かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:朝比奈隆と大阪フィルハーモニー交響楽団によるベートーヴェン交響曲全集6

東京の図書館から、6回シリーズで取り上げている、府中市立図書館のライブラリである朝比奈隆指揮大フィルによるベートーヴェン交響曲全集、今回は最終第6回目である第6集を取り上げます。

第6集には交響曲第7番が、これまた1曲だけ収録されています。まあ、朝比奈さんは朝比奈節が特徴で演奏時間が長くなるから・・・・・という考え方もできますが、しかしこの第7番の演奏、それほど演奏時間が遅くなっているわけではありません。総演奏時間は約43分と第6番「田園」と大差なし。

もちろん、ほかの指揮者のタクトに比べると3分ほど遅くはなっています。しかし朝比奈節全開ならもっと遅くなっていても不思議はないはずなのですがそこまで遅いわけではありません。特に第1楽章や第4楽章でそれほど遅いと感じるとこは皆無だと言っていいでしょう。むしろ普通に感じるはずです。朝比奈節にどっぷり漬かっている方ならむしろ違和感を感じるくらい、普通です。

ですが、第2楽章や第3楽章で朝比奈節が存分に味わえるので、そのため演奏時間が伸びているとは言えるでしょう。ですが全体としては朝比奈節がしっかりと出ている割には普通な感覚に受け取れる演奏だと言えるでしょう。この点からも、朝比奈氏のタクトはゆったりとした作品に向いていると言っていいと思います。

その意味では、やはり朝比奈氏はブルックナーなんだろうなあと思います。図書館には朝比奈氏のブルックナーがあまりないのが残念なのですが、やはりこうなると朝比奈氏のブルックナーは一度聴いてみる価値があるだろうと思います。

ですがブルックナーという作曲家はクラシックファンならよく知られている作曲家ですが、それ以外の人にとってはむしろ何それ?っていう感覚はあるでしょう。むしろまだベートーヴェンのほうがメジャーであると言っていいわけで、大フィルに対する補助金の問題はむしろそのブルックナーを朝比奈氏と共に演奏してきたということがマイナスに働いたと言えるのかもしれません。ですがベートーヴェンで珠玉の演奏をしているわけなので・・・・・

その点でも、大フィルの事務局の怠慢というのはあったと思います。ただ、団員も事務局も共に大フィルの看板をしょっているので、一緒に見られてしまったと言えるでしょう。それが団員のチラシ配りという、最後の最後の手段がいきなり取られたという悲劇につながっていると言っていいでしょう。団員はどれほどの屈辱を味わったことか。それでも文句言わずチラシを配った団員達を、大フィルの事務局はどのように見ていたのでしょう?これは徹底的に批判されるべきだと思います。

本来、この交響曲第7番のように、魅力的な演奏をすることで聴き手を増やしていくというのが団員たちの仕事です。それが団員がする「宣伝」です。一方事務局はガチで宣伝を行うのが仕事です。そのためには、大フィルというオーケストラとその演奏がいかに魅力的なのかをしっかりとわかったうえで、論理的思考に基づいて宣伝戦略を練る必要があります。その戦略がしっかりしていなかったことが、芸術をわかっていない橋下氏に全く対抗できなかった一つの原因であろうと推測します。

小劇団など本当に小さいので、全員が手弁当でやらざるを得ません。その手弁当ということが演劇に魂を入れ、優れた演劇につながることはあまたあります。ですが、すでに分業体制ができているプロオケでは、その小劇団が手弁当でやっていることを事務局が一手に引き受けなければなりません。そのプロ意識があったのか、ということです。そこは批判の余地があるわけです。ですが橋下氏もそして大阪府大阪市の職員、そして喝采した市民の皆さんは事務局ではなく団員へ批判の目を向けてしまった。それは果たして正しかったのかは、検証する必要があると思います。

というのも、今関西から大フィルのコンサートの発信が全くない、ということが明らかだからです。録音も今途絶えていると言ってもいい状況ですし。その代わり日本センチュリー響はハイドン・マラソンなどで活発です。事務局の差だと言ってもいいのではないかという気がします。日本センチュリー響はおそらく大フィルよりもらっている補助金が少ないはずなのに、今や大フィル以上に存在感を増しています。これはオケの実力というよりは、事務局の実力の差だと言っていいでしょう。この第7番の素晴らしい演奏ができるオケが、もったいないなあという気がします。

胡坐をかいていたのは大フィルの団員ではなく事務局ではなかったと、今再度橋下府政、市政を検証することが必要なのではないかと思います。そのためには在阪メディアの奮起も必要です。維新の会に唯々諾々ではなく、本来メディアが持つ批判精神を今こそ発揮し、本来行政がすべき補助というものはその精神から言っていかなるものが適切なのか、検証すべき時期に来ていると思います。特に橋下氏の批判は本当に適切だったのか、引退した今こそ検証する時期に来ているでしょう。今一度言います、大フィルは関西の宝です。その宝が輝きを失っている今こそ、その原因の一つを造った行政の介入は正しかったのか、検証する時期であると断言します。

朝比奈節が存分に発揮されながらも、しかし普通に聴こえるこの演奏は奇跡です。これだけの演奏ができるプロオケが関西に、そして大阪に存在することに誇りを感じられないなら、大阪は民主主義の都市ではなく独裁者が支配する都市であるとしか、言いようがありません。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第7番イ長調作品92
朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

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