東京の図書館から、今回から4回シリーズで、府中市立図書館のライブラリである、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲全集を取り上げます。
この時期にチャイコフスキーを取り上げるのはなかなか難しいかなとも思いましたが、あえて取り上げることとしました。プーチンは本当にチャイコフスキーの芸術をわかっているのかと疑問に思ったからです。
チャイコフスキーの一部の作品が、演奏するのは妥当ではないとされたことから不満を漏らしたとされていますが、それはチャイコフスキーの作品の該当作(例えば、「1812年」)がロシア・ナショナリズムを想起させるからであり、チャイコフスキーの交響曲の多くはいまだ演奏され続けられています。それはナショナリズムとは一線を画すものであるからです。
もちろん、ロシアン・ロマンティシズムはあるだろうと思いますが、ナショナリズムという側面は少ない、あるいはないと言っていい作品ばかりです。むしろナショナリズムというよりはパトリオティズムというほうが正確なのではないかという気さえします。
今回の第1集で収録されている二つの交響曲、第1番「冬の日の幻想」と第2番「小ロシア」はロシア・パトリオティズムも見える作品だと言っていいでしょう。ですがむしろロシアンロマンティシズムのほうが前面に出ている作品だと言えるのではないでしょうか。
そういう二つの作品を、ロリン・マゼールはウィーン・フィルを朗々と鳴らし、ロマンティシズムたっぷりに演奏させています。そのうえで筋肉質な部分もあり、実に誠実な演奏だと言えるでしょう。決して敵視せずに楽譜と向き合い、行間を掬い取るかのようなタクトは、実に魅力的です。
ロシアの、特にプーチンの取り巻きの方々は、こういう演奏をしたいと思っている西側の人たちがいることを、もう少し想像力を働かせてほしいものだと思います。
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第1番ト短調作品13「冬の日の幻想」
交響曲第2番ハ短調作品17「小ロシア」
ロリン・マーゼル指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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