤です。1050円というバジェット・プライス。しかも国内盤です。それもあるでしょうが、おなじようにアルバン・ベルクの旧盤が廉価盤で売られている一方で常にCD店の店頭に並んでいる事実に、目を向ける必要があります。それを買い求める人は果たして音楽が分かっていない人なのでしょうか?もし、その人たちがアルバン・ベルクも聴いたうえで買い求めているとしたら?

だからこそ、私は未だにどちらの演奏も持ち続けています。どんな作曲家もそうでしょうが、作品にはいくつかの顔があると私は思います。そのどちらの顔にスポットを当てるかによって、演奏は変わってきます。その技術さえ高ければ、私たちは一つの曲に複数の顔があることに気が付きますし、それこそ、クラシックを聴く醍醐味です。

私は、どちらを聴けばいいのですかと訊かれれば、迷わず「あなたは人生で親しい人を亡くした経験はありますか?壁にぶつかった経験はありますか?ないのであればアルバン・ベルクをお奨めしますし、あればどちらも聴いてほしいですが、そうですね、時間が経っているのであればアルバン・ベルクですが、経っていないのであれば、スメタナです」と答えるでしょう。それほど、この2曲には「ハイリゲンシュタット後」のベートーヴェンの「想い」というものが詰まっている、と考えるべきだと私は思うのです。

スメタナ四重奏団のアプローチはあくまでもソフトです。だからと言って、アインザッツが弱いのかと言えば、そんなことはありません。ただ、アルバン・ベルクに劣るだけです。決して弱くありません(逆に言えば、アルバン・ベルクは強すぎて閉口することもたまーにあります)。

以前も述べたと思いますが、私としては、まずスメタナで入って、その後アルバン・ベルクで聴いいたほうがいいと思います。それが一番、この作品を理解するというか、好きになる近道だと思います。アルバン・ベルクはあまりにも勢いで行きすぎで、たまに「それって、ベートーヴェンの一面に光を当てすぎなのではないかい?」と思うことがあるのです。勿論、それが間違っているというわけではないんですが、それが最上であるという論評には、私は現在に於いては異を唱えます。確かに、「高い精神性の現出」という意味において、アルバン・ベルクは素晴らしいのですが、私は、遺書を書いた人間が、いきなりそこまで決然とするのかという疑問を持っているのです。

それは私自身が、死にたいと思ったことが何度もあることから指摘するのです。そこから這い上がる時、いきなり決然とするだろうか、と・・・・・もっと、どろどろに這いつくばってからではないのか、と。ベートーヴェンも決して聖人君主ではありません。とても人間臭い人です。その上聴覚障害者です。もっと泥臭い部分があるはずです。そこに焦点を当てた演奏が、スメタナ四重奏団だといえば、理解しやすいのではないでしょうか。

この演奏もアルバン・ベルクもどちらも受け入れられることは、少なくとも私はとても人間として幸せなことだと、このCDを買う前の状態を思い出しますと、はっきりと言えるかと思います。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第7番ヘ長調作品59-1「ラズモフスキー第1番」
弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2「ラズモフスキー第2番」
スメタナ四重奏団
(DENON COCO-70678)



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