東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、アルテュール・グリュミオーのヴァイオリンで演奏されるヴュータンのヴァイオリン協奏曲第4番と第5番を収録したアルバムをご紹介します。
ヴュータンのヴァイオリン協奏曲は、すでに全曲をナクソスでそろえている私ですが、名手グリュミオーの演奏が図書館にあるのを見つけて、では借りてみようと思って借りてみたものです。やはりヴィルトォーソが作曲した作品を、名手がどのように演奏するのかはとても興味があるものです。
本来はヨーロッパではグリュミオーのような名手がどんどんヴュータンのヴァイオリン協奏曲は演奏して、録音されているはずなのですが、日本ではあまり入ってきていないようで、このグリュミオーのものしか確認できないような感じです。其れ以外ではナクソスから出ている全集ということになります。その演奏もすさまじくて情熱的なので私は好きですが・・・・・
グリュミオーはまずはヴァイオリンを歌わせます。その中で激しい場面だったりはあらん限りの情熱を傾けるといった演奏です。少なくともあまり演奏されない作品だからとかいう特別視ではなく、むしろ普通に受け止めて、存分に感情を込めると言った感じを受けます。
第4番の第2楽章スケルツォは、ヴァイオリンの激しさが魅力的な楽章ですが、ヴァイオリンがオーケストラに埋没してしまっているのはちょっと残念。ほんとうはもっとはっきりしているのでしょうが、ステレオ初期という当時の録音技術の未熟さが、作品と演奏の魅力を減じてしまっているなあと感じます。
そしてそれが、我が国に置いて、ヴュータンの作品があまりプロでも演奏されないという状況につながっているんだろうと思います。ロマン派においてヴァイオリン協奏曲を多く作曲し、古典派と後期ロマン派の橋渡しをした優れた作曲家がヴュータンです。つい演奏にのめりこむような魅力的なものも多い中で、我が国で広がらなかったのはひとえに、このようなグリュミオーも大した演奏をしていないんだから大した作曲家ではないというような表面的な理解、受け止めが広がってしまったせいではないかと思います。
しかし、今DSEE HXを動作させてハイレゾ相当で聴いてみると、実につやのある演奏になっているんです。こんな魅力的な演奏を聴いても、ヴュータンという作曲家の作品になんら興味を持たなかったとは・・・・・と愕然としています。勿論、名手を神格化するのも良くないとは思うのですが、かといって逆に名手がいいかげんなんだからというのも立派な神格化だと私は理解しているのですが・・・・・
さすがグリュミオーという演奏が随所に有って、きいていていつの間にかうっとり、なんてこともある演奏なのに、実にもったいない気がします。もっと聴かれる演奏だと思いますし、これを機にもっとヴュータンの作品は演奏機会が増えてほしいと願います。
聴いている音源
アンリ・ヴュータン作曲
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ短調作品31
ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調作品37
アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
マニュエル・ロザンタール指揮
コンセール・ラムルー管弦楽団
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