かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:ブレンデルとラトルとウィーン・フィルによるベートーヴェンピアノ協奏曲全集3

東京の図書館から、3回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、ブレンデルのピアノ、ラトル指揮ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集、今回は第3集を取り上げます。収録されている曲は第5番「皇帝」。

この全集は珍しく最後に合唱幻想曲が収録されていない全集なんです。最近では珍しいなあと思い借りてきたというのもあります。まあ、予算としてはこのほうが低額で作れるでしょうが・・・・・とはいえ、指揮はサイモン・ラトルですし、ピアニストはアルフレッド・ブレンデル、そしてオーケストラはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、ビッグネームが並んでいますから、その分でかなり金を使っていると考えるほうが適切でしょう。合唱団はウィーン楽友協会合唱団でもいいですしウィーン国立歌劇場合唱団でもいいわけですが、ソリストと指揮者、そしてオーケストラが超一流となれば、それだけギャラは高いですからね、下世話なことを言えば。つまり、そこでギャラを使い切ってしまった、と考えるのが自然でしょう。

「皇帝」では今までとはちょっと異なり、比較的どっしりとしたテンポで演奏されているんですが、そのどっしりとしたテンポであるにもかかわらず、むしろ生きの良さを感じる演奏になっているのが不思議です。生命力に満ち、溌剌とさえしているんです。そのうえで堂々ともしているんです。いやあ、さすがラトルですし、ウィーン・フィルですし、ブレンデルだなあという気がします。

細かいアーキテュレーションが、単に力だけで押し切る感じを持たせず、しっかりと「歌っている」のも魅力的。私としてはそのうえでさらにもう少しだけテンポアップしているのが好きですが、しかし思わずうなってしまいます。これが超一流ということなのだと感じます。ウィーン・フィルだけ聴いてしまうとそれが当たり前になってしまいますが、実はものすごく素晴らしい演奏で、他のオーケストラではなかなか実現できないんです。

なのでウィーン・フィルで慣れてしまうと他のオーケストラを卑下しかねないんですが、その意味では私はウィーン・フィルで最初聴かなかったことは間違っていなかったなあと思います。他のオーケストラの魅力をしっかりと受け止めつつ、ウィーン・フィルがいかに素晴らしい突出したオーケストラなのかが理解できることで、他のオーケストラの演奏も受け入れることができるからです。これは私の宝だなあと思っています。

その意味では、「どのオーケストラがいいの?」と言われれば「どんなオーケストラでもいい」としか答えようがありません。N響でもいいですし地域のアマチュアオーケストラでもいいと思います。今や市民オーケストラも力をつけてきていますし、東京のアマチュアオーケストラにありがちな地域密着ではないけれど市民が作り上げているオーケストラは本当にレベル高いですし。その素晴らしさに触れたうえでウィーン・フィルを聴きますと、真のすごさを他のオーケストラを卑下することなく理解できるからです。ウィーン・フィルオーストリアの音楽の裾野があって、超一流の地位があるのですから。サッカーや野球と何ら変わりはありません。サッカーを始める子供が、ならばいきなりプロに入れるわけがないのと同じです。まず地域の少年サッカーチームに入るのと同じです。たとえば、三苫が鷺沼FCから世界へと羽ばたいたように。

そのうえで、少年たちは試合をしながらプロの試合を見ていろんなことを学んでいくわけで、それはクラシック音楽でも一緒です。地域のアマチュアオーケストラを聴いて、そのうえでCDなどでプロの演奏に触れていく、あるいは自分も何か楽器をやってみてプロの演奏も聴いてみる。それが本当に豊かな社会だと私は考えます。ウィーン・フィルに対して日本のオーケストラがもしまだまだと思うなら、そのような地道な活動ができる社会を作り上げることが近道ではないでしょうか。ウィーン・フィルの演奏は私たちに強烈なメッセージを常に発信しているのですが、受け手の私たちがしっかりと受け止めないと、その「ギフト」を有効に使うことはできません。ウィーン・フィルだけがオーケストラなんだと視野教唆に陥らないこと。これが真のウィーン・フィルのメッセージだと私は信じて疑いません。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
サー・サイモン・ラトル指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。