かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:くじら第九合唱団昭島60 第5回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年8月6日に聴きに行きました、くじら第九合唱団昭島60の第5回定期演奏会を取り上げます。

くじら第九合唱団昭島60さんは、東京都昭島市のアマチュア合唱団です。もともとは2014年に昭島市制60周年を記念してベートーヴェンの第九を歌うために結成された合唱団で、その後定期的に演奏会を開く合唱団になったそうです。

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しかし、面白い名前ですよねえ。くじらってどうして?って思いますよね。調べて見ましたら、昭和48(1973)年に昭島市内の多摩川でくじらの化石が見つかったことが理由のようです。そういえば、以前瀬川氏のリサイタルで東中神青梅線で昭島から2駅東京寄り)にあるホールに行ったことがありますがその時にも街にくじらとあったので、なぜだろうと思ったことがありましたが、今回その理由がわかりました。

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昭島60というのは結団当時昭島市が市制60周年であったこと。その意味では、地域に根差した合唱団という感じがします。当日もホールに8割程度の聴衆が集まっており、親しまれている印象がありました。

今年もベートーヴェンの第九・・・・・ではなくて、オール・モーツァルト・プログラム。戴冠ミサとレクイエムという、合唱好きだとおなかいっぱいというプログラム。そして私にとってはどちらも歌った経験のある曲です。下手すればテノールパートは今でも8割は暗譜で歌えます。そのため、ぜひとも聴きに行きたいと思い足を運びました。ちなみに、きっかけはi amabileです。最近はぶらあぼよりもi amabileでという方も多いのではないでしょうか。

まず、ゲルハルト・コフラーが作曲した「ザルツブルク市のための祝祭音楽」が開始を告げるファンファーレとして演奏されました。伸びのある金管が素晴らしい!オーケストラはプラネット・テラ・ユース・オーケストラ。東京を中心に活動するプロの若手演奏家たちで構成されるオーケストラで、自主公演やCDの録音などもされているとのこと。道理で全くやせた音がないわけだと思いました。これは贅沢だなあと思いました。となれば、くじら第九合唱団さんって、お金持ち・・・・・私がインスペクターをしていた合唱団は万年お金がなく、指揮者持ち出しでようやくプロの室内アンサンブル程度しか使えませんでした・・・・・その意味でも、くじら第九合唱団昭島60さんは恵まれているなあと思いました。

前半は戴冠ミサ。モーツァルトザルツブルクにいた最後期に作曲されたミサ曲ですが、ハ長調と音取りはしやすい曲です。とはいえ、この曲は粗が目立ちやすい曲でもあります。その意味ではかなりチャレンジだったと思いますが、男声が力強い!特にテノールはかなりはっきり聞こえてきます。しかも、ぶら下がりなし!女声は若干ぶら下がっていたかなという気がしますが、アマチュアではかなり安定した発声ではないでしょうか。戴冠ミサは思い切りもいい曲ですし。とはいえ、クレドではかなり繊細な表現も求められる曲です。そこもほとんど問題なし。会場の昭島市民会館は舞台を広げていたせいもあるのか、オーケストラはとても響きがいいのですが合唱はあまり響かない感じがしました。しかしながら声はしっかり飛んでおり、これは多目的ホールを使っていることが理由でしょう。その意味ではできればJ:COMホール八王子で歌えればなあと思いました。いっそ第九とかで中大オケと組んでみては?という気もします。

そうなると、期待するのがレクイエム。これも非常に発声がよく、戴冠ミサでもレクイエムでもなんですが、音が上がり下がりするときに「H」が入らずなめらかなのも好印象です。なかなかそれはアマチュア合唱団でできないんですよね。合唱指揮の方が優秀なんだなと思います。さらに言えば、リエゾン(語尾にNが入りそのあとの言葉が母音であるときに、つながって発音すること)もほとんどなかったのも素晴らしい!していた部分もありますが、そこはかなりパッセージが速いところで、やむを得ずリエゾンさせたのだろうと思います。どうみても平均年齢高かったので・・・・・しっかりと「しゃべら」ないと完全にするのは難しいんですよね。そこはマイナス点かもしれませんが、それでもかなり高いレベルで実現されていたと思います。

強いて言えば、もう少しpとfの差がはっきりしていたらという気がします。ただ、特に戴冠ミサがそうなんですが、ほとんどフォルテなんですよね。下手すれば楽譜にfやpの指定はありません。古典派の時代はそのような表記だったんです。音が高ければ強く、低ければ弱くが暗黙の了解。戴冠ミサに関してはほとんど問題ないと言っていいでしょう。レクイエムでもう少しという感じでしょうか。

とはいえ、例えば「怒りの日」などは本当に力強いですし、強弱もしっかりつけていたので、力のある合唱団だと思います。たった5回でこのレベル?と本当に驚きました。これは終演後SNSで友人から教えてもらったのですが、団員の中にはコア・アプラウスに参加されている男声の方もいらっしゃるとのことで、おそらくいろんな合唱団に行って歌っていらっしゃるんだろうなあと思います。特にテノールは「世界の少数民族」ともいわれ、たいてい助っ人として駆り出されますしね・・・・

その点では、女声のほうがもう少しという印象を持っています。レクイエムではあまり目立ちませんでしたが思い切って歌える戴冠ミサでぶら下がり気味だったのが気になりました。女声のほうが男声の倍はいらっしゃるので、もしかするとバランスを取ろうとして引っ込みすぎたのかもという気もしますが・・・・・そうじゃないと男声は女声に埋もれ、声が聞こえてこないということもしばしばですから。

来年はブラームスの「運命の歌」にメンデルスゾーン交響曲第2番「讃歌」と、またチャレンジングな曲を選択したなあと思います。特に「運命の歌」は冒頭がとても弱く始まりますし途中ピアニシモもあります。表現力が問われる作品で、私自身もかつて歌ったことがあり苦労した思い出があります。どんな表現をしてくれるのか、楽しみな団体です。行ければぜひとも足を運びたいと思います。

 


聴いてきたコンサート
くじら第九合唱団昭島60 第5回定期演奏会
ゲルハルト・コフラー作曲
ザルツブルク市のための祝祭音楽(寺嶋赴編曲)
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ長調K.317「戴冠ミサ」
レクイエム ニ短調K.626
櫻井愛子(ソプラノ)
田村由貴絵(アルト)
櫻田亮テノール
与那城敬(バリトン
渡辺智博指揮
プラネット・テラ・ユース・オーケストラ
くじら第九合唱団昭島60

令和5(2023)年8月6日、東京、昭島、昭島市民会館大ホール

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