かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:モーツァルト・スタディ・イン・バッハ

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回は、バッハの作品を編曲したものを収録したアルバムをご紹介します。

モーツァルトの作品に影響を与えた作曲家は星の数ほどいますが、特に大きな影響をと考えたときには、やはりバロックの二人の巨匠を考える必要があるでしょう。ヘンデルとバッハです。

ヘンデルは「メサイア」を編曲しケッヘル番号までついていることで有名ですが、バッハとなると、そんなもんあったっけ?というイメージだと思います。

このアルバムに収録されている作品は、基本モーツァルトバロック音楽の学習のためと言われている作品ですが、404aに関しては、偽作の疑いが強いので、東京書籍の「モーツァルト辞典」では記載がありません。かろうじてネットの「Mozart con grazia」のほうに記述があります。

6つの前奏曲(序奏)とフーガ K6.404a

www.marimo.or.jp

K6(数字は本来は斜め上に記載)となっていることからも、少なくとも真作とは断定していないということを意味します。三重奏曲の体裁をとっているので古典派の編曲であることは間違いないと思いますが、モーツァルトとなると確証がないんですね。状況証拠しかない状況です。なので新全集では採用されなかったため、東京書籍の「モーツァルト辞典」も採用しなかったんですが、そうはいっても、バッハの作品を編曲したのはモーツァルトではないんかなあと思うんです、私は。

もちろん、史料現物を見ていないんで断定は避けます。けれども、スヴィーデン男爵の下でバロック音楽を学習していたモーツァルトが、バッハの作品をもとにして弦楽三重奏曲に編曲するということはあり得ることですし、筆跡に関してはそれほど疑義がないようです。ということは、これら404aが採用されなかったのは、むしろ編曲されていない純然たる作曲のほうで疑義があるから、という理由なんですね。

例えば、モーツァルトが編曲したものに、別の人物が作曲して前奏曲をつけた(404a-1、404a-2)ということです。けれども、そんな面倒くさいこと、やるかなあって思います。本当にモーツァルトの作ではないんだろうか?という気がするんです。少なくとも、モーツァルトはスヴィーデン男爵を快く思っていたようなので、そういう人には従順なはずなんだけどなと、むしろ心理学的アプローチだと、そう断定するのです。

なので、新全集よりもMozart con graziaの姿勢を私は支持します。少なくとも、偽作とも真作とも現時点では断定しえない、ということです。このアルバムでも真作と言われる405と一緒に収録されているという点も、演奏者たちの意見具申のような気がします。というのは、この404aと405は、原曲がバッハの鍵盤作品なんです。だとすると、編曲は筆跡で疑義がない限り、モーツァルトだと断定していいだろうと思うわけです。

こういった作品があってこそ、晩年のミサ曲、たとえば大ミサハ短調やレクイエムの優れたフーガがあると考えていいわけなんです。モーツァルトが死んだ時代はすでにベートーヴェンが作曲を始めている時代です。そんな時代に、古めかしいが生命力あふれるフーガをモーツァルトは書いたんです。それはスヴィーデン男爵の下での学習が元になっているとしか考えられないからです。

演奏するのは、ターナー四重奏団。モーツァルト弦楽四重奏曲も収録している実力派です。そんな彼らの演奏は、作品が放つ生命力を掬い取るものです。そもそもはバッハの作品なので愉悦とかとはちょっとだけ遠いのですが、それでも、そもそもが鍵盤楽器であるものを弦楽三重奏あるいは四重奏に編曲するうえで、苦心が見られるのをさらりと演奏して見せています。そしてそれが違和感がないために、弾いている彼らも思わずカンタービレしていく・・・・・しかも自然体で。これこそモーツァルトでしょ?と言いたげに。

モーツァルトの真作ではないと断定されている前奏曲も、いやあ、これはモーツァルトなんじゃないの?という意思表明のような和声を存分に味合わせてくれる仕事ぶり。これを聴きますと、新全集の判断って本当に正しいの?という疑念がどうしても沸き起こります。

 


聴いている音源
6つの前奏曲とフーガ K404a(弦楽三重奏による)
前奏曲とフーガ K404a-1
①第1楽章:アダージョ
②第2楽章:フーガ(平均律クラヴィーア曲集第1巻より第8番)
前奏曲とフーガ K404a-2
③第1楽章:アダージョ
④第2楽章:フーガ(平均律クラヴィーア曲集第2巻より第14番)
前奏曲とフーガ K404a-3
⑤第1楽章:アダージョ
⑥第2楽章:フーガ(平均律クラヴィーア曲集第2巻より第13番)
前奏曲とフーガ K404a-4
⑦第1楽章:アダージョ・ドルチェ(オルガン・ソナタ第3番より)
⑧第2楽章:フーガ(コンプラトゥンクス)(フーガの技法より第8番)
前奏曲とフーガ K404a-5
⑨第1楽章:ラルゴ(オルガン・ソナタ第2番)
⑩第2楽章:アレグロ(オルガン・ソナタ第2番)
前奏曲とフーガ K404a-6
⑪第1楽章:アダージョ
⑫第2楽章:フーガ(ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ:フーガ、1778)
5つのフーガ K405(弦楽四重奏による)
⑬1.フーガ ハ短調平均律クラヴィーア曲集第2巻より第2番)
⑭2.フーガ ニ長調平均律クラヴィーア曲集第2巻より第5番)
⑮3.フーガ 変ホ長調平均律クラヴィーア曲集第2巻より第7番)
⑯4.フーガ ニ短調平均律クラヴィーア曲集第2巻より第8番)
⑰5.フーガ ホ長調平均律クラヴィーア曲集第2巻より第9番)
ターナー四重奏団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。