かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:ブレンデルとラトルとウィーン・フィルによるベートーヴェンピアノ協奏曲全集2

東京の図書館から、3回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、ブレンデルとラトルとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集、今回は第2集を取り上げます。第2番と第3番がカップリングされています。

番号順だと組み合わさることのないこの2曲ですが、通して聴きますと、第2番と第3番の間でかなり内面性で変化を感じることができます。第2番は変ロ長調、第3番はハ短調長調短調という違いもありますが、やはり最初期の作品である第2番と、中期の入り口である第3番とでは曲想ががらりと変わります。

第2番はそもそも2つ目のピアノ協奏曲ではなく第1番より前に成立していますのでベートーヴェンの最初のピアノ協奏曲と言ってもいいわけで、第3番とではかなり違っていても何らおかしくないわけですが、本当に並べてみるとその違いに改めて驚かされます。

ですが、どちらともまだ古典的な様式の中にはいるわけで、モーツァルト的な様相を持つ第1番よりはさらに内面性を深掘りしている第3番とコントラストになっているということでしかありません。しかしどちらを聴いてもそ明快な作品は聴いていて喜びを感じるものです。溌剌とした若きベートーヴェンの発露のような第2番。様々なな暗雲が立ち込めるかのような第3番。どちらもベートーヴェンの表現であることには間違いありません。

さらに、第3番ではオーケストラの序奏の後からピアノ独奏が入るという古典様式を保っていることを鑑みてなのか、ブレンデルは独奏が入る前に一呼吸おいてから演奏に入っています。レーゼルがほぼアタッカで入ったのとは対照的ですが、しかしどちらが優れているとは判断しにくい演奏になっています。カデンツァもブレンデルレーゼルともに同じものを使っていますし。むしろラトルの指揮のせいなのか、若干テンポが速く、快活な印象すら受けます。情熱の発露を抑えきれないというような感じです。

ウィーン・フィルのステディで豊潤なサウンドもまた、その情熱的な演奏をサポートしていますし、第4番よりは第3番のほうが私は支持できますし、また甲乙つけがたいと考える理由の一つです。やはりウィーン・フィルとはレベルが欧州で一つ頭抜きんでているなあと思います。こう書くと他は大したことがないと思っているように感じる方もいらっしゃるかもしれませんがそんなことはありません。私自身はウィーン・フィル信者でもありませんしウィーン・フィル原理主義でもありません。ヨーロッパのオーケストラはやはり歴史を重ねており、どのオーケストラでも平均以上の優れたオーケストラなのですが、そんな綺羅星がひしめく欧州楽壇の中で頭一つ抜きんでていると感じている、というわけなんです。簡単に言えば、「最高の中の最上」というわけです。ウィーン・フィルの演奏を聴きますと、その洗練された欧州の最高サウンドというものを意識せざるを得ない、ということです。

そして付言すれば、日本のオーケストラも実はかなりのレベルに達しているのですが、どうしてもウィーン・フィルと比べるんですよねえ、日本人って・・・・・ウィーン・フィルは欧州でもトップクラスなので、そう簡単にキャッチアップできるはずもないですしまだそこまでの歴史は残念ながら重ねていません。しかし我が国にも長い歴史があり、社会が経験してきた歴史の積み重ねがあります。そして演奏者たちが経験してきたものもあります。敗戦、高度経済成長、オイルショック、バブルとその崩壊、「失われた30年」、震災、コロナ禍。挙げればきりがありません。その経験をいかに表現へ落とし込むのか。世の中で起こることによって傷つき、倒れている人にいかに演奏によって勇気づけるのか。そのために自分たちの技術や経験を演奏にどのように生かすのか。その積み重ねなしに、優れた演奏は生まれません。そして実際にその積み重ねの結果が出ている演奏は日本でも数多くあります。

そのような演奏を聴いて再びウィーン・フィルブレンデルの演奏に回帰した時に、気づくことはたくさんあります。まずはアマチュアオーケストラでもいいのでコンサートへ足を運ぶこと。私自身はこれこそウィーン・フィルの演奏の真の魅力に気付く近道だと思っています。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品19
ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
サー・サイモン・ラトル指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。