県立図書館の所蔵CDをご紹介するコーナー、今回もアルバン・ベルク四重奏団の演奏を取上げます。
第11番はいきなり激しい音楽で幕を開けますが、それが全く崩壊せずに演奏されているのがすばらしく、アルバン・ベルクのレヴェルの高さをすぐ味わうことができます。
その後もそのレヴェルの高さが味わえる部分がたくさんあります。特に、第3楽章はそれを楽しむことができる部分で、多くの方が名盤とあげるのもうなづけます。
崩壊しないアンサンブル、そして彼らの特徴であるアインザッツの強さ。彼らのいい面がすべて出ているような気がします。
第12番もそれは同じで、共に哀愁漂う音楽が胸に迫ってきます。2曲とも長調であるにも関わらず、哀愁があるこの2曲をアルバン・ベルクはさらりと演奏してやってのけます。それが彼らのすばらしい点と言えましょう。
こういう演奏に触れることができた時というのはとてもしあわせな瞬間ですね。この演奏は明らかにADDなのですが、それを全く意識させない高いレヴェルの演奏です。これなら、DDDの演奏は要らないくらいです。
2曲ともベートーヴェンの弦四の中ではそれほど有名な曲ではないのですが、それを全く手を抜かない彼らの姿勢は私たちにとっても考えさせられる部分がたくさんあるように思えます。私たちは彼らのようにどこまで手を抜かずに生きているのでしょうか・・・・・私などは恥ずかしく思います。
人生が変わる瞬間といえば大げさですが、そんな印象すら与える彼らの演奏はもっと聴かれていいのではと思います。ただ、今の演奏家たちは大変ですね。この演奏を乗り越えていかなくてはいけないのですから・・・・・心中、お察し申し上げます。偉大な大先輩がいればいるほど、その呪縛から逃れることは容易ではないからです。
ですから、私はこの演奏以外はだめという姿勢をとりたくはありません。もっと別なアプローチをかけて必死に演奏しているカルテットもたくさんあります。そんな演奏も是非聴いていただきたいと思います。それが実は、アルバン・ベルクの演奏の本当のすばらしさに気づく近道なのです。そういう意味では、私はこのアルバン・ベルクの演奏を借りて、買うのはスメタナにして本当に良かったと思います。決して、スメタナの分は損していません。アルバン・ベルクのすばらしさを再認識するようになりましたから。
ですのでできれば、アルバン・ベルクを聴くのなら、もう一つ別なカルテットの演奏も聴いてみることをお勧めします。なかなか難しいでしょうが・・・・・特に、金銭面で。ただ、使ったお金の分、必ず得るものがあると断言しましょう。
私もできれば、さらに彼らの演奏の新盤が欲しいと思っています。ただ、それはさすがに金銭面で大変なので、今すぐというわけにはいきませんが・・・・・でも、いつかはそろえたいですね。聴き比べてみるのも面白いと思います。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第11番ヘ長調作品94「セリオーソ」
弦楽四重奏曲第12番ホ長調作品127
アルバン・ベルク四重奏団
(東芝EMI TOCE-6000)