東京の図書館から、今回から3回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団によるチャイコフスキーの交響曲集を取り上げます。
エフゲニー・ムラヴィンスキーと言えば伝説的な指揮者であり、我が国でも熱狂的なファンがいまだに存在します。ロシアのウクライナ侵攻後、ネット上ではすっかりムラヴィンスキーを賛美する言動は見かけなくなりましたが、とはいえ、情熱的な演奏をオーケストラに要求する指揮者です。そのオーケストラが、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団でした。
このコンビで様々な伝説的な録音をし、特に「メロディア」レーベルは伝説的です。ここで取り上げる録音は、1960年9月と11月に、ウィーンやロンドンで収録されたもので、西側のレーベルであるドイツ・グラモフォンです。収録ホール名は図書館では記載がありませんでしたが、今回取り上げる第4番に関してはロンドンのウェンブリー・タウンホールと、HMVのサイトで記載がありました。第5番と第6番は、ウィーンのムジークフェラインです(どうやら後期交響曲集でまとまっていたみたいですね)。
今回の第4番は、チャイコフスキーの交響曲の中でも、「運命主題」で有名な作品ですが、やはり非常に情熱的。セッション録音ですからいろいろ録りなおしはしていると思いますが、それにしても熱のこもった演奏です。さすがムラヴィンスキーとレニングラード・フィルという印象です。その分、やはりロシアのウクライナ侵攻はもったいないと思います。こんなに素晴らしい演奏が埋もれていくわけなので・・・・・戦争の熱狂とは、かくも恐ろしいものだと、身近に感じることがあるとは、戦後生まれの私にとって夢にも思わぬことでした。そりゃあ、ウクライナの人々のことを考えたら、これは埋もれて行ってしまうよなあと思います。ですが、それでいいんでしょうか?
勿論、ロシアが勝てばそれでいいのだと開き直ることはできるでしょうし、実際P様はそう居直っておられます。ですが、大好きな作曲家の作品、そして祖国の演奏家の録音が埋もれて行ってしまっていいのかとは考えないんだろうかとは思います。どこか戦前日本の優れた芸術家を使い倒したうえですり減らしたのと同じと見えるのは私だけなのでしょうか・・・・・
全部西側が悪いんだ!と他者のせいにしてしまうのは簡単です。ただ、そんな人を私はいやというほど、特に国家主義者で見てきました。これは洋の東西を問わず、国家主義の方には多い傾向だと思っています。それで、この演奏に携わった、ムラヴィンスキーやレニングラード・フィルの面々が、草葉の陰で泣いてはいないだろうかって思うのです。
社会主義がとか言われますが、社会主義であろうが資本主義であろうが、国家主義者が権力を握り、暴走すれば悲劇が起こることは、どんな国であっても同じです。この演奏を聴きますと、とても生き生きしており、自然な演奏であることに驚かされます。それは、旧ソ連において抑圧があり、その抑圧から逃れた結果だったのではと思うと、さらに強く考えるところです。
確かにこの演奏は旧ソ連の指揮者とオーケストラで、受け継いだのは現在のロシアですが、しかし普遍性を持って現代に語り掛ける演奏だと、私は感じます・・・・・
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第4番ヘ短調作品36
エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
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