かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ヘンデル ヴァイオリン・ソナタ集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ヘンデルのヴァイオリン・ソナタ集を収録したアルバムをご紹介します。

ヘンデルと言えば、オラトリオ、特に「メサイア」が有名過ぎるきらいはありますが、実は数多くの器楽曲も作曲しています。その一つがヴァイオリン・ソナタです。

とはいえ、ヘンデルの時代は古典派的なソナタではなく、むしろ単なる器楽曲という感じですが。実際、ここに収録されている作品はすべて緩~急~緩~急の4つから成ります。

楽章と私が言わないのは、これは楽章に分かれていると言えるのかどうか微妙だからです。実際、1曲目のイ短調では、第1楽章となるアンダンテは、第2楽章アレグロの序奏のような形になっています。そうなると、これは楽章として考えていいのかと、ふと思ってしまいます。便宜上、楽章としますけれど。

その意味では、まさにバロック的な音楽と言えるかと思います。しかも、ここに収録されたソナタは、大部分が偽作の疑いが強いです・・・・・

ja.wikipedia.org

ウィキペディアに準拠すれば、明らかなヘンデル自身の作品と言えるのは、第1番と第4番の二つだけ。後は偽作もしくは偽作の疑いと記載されています。モーツァルト同様、研究が進んでいろんなことが明らかになってきた故だと考えられます。この録音は1966年。グリュミオーのヴァイオリン、ラクロワのチェンバロです。コンビとしては学究的ですが、ある意味当時の名だたるソリストを並べたというものに近いわけで、それゆえに記載が古いと言えるでしょう。確かに、ヘンデル自身の作品だと有機的に楽章が繋がっているように感じられますが、それ以外だと、どこかぶつ切りのような印象も受けます。ただ、だからと言ってその作品が劣っているのかと言えば、そうとも言えない気がします。

なぜなら、こういったバロックの「ソナタ」は、古典派に至り現在の形へと洗練されていったわけで、むしろ偽作と言われているのはその古典派の様式に近いから、です。となると、偽作だからと言って価値がないのかと言えばそうとも言えないというわけです。この辺りは歴史に埋もれてしまった部分もあると思います。少なくとも、グリュミオーラクロワも、作品はすべて平等に扱っています。もしかすると、偽作が紛れ込んだのはその「平等」ということが目的なのではないか?という気すらします。

どんな時代でも、先進的なものはバッシングを受けます。ですが優れたものは何とかして残そうとする人たちがいるのも確かです。その策として、ヘンデルの名を借りたという可能性は、私はなくはないと思っています。この曲集がどのように成立したのかは、ネットでは記載が見当たりませんでしたが、様々な楽譜がヘンデル生前から出版されていることから、当時の誰かが、ヘンデルの名を借りて紛れ込ませた可能性は高いと私は判断します。

pietro.music.coocan.jp

著作権とかも確立されていませんから、ヘンデルの名を「語って」紛れ込ませたとしても、何ら不思議はありません。実際ベートーヴェンでもそのような例はあります(裁判沙汰にもなっていたはず)し、モーツァルトでもバッハでも、同じような例は枚挙にいとまありません。ただ、紛れ込ませるとしても、それなりに実力のある人でなければ、どこかでヘンデルにバレますので、紛れ込ませることは難しいと思います。となると、前期古典派とか、多感様式の時代に活躍した若手、という可能性も十分あるのでは?と個人的には思います(もちろんですが、現代でそれがあるべきだと考えているわけではありません。若手が正当な評価を受け、著作権が守られるべきだと考えます)。

実際、グリュミオーのヴァイオリンは、実に歌っていますし、生命力を感じます。それは単に奏者の実力が優れているだけではなく、そもそも原作が優れていないと浮かび上がってこないのです。特に、WAVファイルをTune Browserで192kHz/32bitへアップサンプリングして聴きますと、はっきりと浮かび上がります。やはり、アップサンプリングはいい機能だと思います。向き不向きはありますが・・・・・少なくとも、クラシック音楽全般には、フィットしていると思います。

真作だけが正義!と切り捨てるのではなく、むしろ「なぜこのように優れた作品が、他者の名を借りなければならなかったのか?」に想いを馳せ、現代に生きる私たちは自ら考えるほうが建設的だと思うのは、私だけなのでしょうか?

 


聴いている音源
オルグ・フリードリッヒ・ヘンデル作曲
ヴァイオリン・ソナタ集 作品1
第1番イ短調作品1-3
第3番ヘ長調作品1-12
第5番イ長調作品1-14
第4番ニ長調作品1-13
第2番ト短調作品1-10
第6番ホ長調作品1-15
アルテュールグリュミオー(ヴァイオリン)
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(チェンバロ

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