かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ブラームス オルガン作品集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ブラームスのオルガン作品集を取り上げます。

ブラームスと言えば、たいていのクラシックファンの方であれば、交響曲を想像すると思うのですが、以前から言及しておりますが、器楽曲も数多く作曲しています。その一つが今回取り上げるオルガン曲になります。

いや、ブラームスと言えばピアノでしょう!という人もいらっしゃるかと思います。それは同意します。ということは同時に、オルガン作品があったとしても何ら不思議はない、ということになります。ともに鍵盤楽器ですから。

つまり、ブラームスにとっては、おなじ鍵盤楽器であり、変わりはない、ということになります。勿論、ピアノとオルガンでは同じ鍵盤楽器とはいえ、特性は異なります。その差はあっても、同じ鍵盤楽器ということには変わりないです。だからこそ、ピアニストでもあったブラームスにとっては、さほど差がなかったのではないかと私は思います。そうでなくては、作品は残るはずがないですから。実際、ネット検索をしてみても、ブラームスがバッハの鍵盤作品に魅力を感じていたという記述を見つけることはさほど難しくはありません。

特に、シューマンからのプッシュが大きかったようです。同じ鍵盤楽器ソリストでもあり、そしてその妻でありブラームスも愛したクララもまた、ピアニスト。そういった仲間の中で、次第に自分もオルガン曲が書きたい!という想いを持ったとしても不思議なことではないでしょう。

このアルバムには、作品番号がついたものと、WoOがついたものと2種類が収録されています。不思議なことに、ブラームスらしさが出ているものにはWoOがついており(たとえば第1曲目の前奏曲とフーガ第2番ト短調)、バッハ的な印象があるものには作品番号がついているのです。これは不思議な現象ですが、おそらくはそれほどブラームスはバッハを敬愛していた、ということになろうかと思います。私としては第1曲目のWoO.19も十分素晴らしい、ブラームスの個性が出ている作品だと思うのですが。

後期ロマン派という時代の巨匠であったブラームス交響曲においてはドヴォルザークを発掘したりと、時代の橋渡しの役割も担いましたが、一方で古典的というか、懐古的な視点も持っていた人であったと言えます。ブラームス自身は新しい様式を作り上げるとかではないですが、その作品の個性はどれも光るものばかり。そしてその一つ一つに、ブラームス自身の内面性が反映されているように思いますが、その原点の一つに、バッハがあると言っても過言ではないでしょう。実際、ブラームス音楽史においては、新古典主義運動の出発点だとも言われます。

おそらく、ブラームスがいなければ、第1次世界大戦後、新しい芸術運動である新古典主義音楽が勃興しなかったのでは?とも個人的には考えます。決してオルガンのおしだしだけで作品を作らず、バッハの作品をよく研究し、その内面性や本質に迫りつつ、自身の創作に生かしていったような気がしています。ここに収録された作品はともすればバッハの模倣とみられるかもしれませんが、一方でそれはブラームスの様々な作品に、影響を及ぼしているともいえるでしょう。

そんなブラームスのオルガン曲を弾いているのは、クリストフ・アルブレヒト。旧東独のオルガニストです。え?ってことは東側ってこと?という、ア・ナ・タ。その通りです。東側とはいえ、そもそもは一つのドイツだったわけで、当時の大国の思惑によって分断されたにすぎません。脈々と、芸術の魂は受け継がれていた、ということです。勿論、このアルバムは旧東独のプロパガンダという側面はあるでしょう。ですが、一方で国内の芸術家たちは、プロパガンダに利用されることにより、自らの芸術活動が保証され、ドイツの魂が受け継がれていったことは確かでしょう。それが、ベルリンの壁崩壊につながっていったと考えられるかと思います。

実際、演奏は実に生命力のあるもの。そのうえで、変に宗教っぽくもなく、人間がひたすら祈る姿が浮かび上がります。時に静謐、時に荘厳。時に瞑想、時に歌唱。ブラームスが後期ロマン派という時代において行った「バッハ・リスペクト」が、存分に表現されているように感じます。アルブレヒトの、ブラームスへの共感も、そこには表れているような気すらします。それはもしかすると、アルブレヒトにとっては一つの「闘い」でもあったのかもしれません・・・・・

 


聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
前奏曲とフーガ第2番ト短調WoO.10
11のコラール前奏曲作品122
 第2曲:心より慕いまつるイエス
 第4曲:われ心より喜ぶ
 第9曲:われ心よりこがれ望む
 第10曲:われ心よりこがれ望む
 第5曲:装え、わが魂よ
 第6曲:おお如何に幸いなるかな、信仰深き人々よ
”コラール前奏曲とフーガ”おお悲しみよ、おお心の痛みよ
前奏曲とフーガ第1番イ短調WoO.9
11のコラール前奏曲作品122
 第8曲:ひともとのバラ生いいでぬ
 第1曲:わがイエスよ、汝は我を永遠に喜ばせ給う
 第7曲:神よ、まことの慈しみに満てる神よ
 第11曲:おおこの世よ、われ去れねばならず
 第3曲:おおこの世よ、われ去らねばならず
フーガ変イ短調WoO.8
クリストフ・アルブレヒト(オルガン、ヨアヒム・ヴァ―グナー制作、聖マリア教会オルガン)

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