東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、グラズノフとバラキエフのピアノ作品を収録したアルバムをご紹介します。
グラズノフは音楽史上実は非常に重要な役割りを果たした人なのですが、いまいち日本では人気がない作曲家です。このブログでも交響曲を取り上げたことがありますが、あまり見られなかったことがデータからわかっています。
いやあ、ショスタコーヴィチもグラズノフがいなかったら世に出たかどうか、わからないんですよ?え、敵国ロシアの作曲家だからどうでもいい?
今こそ、ショスタコーヴィチの交響曲が聴かれる時だと思うのですが、もしロシアの作曲家というだけで偏見で見るのであれば、それはショスタコーヴィチという作曲家の芸術を知らないと言うだけですし。むし同調圧力と戦い続けた作曲家がショスタコーヴィチであり、そのショスタコーヴィチが世に出るきっかけを作ったのはまぎれもなくグラズノフなのです。
そんなグラズノフのピアノ作品は全体の割合からすれば決して多いとは言えませんが、それでも魅力的な作品を残しています。特にここに収録されているピアノ・ソナタ第1番と、大コンサート・ワルツ変ホ長調は壮麗な作品で、決して一発屋でもなかった、実力ある作曲家だったことを物語ります。
そのグラズノフを世に出したのが、師匠バラキエフ。グラズノフよりはロシア的な作品を多く書いた人ですから、収録されている2作品いずれもどこか西洋とは異なる「色」が見受けられます。
とはいえ、グラズノフも十分ロシア的な響きをもった作品を書いた人ですが、どちらかと言えば後期ロマン派正当な音色を持つ作品も結構ある人でもあります。これがグラズノフの面白い点だと思いますし、また魅力でもあります。
演奏するのは、アルト・サトゥカンガス。ロシアというよりはフィンランドのピアニストです。しかしロシアのピアニスト顔負けの、ロマンティックで情熱的な演奏を聴くことができます。フィンランドの地方都市ヤルヴェンパーのホールで収録されたこのアルバムは、残響もそうですが豊かな音色に浸れる一枚だと言えるでしょう。しかもそれが、グラズノフの作品で、です。
本来は、ロシアのクラシック芸術は素晴らしいものですし。サトゥカンガスはおそらく、そのロシアに近い国という地理的条件もあって、感情移入も半端ないのだと思います。それゆえに作品が持つ生命が、私の魂まで伝わってきます。こういう芸術だけは、敵見方を問わず、楽しみそして残していきたいものです。
聴いている音源
アレクサンドル・グラズノフ作曲
ピアノ・ソナタ第1番変ロ長調作品74
3つのエチュード 作品31
ノクターン 変ニ長調作品37
大コンサート・ワルツ変ホ長調作品41
ミリ・バラキレフ作曲
エチュード 変ニ長調(庭園にて)
イスラメイ
アルト・サトゥカンガス(ピアノ)
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