かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番・第16番

その月に私が買ってきたCDを紹介するこのコーナー、今日はベートーヴェンの弦四を取上げます。スメタナ四重奏団の演奏です。

やはり、スメタナは温かいですね〜。アルバン・ベルクですともっと精神的なのに、スメタナは人間ベートーヴェンを聴かせてくれます。

でも、演奏としては断然アルバン・ベルクです。それは紛れもありません。特に、第15番の第5楽章でそれを感じます。音の透明さと、厳しい精神性。そしてそれを際立たせるアンサンブルのすばらしさは、断然アルバン・ベルクです。

しかしながら、ベートーヴェンが持つもうひとつの人間性、「温かさ」をスメタナの演奏からは感じるのです。

今回、私はベートーヴェンの弦四を聴いて初めて泣きました。男はめったに涙を流すものではありませんが、15番の第3楽章は涙なしには聴けませんでした。これも、演奏自体はアルバン・ベルクの方が断然上。でも、アルバン・ベルクでは涙まで流せないのです。感動の波は押し寄せてきますが・・・・・

それが、今回不思議でした。第九で涙を流したことは何度かあります。しかし、ベートーヴェン室内楽で涙を流したのは、今回が初めてでした。

こういうアプローチもあるんだ・・・・・と。

ベートーヴェンといいますと、どうしても難しい顔を思い浮かべる人も多い中で、スメタナはそれを見事にすばらしく裏切ってくれました。特に、第16番はベートーヴェン自身がかなり茶目っ気たっぷりに作曲しています。第4楽章がそれにあたりますが、この演奏はそれがよくでています。

しかし、音楽的には非常にまじめに作られているので、アルバン・ベルクの厳しいアプローチも決して間違っていません。私はこの時期のベートーヴェンは一言で言えないくらいいろんなものを抱えているので、音楽にもいろんな面があるはずだと思っています。ですから、どちらの演奏もすばらしく、心に響いてきます。

感動のアルバン・ベルクか、心の琴線に触れるスメタナか・・・・・どちらを選ぶかは、皆様次第です。どちらも私はお勧めです。バランスという面ではアルバン・ベルクなら間違いありませんが、しかしながらそれが皆さんの嗜好に合うかどうかはわかりませんから。

何度聴いてもベートーヴェンの弦四はすばらしいですね。私としては、16番よりは15番のほうがすきですが、ベートーヴェンが友人との約束を果たしたといわれる16番も、その人間性が現れていて、素敵ですね。その人間くささがいいですし、それを前面に押し出しているのがスメタナかと思います。だからといって、アルバン・ベルクがだめというつもりは毛頭ありません。

その当時の精神性からアプローチをかけたのが、アルバン・ベルクだといえるからです。どちらも最高の形で成立させるのは、並大抵ではないでしょう・・・・・・アルバン・ベルクからはそれの方向性を感じますが。だからこそ彼らの演奏は燦然と輝くのであり、スメタナはそれを狙ったわけではありません。もっと人間的なものを追及したのがスメタナです。その結果として、私を泣かしせしめた。そう思っています。

スメタナ四重奏団の功績は、人間ベートーヴェンへの徹底的なアプローチであると、私は思います。

さて、これで初期以外は全てそろいました。後は、6番までの初期作品ですね〜。また、アルバン・ベルクと聴き比べるのが楽しみです。

聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第15番・第16番
スメタナ四重奏団
DENON COCO-70683)