かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:チェンバロで聴く「平均律」3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、チェンバロ演奏のバッハ「平均律クラヴィーア曲集」を取り上げていますが、今回はその第3回目です。

この第3集は、第2巻の前半が収録されており、それだけでもグールドのピアノ演奏とは際だった違いがあります。

ゆったりとした演奏は全く変わっていません。それが、1960年の録音だと聞けば、驚く方もいらっしゃるかと思います。つまり、この21世紀の演奏とさほど変わらないからです。

それは、チェンバロという楽器の特性故であろうと私は考えます。基本的に弦をはじく楽器であるチェンバロが、速いテンポなど、そう簡単ではないからです。

勿論、ある程度速くは出来ますが、限界があります。リストやショパンのような、超絶技巧という訳にはいかないのです。グールドが示した演奏は、まさしくそのチェンバロという楽器とピアノという楽器の特性を知り尽くしたうえでの新解釈だったと、このシリーズで何度か触れていますが、まさしく、この第3集もグールドの演奏が成立した理由の一端を示しています。

平均律クラヴィーア曲集と言えば、チェンバロ平均律を必ずしも奏でる楽器ではないことから、バッハの超絶技巧を示す作品だと言われることがあります。それはたしかにそうであり、純正律である声楽と平均律である楽器を極めようとしたバッハの業績は素晴らしいと思います。しかし、演奏面からみると、それは必ずしも聴衆の側からすれば全てではないと言えるでしょう。

むしろ、選択する楽器がそれほど平均律とは言えないチェンバロなのか、限りなく平均律に近いピアノなのかで、演奏においてテンポや音の強弱などが変ってくるのだということが、私達聴衆の側が注目する点であると言えるでしょう。

グールドのピアノだけを聴きますと、平均律クラヴィーア曲集にはかなりバッハの内面性が滲み出ていることが分かりますがそれだけにとどまってしまいます。一方チェンバロの演奏を聴けば、内面性を表現できるよう作曲しているものの、それはかなり難しいことが分かりますし、だからこそこの作品は教材としても使うという側面が当時はあったのだということを知ることができます。

また、チェンバロ故の表現もあり、この第3集では第7番でまさに弦をはじくことをそのまま使っていますが、これがグールドになるとピアノそのままになっており、面白くなくなっています。それを、他の曲でピアノならではの表現を使って、内面性に切り込んでいくことで補っています。

このように、元々の想定楽器であるチェンバロで聞くという事は、実に多くのことを私達に教えてくれます。チェンバロで聴きますと、舞曲の性質が強いことが良く分かります。それがグールドのピアノだと薄まってしまいます。その代り、内面性に切り込んでいるわけで、その違いを楽しむということが、この作品は重要な視点であろうと思います。

私がグールドだけではなく、チェンバロ演奏が聴きたいと思った理由には、このように元々チェンバロで作曲されているこの作品の真の姿を知るためには、そしてグールドのピアノ演奏成立過程を知るためには、チェンバロによる演奏を聴くのが一番いいという、「百聞は一見にしかず」ということわざを、地で行くものだったのです。




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
平均律クラヴィーア曲集第2巻
前奏曲とフーガ第1番ハ長調BWV870 前奏曲
前奏曲とフーガ第1番ハ長調BWV870 フーガ
前奏曲とフーガ第2番ハ短調BWV871 前奏曲
前奏曲とフーガ第2番ハ短調BWV871 フーガ
前奏曲とフーガ第3番嬰ハ長調BWV872 前奏曲
前奏曲とフーガ第3番嬰ハ長調BWV872 フーガ
前奏曲とフーガ第4番嬰ハ短調BWV873 前奏曲
前奏曲とフーガ第4番嬰ハ短調BWV873 フーガ
前奏曲とフーガ第5番ニ長調BWV874 前奏曲
前奏曲とフーガ第5番ニ長調BWV874 フーガ
前奏曲とフーガ第6番ニ短調BWV875 前奏曲
前奏曲とフーガ第6番ニ短調BWV875 フーガ
前奏曲とフーガ第7番変ホ長調BWV876 前奏曲
前奏曲とフーガ第7番変ホ長調BWV876 フーガ
前奏曲とフーガ第8番嬰ニ短調BWV878 前奏曲
前奏曲とフーガ第8番嬰ニ短調BWV878 フーガ
前奏曲とフーガ第9番ホ長調BWV879 前奏曲
前奏曲とフーガ第9番ホ長調BWV879 フーガ
前奏曲とフーガ第10番ホ短調BWV880 前奏曲
前奏曲とフーガ第10番ホ短調BWV880 フーガ
前奏曲とフーガ第11番ヘ長調BWV881 前奏曲
前奏曲とフーガ第11番ヘ長調BWV881 フーガ
前奏曲とフーガ第12番ヘ短調BWV882 前奏曲
前奏曲とフーガ第12番ヘ短調BWV882 フーガ
ヘルムート・ヴァルハ(チェンバロ

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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