県立図書館所蔵CDをご紹介するコーナー、今回はアルバン・ベルク四重奏団のベートーヴェン弦四第13番です。
これは以前にもベートーヴェンの弦四を取上げたときに散々演奏については述べておりますが、今聴きなおしてみてもすばらしいとしか言いようがありません。特に圧巻なのが、大フーガです。
第九の後の大作とも言うべき、第13番。その最終楽章として本来作曲された大フーガを最終楽章として聴かせる彼らの演奏は、この曲が本来の役割を果たしたときにどうなるのかを証明してくれています。
ふたたびの文章になりますが、正直、この演奏を手に取ったときには借りていいものかどうか悩みました。間に大フーガが入っていたからです。しかし、それは聴いたときには杞憂に終わりました。むしろ、彼らがなぜ間に大フーガを入れたのかが明確だったからです。
本来、大フーガは第13番の最終楽章ですよね?と言っているわけです。ですから、その通りに演奏してみました、というわけです。それは後にスメタナ四重奏団もそう演奏しています。
正直言いまして、アルバン・ベルクの手にかかれば大フーガと現最終楽章ともにすばらしい作品なのです。それでも、私はこのCD以降第13番は最終楽章を大フーガで聴くようになりました。それが本来のオリジナルですから。
それほどインパクトのある演奏でした。実は、私はmusiker氏のメルマガで既に第13番のすばらしさは知識としては知っていましたが、彼も大フーガを最終楽章としては取上げていません。べつに述べられています。それは現時点での正式な最終楽章が現最終楽章であるからでしょう。
私もそれには異存ありませんが、それでも大フーガを最終楽章として聴いてみますと第13番が語るものが違って聴こえてくるから不思議です。
アルバン・ベルクだからこそ、このフーガがとても際立っているという点はあるでしょう。フーガの美しさはやはりその構造がしっかりとなされて初めてわかるものです。彼らの実力を物語るにふさわしい作品と言えるかと思います。実際、他のカルテットとの違いは大フーガにこそあると言って過言ではありません。
フーガは、アンサンブルの妙が織り成す芸術です。彼らにふさわしいステージだと、私は思うのです。もしかすると、だからこそ自信を持って大フーガを最終楽章として収録したのかもしれないなと、私は思うのです。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130
アルバン・ベルク四重奏団
(東芝EMI TOCE-6001)