今日は県立図書館所蔵のCDから、アルバン・ベルクのベートーヴェン弦四第14番を取上げます。
この曲は以前にも取上げましたが、楽章の切れ目があいまいです。一応、私が持っている音源は7楽章ですが、アルバン・ベルクはそれを単一楽章のように演奏しています。
でも、それがとても自然で、38分ほどが本当に短く感じます。まるで38分の曲をBGMで聴いている、そんな感じです。
この音源ではアルバン・ベルクらしからぬやさしいタッチが全曲で貫かれています。それでもアインザッツはしっかりとしていて、適度な緊張感とのんびりとした気分とが同居しています。
この音源はリッピングするときに苦労した曲です。それこそ、アルバン・ベルクが単一楽章のように演奏しているので、リッピングミスも多かった曲です。つなげるべき楽章はつなげ、分けるべき楽章は分ける。そのジャッジがとても難しかった演奏です。
最終的には、つなげたのは第6楽章と第7楽章だけで、そのほかは独立させました。つまり、細部をよく聴いてみますと、アルバン・ベルクはきちんと音楽を終止するべき部分では終止しているということでもあるのです。
これはリッピングしてみて初めて気づいた点です。改めて、アルバン・ベルクの演奏レヴェルと精神性の高さを知った次第です。
それは、もしかするとこのCDを友人の勧めどおり「購入」していたら気がつかなかったのではないかと思います。借りて、リッピングしなければならなくて初めて気がつくことができたのではないかという気がします。
購入してもわかるかもしれません。ただ、この曲はとても平明で、特に第5楽章はゆったりとしているので、曲全体がのんびりとした印象を受けます。ですから購入してただ聴くだけではもしかするとメリハリの部分を聞き逃していたかもしれないのです。
この演奏のすばらしさはなんといっても、ゆったりとした部分に潜むメリハリだと思うのです。だからこそ、全体的にゆったりとした印象なのに聞き飽きません。
改めて、アルバン・ベルクのすばらしさを感じる一枚です。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131
アルバン・ベルク四重奏団
(東芝EMI TOCE-6002)