かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:グラズノフ 交響曲第1番・第5番

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回から毎週木曜日に掲載になりました。その第1回目に取り上げますのは、グラズノフ交響曲第1番と第5番です。

グラズノフという作曲家、今では結構有名になりましたが、まだまだ日本では演奏会ピースとしては定着していない作曲家ではないかと思いますが、とても素晴らしい作品を数多く作曲しています。

アレクサンドル・グラズノフ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95

大きく時代が揺れ動く中で、さまざまな様式に影響を受けつつも、一つの作品の中で一つの芸術へと昇華させることに人生をかけた人でした。グラズノフの作品は目立ったものがない代わりに、どの作品もロシア的なものをしっかり持っていて、かつそれが過度に愛国的ではなく、ましてや国家主義的でもないことが特徴だと言えるでしょう。

だからこそ、非常に親しみやすい作品が多いのですが、それゆえに完璧主義者が多い我が国において、毛嫌いされてきた作曲家でもあります。近年、その業績がクローズアップされ、人気もネットを中心にジワリと上がってきている作曲家です。

私もこの作曲家の作品を知ったきっかけはネットでした。SNSで教えていただき、その音楽の親しみやすさと芸術性に、一気に惹かれて行きました。そしてちょうどこの音源を借りたあたりで、私はグラズノフの作品を追いかけはじめたのでした。その第1号がこの第1番と第5番のアルバムだったのです。

第1番は1882年、グラズノフ15歳の時の作曲です。こうさらりと言ってしまうと単純かもしれませんが、この作品習作とかではなく、第1番として作品5が付けられたものなんです。音楽学校で芸術を教える時代に、15歳で作品番号が付く作品を書くのも驚きですが、様式的にも充実した作品であることに、聴けば驚かれるはずです。ヤルヴィの指揮でオケもバイエルンですからいい演奏であるのは言うまでもないんですが、その解釈という視点を抜かしても、交響曲としてすでに完成されたものを若干15歳で出してくるグラズノフの才能に驚くのです。

交響曲第1番 (グラズノフ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)

ヤルヴィは、ごく自然にオケに演奏させており、特段奇をてらったことはしてないんですが、自然とロシアの色と言うか、匂いが香ってきます。その上で、様式的にもしっかりとしており、後に批判しつつも弟子のショスタコーヴィチが評価するのもうなづけます。ヤルヴィもその点をしっかりと伝えたいのか、ステディな演奏に徹しつつ、感情も豊かに演奏することに勤めていますので、聴いているこちらも自然と体が揺れてきます。

第5番はグラズノフの代表作と言っていいもので、録音も今やたくさんあります。

交響曲第5番 (グラズノフ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)

確かネットにおいて知ったのはこの第5番だったと記憶しています。英雄と言う標題はちょっと作品の本質から離れているんじゃないかなあって思います。実際、第1番の「スラヴ」も、この第5番の「英雄」も、借りてきた音源ではついていません。もっと純粋に、素直に作品に対して、自分たちの演奏を通して向き合って欲しいという、ヤルヴィとバイエルンの団員たちの意思が伝わってきます。

特に第4楽章は素晴らしく、民族調でありつつも、聴いていてとにかく楽しい作品で、旋律の変化も飽きさせません。グラズノフが目指した地平の一端が、具現化されていると言ってもいいでしょう。

二つの演奏では指揮者ヤルヴィとオケのバイエルン放送響との息が絶妙!二つの作品とも何かを強烈に訴える作品ではないんですが、とにかく素直に楽しめつつ、さらりと民族色が入っていて、当時の聴衆は熱狂しただろうなあと想像しますが、さらりと演奏しつつも、熱も自然と入っている演奏となっています。それはまるで、現在のヨーロッパが置かれている民族自決の問題に影響を受けているかのようです。どっぷりつかると言うのではなく、すこし距離を取るというスタンスで。

グラズノフ自身、民族自決の波の中で、自らの芸術性を保つために苦労した作曲家ですが、作品には微塵も出てこないんですよ、苦悩が。どこまでも作品は楽しいんです。その点に指揮者、オケとも深い共感の上での演奏であるように思います。現在わが国で起っている民族色の嵐に対して、私達はどのような距離感でいればいいのか、作品そのものが一つの視点を与えてくれますが、演奏自体も、情熱と冷静の間が素晴らしいですが、なぜそのような素晴らしい演奏になったのか、心理面から考えるのに十分な材料を与えてくれているようで、私にとっては素晴らしいギフトとなっています。




聴いている音源
アレクサンドル・グラズノフ作曲
交響曲第1番ホ長調作品5
交響曲第5番変ロ長調作品55
ネーメ・ヤルヴィ指揮
バイエルン放送交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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