今回の図書館所蔵CDは、アルバン・ベルク四重奏団のベートーヴェン弦四第9番と第10番です。
今週取上げているCDは既にスメタナ四重奏団で持っていたものばかりですが、しかしこれを図書館で見つけてしまったからこそ、私の図書館通いが始まったのです。
特に、このCDはアルバン・ベルク四重奏団の演奏レヴェルの高さを証明するものでもあります。それは、第9番の第1楽章冒頭で見られます。高音部での美しい音色。これがなかなかうまく出せるものではありません。実際、スメタナの演奏もすばらしいのですがやはりこの部分で差が出ます。
合唱で言えば「下から当たっている」という表現になります。無理して音を出しているという感じになりがちなのですが、アルバン・ベルクの演奏はそれがきちんと「上から出せている」という状態なのです。
プロとはいえ、これがきちんとやれるのはすばらしいと思います。こういうところをきちんとやれるのかどうかこそ、プロである証拠なのですから。
やはり、このシリーズは名盤といわざるを得ないと思います。私もこの部分を聴いたとき、正直唸りました。そして、さすが!と驚嘆するしかありませんでした。
いや、プロなら当たり前だろうと思う方、それならスメタナの演奏を聴いてみてくださいませ。私が述べていることがよくわかるでしょう。確かに美しいです。ただ、無理している点は否めません。それが、アルバン・ベルクはさらりとやってのける・・・・・・
これぞプロ、これぞ職人です。こんなものを借りて済ます自分自身は何と愚かだろうか・・・・・・
ですので、私はブログでそのすばらしさを述べよう、と決めたのです。それが借りて済ませている人間の使命ではないか、と。
勿論、お金があったら買いたいのです。もともと、私はアルバン・ベルクで買う予定でした。それがタイミングが合わず、結局一枚1050円であるスメタナの演奏になりました。でも、私はそのとき初めて「二つそろえてもいいかな」と思ったのです。それだけ、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は私の人生において重要な音楽にいまやなりつつあります。
スメタナはそのきっかけに過ぎません。恐らく、このアルバン・ベルクの演奏に出会うための通過点だったのではないか、とさえ思います。
アルバン・ベルクの演奏はとにかく颯爽としています。その上熱いものさえ伝わってきます。室内楽でそのような演奏に出会ったことがありませんでした。スメタナとアルバン・ベルクですっかり私のベートーヴェン像は変化してゆきました。
musiker氏のいう「素顔のベートーヴェンがここにある」という意味を、ここに来て理解し始めています。アルバン・ベルクの演奏はそれを助けてくれるように思います。勿論、それはスメタナもなんですけどね^^;
それでも、交響曲ではなかなか見ることのできない、茶目っ気や颯爽とした部分が知りたければ、弦四ですし、その演奏を聴きたければ、断然アルバン・ベルクだと思います。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第9番ハ長調作品59-3「ラズモフスキー第3番」
弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」
アルバン・ベルク四重奏団
(元CD:EMI TOCE-5999)