かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

友人提供音源:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」弦楽五重奏版

今回の「友人提供音源」は珍しい演奏をご紹介します。第九といいますと、オーケストラの編成も大きいのが普通ですが、今日取上げますのは何と弦楽五重奏で第九をやってしまうというものです。

合唱も12人しかおらず、非常にコンパクトです。

私は「100人の第九」は聴いたことがありますが、それ以下の人数はこれともう一つ(それはまたいつかご紹介します)しか聴いたことがありません。

物足りないのではないかとお思いかもしれませんが、そんなことはありません。とてもすばらしいのです。

もともと、私はいずれご紹介しますがピアノと合唱だけという演奏も聴いているので、むしろこの弦楽五重奏のほうがオケの感覚に近くて、聴きやすかったです。

弦楽五重奏団の演奏家が編曲したものなので、例えばベートーヴェンピアノ三重奏曲のうちの交響曲第4番の編曲や、あるいは弦楽四重奏曲ヘ長調Hess34(ピアノソナタ第9番の編曲)などといったベートーヴェン自身による編曲ではないのですが、それでも各パートがよく聴こえてきます。

それに耳を傾けてみますと、第九という曲がいかに生き生きとした曲であるのかが今一度再確認することができます。

この演奏はFM音源で、2001年に東京で行われたライヴなのですが、べつにCDが出ているようです。随分前にアマゾンで調べて確認してありますが、今でもまだ出回っているのかは不明です。私も探しているのですが今のところまだこの第九とそのカップリング以外は弦楽ヴァージョンでは聴いていません。

私はこの演奏が弦楽五重奏であるという点に注目しています。実はこのアンサンブルのシリーズは、第1番から第8番までは弦楽四重奏なのです。ところが、唯一第九だけ弦楽五重奏なのです。それは、ベートーヴェンが実はヴィオラが得意であったという点にあります。第九では第4楽章でヴィオラが2パートに分かれているんですね。

ですので、この演奏ではヴィオラを2つにしてあるのです。そのため、弦楽五重奏なのです。

第1楽章から第3楽章まではもともと第九は室内楽だったのではないかと思うくらい、弦楽五重奏で違和感がありません。特に第3楽章がすばらしく、オケですと寝てしまいそうなこの楽章も弦楽五重奏ではそんなことがなく、むしろ生き生きとしていて聴き手の目が覚める思いです。

第4楽章も五重奏は申し分ありません。しかし残念なのは合唱で、ちょっと古楽的な発声になってしまっていて、一見するとしたから声が当たっていまいかと勘違いしてしまうくらいです。これは通常の発声でも良かったと思います。実はもう一つのピアノだけというのがBCJなのですが、彼らはそこまで古楽的発声にこだわっていないのです。このあたり、もしかすると合唱団が楽器とアンサンブルをあわすことに慣れていないのかなと思いました。合唱ではピアノ以外の楽器とあわすときにまれにそういうことがあります。

それ以外は本当にすばらしい演奏で、いい弦楽アンサンブルがあれば、もしかすると貧乏なアマチュア合唱団でも第九を定期演奏会に載せることは意外と簡単かもしれないなとも思ってしまいます。実際は第九をやるとなると巨大な労力とエネルギーを使うものですが・・・・・

プロ並みのアンサンブルを選ぶか、それともアマチュアオーケストラを選ぶかは金銭的に判断が難しいところではありますが、私がもし合唱団員であれば、どちらもトライしてみたいなあと思います。私はプロとアマチュアどちらのオーケストラとも第九は経験がありますが、歌いやすさのプロ、一体感のアマチュアという利点があるとだけ述べておくにとどめたいと思います。

弦楽アンサンブルもなれますととても歌いやすいのです。音が一つ一つ聴き取りやすいので、出だしなどがうまくいく場合が多いのです。いまいち物足りないかもしれませんが、アインザッツがびし!と決まってアンサンブルが美しく奏でられたとき、その光悦に浸ることでしょう。

モーツァルトの時代には、こういった手法は良く用いられていたものです。こういう演奏ももっと増えてもいいなと思います。それは、大作をもっと多くの人に聞いて欲しいという作曲者の願いがこめられていることが多いので・・・・・

ベートーヴェンも、もしかするとそう願っているかもしれません。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
「エグモント」序曲作品84弦楽四重奏
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」弦楽五重奏版
ルドミラ・ヴェルネロヴァー(ソプラノ)
レンカ・シュミードヴァー(アルト)
トマーシュ・チェルニーテノール
マルチン・マトゥシェク(バス)
ムジカ・ディビーナ・プラハ
エンシェント・コンソート・プラハ
2001年12月15日、東京、王子ホール