かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:べリオ ヴァイオリン協奏曲集1

今月のお買いもの、5つ目(都合6枚目)はべリオのヴァイオリン協奏曲集です。

この作曲家は、ナクソスからヴァイオリン協奏曲がシリーズで出ていまして、そのうちのまず第1集ともいうべきものを買い求めてきました。

実は、当初このCDを買う予定ではありませんでした(それは昨日のシュターミッツもです)。ヴュータンを予定していました。

今月のお買いもの:ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第1番・第4番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/813

ですので、今月はこの続きをと行きたかったのですが、なんと全部売り切れ。予約しないとという状態でした。

私はその月に買ったものはその月の内にエントリを上げるようにしています。ですので、いつ届くかわからないものは、どうしても欲しいもの以外は一応買わないことにしています。

で、代わりに買ったうちの一つがこのべリオなのですが、実は上記エントリでもべリオについては「師」と触れています。しかし、彼が教えたのはヴュータンだけではありません。イザイもです。

シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%EF%BC%9D%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%AA

つまり、現代ヴァイオリン演奏および作曲家を指導したという、教育者としての点も特筆すべき点だと思います。

私は上記エントリを立てた時、実はこのべリオも買いたいと思っていました。しかし、それはヴュータンがひと段落してからと思っていましたら、思わぬ時期に購入することになりました。

まず、第1番「軍隊」は1829年12月25日に作曲され、最初のベルギー王レオポルト1世に献呈されました。1楽章、しかもアレグロ楽章しかないという不思議な曲です。習作なのかとおもいきやこの行の最初の通り献呈されていますし、作品番号もついています(解説では26となっていますが、ナクソスの表記は16となっています)ので、習作とは考えられません。それだけで完結している作品です。

この時代、リストがピアノ協奏曲において一楽章形式を採用していますが、それとも異なる内容を持ちます。リストは循環形式を想像することで一楽章の中に急〜緩〜急を実現させましたが、この作品はあくまでもソナタ形式で作曲されたアレグロ楽章だけの曲です。「軍隊」という名称はべリオが付けたのか後につけられたのかは解説では触れていませんが、威勢のいい音楽であることは確かです。しかし、その中に典雅さがあるのは間違いなく、まさしく「フランス・ベルギー(フランコ・ベルギー)楽派」の作品です。

次に、第8番です。1855年に作曲され、当時アマチュア演奏家で作曲家でもあったロシアのニコライ・ユスポフ皇太子(教え子のヴュータンに師事したのです!)に献呈されています。この作品ではしっかりと3楽章を取っていて、楽章構成も急〜緩〜急となります。第2楽章と第3楽章がつながっているのも、ロマン派の作曲家らしい構成です。この曲は典雅さが前面に押し出されている作品で、どこから見てもロマン派です。こうはっきりしているのは気持ちがいいものです。

そう、彼の作品は次の第9番もですがとても気持ちがいいものばかりです。実際、追いかけたい気持ちがふつふつとわいています。

技巧的にも高いものがあるにもかかわらず、典雅さに彩られているのは聴いていて温かい気持ちにさせてくれます。CDの帯に「ポスト・パガニーニ」とあるのもあながち言い過ぎではないでしょう。

3つ目の第9番は第8番の3年後、1858年に作曲され、第8番で献呈したユスポフ皇太子の妃である、タチアナ・ユスポフ皇太子妃に献呈されています。これもはっきりとした3楽章形式で、音楽的も典雅な曲です。その上で技巧的にも高いといういかにも「フランス・ベルギー(フランコ・ベルギー)楽派」の作品といえましょう。それにしても、この58年という年は彼は失明をした年で、しかも演奏家としてはその視力によりすでに52年に引退しているのです。ある意味失意の時期と言えるかと思いますが、彼の音楽はとても明るく典雅で、失意をみじんも感じません。それどころか、気高いものすら感じます。

ベートーヴェンのような高貴で気高い、まるでなにか高い山のようなものはないのですが、それでも気高さは十分備えています。軽薄なものが一切ないのは、彼の人徳なのでしょうか。これほど前向きというか、平常心をもった作曲家がいるのかと、私は驚きを隠せません。

後天的な障害者の代表が、クラシックではベートーヴェンですが、そのベートーヴェンの音楽は時として私たちに気迫を持って迫ってきます。しかしべリオの第8番と第9番は、気迫というものがなく、むしろひたすら典雅です。この差はどこからいずるのか、是非とも知りたい作曲家です。来月、欲しい作曲家のCDが増えて困ります^^;

演奏面では、ナクソスでは名が通っている西崎女史のヴァイオリンがとても素晴らしく、艶があるのが特徴的です。何度聴いても飽きないその演奏は、技術だけでなく精神、あるいは教養というもののバランスが取れていることを示しています。確かに端整なのにきちんとドラマティックな点があり、しなやかで力強く、「情熱と冷静の間」が抜群です。それをサポートするブリュッセル放送管弦楽団も単に自国の作曲家というだけでなく、素晴らしいアンサンブルを見せてくれます。それは、もしかすると日本人がベルギーの作曲家の曲を素晴らしい技量で演奏するという点に感動してなのかもしれませんが、しかしそれでも同じく「情熱と冷静の間」が抜群であることは、そもそもオケに実力があるということを示しています。

それ故、べリオという日本ではあまり名が通っていない作曲家の曲が、生き生きとした音楽として私たちの前に提示されているだと思います。



聴いているCD
シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ作曲
ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調作品16「軍隊」
ヴァイオリン協奏曲第8番ニ長調作品99
ヴァイオリン協奏曲第9番イ短調作品104
西崎崇子(ヴァイオリン)
ルフレート・ヴァルター指揮
ブリュッセル放送管弦楽団
(Naxos 8.555104)



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