今回も、神奈川県立図書館の所蔵CDから、アルバン・ベルク四重奏団のベートーヴェン弦四第3番と第4番を取上げます。
この全集を全て借りることを決断したのはいいのですが、このシリーズはやはり人気でして、初めて見たとき以外は全部が棚にそろっているのを見たことがありません。やはり、名盤だけあるなという気がします。
そのときが私にとって運命であったと感じています。実際、この演奏もWAVファイルでとってありますが、そのデータを見ますと第1番と第2番の約1ヵ月後に借りています。
つまり、それだけ待たされた、ということになります。
やはり、このシリーズが全て並んでいるのを見てしまったら、興奮を抑えることなどできはしません。ベートーヴェンの室内楽の中でも最高峰と言われる演奏です。我慢するほうが難しいでしょう。それは、何も私に限った話しではない、ということだとおもいます。
以前、スメタナ四重奏団のレビューでも書きましたが、6番まではスメタナとそう演奏が変わるものではありません。それでも、やはりアルバン・ベルクらしい部分はたくさんあって、アインザッツの強さと高いレヴェルのアンサンブルはすばらしいです。それがこの2曲の高い精神性を十二分に引き出しています。しかし、それと同時に本来ベートーヴェンの弦四が持つ「温かみ」もきちんと表現しています。
それが何度も聴いているうちにじんわりと心にしみてくるのです。ただ、普通はそれで内省的だけで終わってしまうものなのですが、アルバン・ベルクの演奏はそれで終わりません。もっとさわやかさもあります。青年ベートーヴェンの心のうちまで私たちに伝えているかのようです。それを聴くことができるのが、この演奏のすばらしさです。
つまりは、メリハリが利いている、ということなのです。これは音楽を聴く上で非常に重要な点なのではないかと思います。
音楽が大編成で所要時間が長くなればなるほど、音楽は冗長になりやすくなります。それを作曲という構成の上でどう工夫するか、あるいはどこまでしっかりと演奏し切れるのかが非常に重要になってきます。この演奏は、少なくともその演奏面でしっかりとなされているといえるかとおもいます。勿論、構成面でもすでにしっかりとしたソナタ形式を持ち、交響曲に引けを取りません。
料理で言えば、素材の良さを十二分に引き出したシェフのすばらしさ、ということになりましょう。
今でも、このシリーズは全集でも売られていますしまた分売もされ、不動の人気を誇っているといって差し支えないでしょう。だからこそ、恐らく私はスメタナから入ることになったのでしょうから・・・・・
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第3番ニ長調作品18-3
弦楽四重奏曲第4番ハ短調作品18-4
アルバン・ベルク四重奏団
(元CD:EMI TOCE-5996)